ほうさんのお国柄

企画参加用創作ブログ。絵は描けない。文のみ。お腐れ。色々注意。

本編4:サラとアレスのお仕事

サラトナグさんが語っているだけです。読まなくても大きな支障はないと思いますので、もし胸糞感を感じたらやめておいた方がいいと思います。

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今の若い子たちは皆、昔の大戦の事を神話だという。精霊が島を割り海に沈めるなんて出来るわけがない、と。

でもね、本当の話なんだよ。勿論一人の力じゃない。加護の厚い精霊に沢山の魔力を集めて行った。一人は大地を割り、一人は大波を起こした。

その一人が今行方不明のルートグラン。大地信仰の精霊で、大戦の指導者。大地の御子様とか呼ばれてた。

もう一人が、大海の聖女って呼ばれてた女性。もう死んでしまっているけど。名前はマリーシャ。本当に美しい女性。水信仰の精霊だった。

 

ああ、余談だけど、外見の美しい精霊は「お気に入り」って呼ばれてるんだよ。

なんでかって?強い加護を持つ精霊は皆美しいのさ。それも、大いなるもの、と真逆の性別で生まれる。逆に、大いなるものと同じ性別で美しく強い精霊なんて殆ど見たことがない!美しく弱い精霊も見たことがない。大いなるものはいつだって嫉妬深くて愛情深いのさ。

 

ルートグランもマリーシャも、とても強くて美しくて、お気に入りだった、僕たち精霊の指導者。

特にマリーシャは加護も厚く信心深く、美しく優しく気高く、って精霊たちから崇め讃えられる様な女性だった。ルートグランは多分、戦い始めた時からマリーシャに惹かれていたんだろう。

 

で、僕。察していたかもしれないけど、僕はこの戦争、表立ったことはしていない。基本的に防衛や内政、治療や食料集め、はたまた戦闘で潰れた森林の修復、罠の設置...そっちで働いていたからね。戦闘向きじゃなかったからさ。

 

戦争は大体三年間続いた。でも、それなりに激しかったのは最初の一年だけ。そこからは連合軍の投降を待っていた。まぁしぶとかったから島を沈める作戦に出たんだけど...つまり二年間、僕は極めて暇だった。僕も一応大地のお気に入り。力が有り余ってるからどれだけ内政に勤しもうと疲れなんてなくてね。毎夜毎夜、同じ様な仲間を探して楽しんでた。

 

偶には前線に出てる人とでも遊ぼうかと前線の拠点に出かけた夜、マリーシャに出会った。

とても美しくて独りきりだったからね、声をかけたんだ。

あなたの様に美しい方が一人で夜を楽しむなんて、前線の男共は見る目がないのかな?

彼女は笑ってね、見る目じゃなくてブツがないのよ、ってさ。僕も思わず笑ってしまった。

凛とした彼女を皆聖女なんて呼んだけれど、実に彼女は性に奔放でね?分かりやすく言えば、僕とそっくりだったのさ。

あなた、噂の美しい殿方でしょう?私も夢の世界へ拐われてしまうのかしら。魅惑的ね。

そんな事言われたらお連れするしかないだろう?そんな苦い顔しないでおくれよ。本当に美しい女性だったんだからさ。仕方ない仕方ない。元よりその為に近づいたんだから拒否する理由もなかったけれどね!

色々と話したけれど、周りが勘違いして、あるいは美しすぎて近寄れなくて、清らかな乙女、なんて呼んだだけ。それが彼女は不服だった。それでも欲望のままに遊べば士気に関わるから、と彼女も指導者なりの務めを果たしていた。

 

 その表情から察するにもう分かっているだろうけど、僕と彼女は長く関係を持ったよ。互いの欲の捌け口として、夜にこっそり逢瀬を重ねた。誰にも知られないように彼女は時折指導者として会議に参加して、僕は他の精霊ともお遊びを続けた。お互い精霊としての考えもよく似ていて、気楽な付き合いができた。結婚するとか一生共に過ごすとか、そんな話は一切しなかったけど。

 

あの時代、少数の精霊以外皆、彼女に魅了され彼女を信仰した。それを彼女も僕も嫌っていた。精霊なら【大いなるもの】以外を信仰するんじゃない!ってね。でもそれを言っても何も変わらない。

僕がその時仲良くしていた男の精霊に言った時、なんと返されたか!

ああサラトナグ、あなたは本当の恋、愛を知らないからそんなことが言えるんだ!私が聖女の麗しさを教えてあげよう!ってさ。何故か僕が怒られるんだ。皆、自分への加護が弱まっている事に気付けない愚か者ばかり。

 

一番の愚か者はルートグランだ。リード島を沈めた日、僕はそれなりに魔力があったからルートグランの補佐役についた。ひたすら大海の聖女へのノロケ話を聞かされたよ。性別信仰関係なく遊び歩いてた僕の事を彼は嫌っていたらしくて見下す様な物言いだったけどね。彼女の笑顔も泣き顔も困り顔も、余裕のない可愛らしい顔も全部知っている僕からしたら何かと胸糞悪かった。惚れた女性を満足もさせず崇めるだけの男なんて、それだけで僕は仲良くしようと思わないしね。

 

戦争が終わって数年後、新しくこの国が出来る時、新たな王を作ろうとした。ルートグランは、自分を王に、マリーシャを王妃に据え子を成し王家を作ろうとした。彼はこれが目的だったみたいだね。

でも、マリーシャはそれを拒否した。ルートグランを大層嫌っていたからね。代案として、これからの友好を示すため指導者であるルートグランとリード国の王女の子を王にしましょう、って。

何が悲しいって、皆ルートグランの案よりマリーシャに賛同した。信仰ゆえか、それとも皆が惚れた女を独り占めさせたくなかったのか、それはわからないけど。僕は勿論マリーシャを応援したよ。

 

その後だ。最悪なタイミングだったなぁ。マリーシャとの結婚計画が台無しになったルートグランがマリーシャに直談判にきた。丁度僕と彼女が仲良くお話ししている時にね。そりゃあもう、ひどいひどい。はっはっは。あの時は笑えなかったなぁ。

清楚な彼女を唆した国賊だと罵られた。将来王女になるであろう女性を誑かして権力を手にしようとした、本当は戦争を内側から崩そうとしていたとかね。

あんたは彼女がそんな馬鹿な女性だと思うのかい?そう言うと殴られた。だから僕は彼を絞め殺そうとした。彼も僕を殺そうとした。彼女が制止して、彼の頬を引っ叩いた。

 

その時はそれで終わり。ルートグランは、王の親となる精霊は国の保安のために王城に居住する必要はない、と定めて僕達を探し回っていた。僕達は都から離れて、転々と二人で暮らした。何年間かな。覚えてない。結構長い間だったけど。その間に彼女は死んでしまった。

彼女が死んだ後、ルートグランは僕の場所を突き止めた。やっぱりまた大層罵られたけど、諦めて帰っていったよ。一応和解、っていう形に収まりはしたけど、やっぱり今でも相性は悪い。そういう関係。

 

ん?彼女が死んだ理由?知りたいのかい?ダメだよ、これだけは教えてあげられない。

寿命...ではないね。お気に入りの精霊の特徴として、大抵僕のように眷属から命や魔力を吸う能力を与えられる。だから僕も彼女もルートグランも、寿命の危険性は殆ど無い。老いや死は勿論あるし、受け入れるんなら寿命はある。寿命で死んだお気に入りもそれなりにいるからね。

 

まぁ、また聞きたいならなんでも話してあげるよ。何が聞きたい?歴史?魔術?王政?...それとも僕のこと?それなら閨の中でゆっくり聞かせてあげようじゃないか。君みたいな別嬪さんに強請られるのは大好きでね。ははは、遠慮はしなくていいさ。えっ、ちょっと、距離を取るのはやめとくれ。寂しいじゃないか。ああもう、アレス、アレストってばぁ

 

 

 

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サラトナグさんは美少年のまま美青年に成長している、正真正銘の麗人。大いなるもの、の皆さんはみんな耽美主義というか、お美しい眷属を愛でるのがお好きな様子です。

 

道中のイベントは特にないので、次回は街へ。王城へと向かいます。