【閲注】番外:サラ&アレ BL度高め
何年後か何十年後かのはなし。ねたばれ?か?
もっともチョロくない時のサラトナグさん。
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森の中にひっそりと建つ一軒家。月に照らされた庭では色とりどりの花達が朝を待ち眠っている。
その中を黒い人影が1つ、歩いている。黒を纏う青年が手をかざすと、蔦に覆われ閉ざされていた扉が開かれていく。家の中へ入ると、蔦達は自ずから扉を閉ざした。
家の中にある一人用には見えない大きさの寝台で、一人の青年が眠っていた。
茶色の短髪に端正な顔立ち。特徴としては人間だ。先程家に入った黒い人影...家主である精霊サラトナグは、眠る青年の頬を撫で額に唇を落とした。それでも安らかに寝息を立てる青年を見て苦々しく笑う。
「...ちょっと無理をさせ過ぎたかな」
掛け布団をめくると、眠る青年は服を身に纏っていない。身体中には真っ赤な鬱血痕が残されている。
その内のいくつか見えるものを指で撫で愛でていると、くすぐったいのか僅かに身を捩らせ、眠っていた青年は目を覚ました。辺りをきょろきょろと見回し、少々混乱しているのか静止を挟んだのち、傍らに立つ青年の姿を見つけ問いかける。
「...今、何時だ」
「おはよう、アレスト。もう深夜さ。よく眠っていたね?」
「ちょっかいかけてくるあんたがいなかったからな。久々によく寝れたぜ」
「まぁたそんな事を言って...寂しいなぁ。僕はてっきり君が疲れ切ってしまったのかと」
サラトナグは寝台の淵に腰掛け、上体を起こしたアレストの頬を撫でる。アレストは優しげに自分を見るサラトナグの眼鏡を外し、サイドテーブルへ置いた。
そこには水と甘い香りの真新しい花が活けてある。誰か、が今朝にでも置いていったのだろう。アレストは僅かに笑った。
「おや、何かな。嬉しそうだね」
「いいや別に。それで?今日はどこに遊びに?」
「ふらふらしていただけさ。特に目立ったことは無かったよ」
「そうじゃねぇだろ?抱いてきたか、抱かれてきたか」
「今日は抱いてきた。中々に美しい旅の女性がいたものでね」
「...へーぇ。そうかい、満足はしたか?」
「おや、なんだい。拗ねているのかな?なんと言って欲しい?」
がた、と寝台が揺れた。2人分の重さに深く沈む。アレストの上に乗り、サラトナグの細い手が彼の身体を撫でる。所々に手が当たれば、時折跳ね、低く艶のある声が漏れた。
アレストの男らしい腕が、己を愛撫する青年の服に触れる。それに気がつくと、どうぞ、と言わんばかりに手を止め腕を広げる。抵抗する事なく脱がされるままに、細く若々しい肢体を月明かりに晒す。その身体にも、僅かではあるが紅い痕が残っていた。
「俺の扱い方が分からないあんたじゃないだろ?」
「ふふ、勿論。僕の大事な、愛しいアレスト。今の僕は君の愛無しには満たされないよ」
「おう、合格だ。今の、は余計だ。
...ま、つけるなって言ってもつけるんだろうがよ」
はぁ、と軽く溜息をつき、起こしていた上体を倒す。柔らかな枕が受け止め、更に被さるようにサラトナグも続く。漆黒の髪が、瞳が、視界を覆った。
「...サラ、寝るのか、寝ないのか」
「君と、寝たいな。アレス、どうかな」
「仰せのままに。じゃねぇか。喜んで」
「ははは。嫌ならしないさ。
さぁ、どうありたい?獣のように雄々しく乱れたいか、はしたなく可愛いらしく乱れたいか」
「どっちでも。
ああでも、昨日はあんたにいいようにされたか...」
アレストに跨るサラトナグを押しやり、少々乱暴に立ち位置を逆転させる。白いシーツに漆黒の長い髪が散らばり、そして確りとした男の身体が覆うように被さった。紫の瞳は、明らかに熱を持っている。
頬、首、胸、腹、腰。精霊の細く美しい身体を順に撫でれば、過敏な程に甘い声を上げた。誘うような、煽るような挑発的な目で見上げてくる。その黒い瞳も確かに情欲を湛えていた。
「んっ...っはぁ、おやおや、仕返しかい?ふふ、受けて立とうじゃないか」
「仕返しなんて品のない事はしねぇよ。
ただ、お礼をしたいだけだ、レディー」
「ふふ。ふふふ。この色男。様になってるじゃないか」
「お褒め頂き光栄だ。あんたも色っぽいぜ、サラ」
寝台から落ちる影が、二つから一つへ。
軋み、沈む音。静かな夜の二人だけの音。何百回と繰り返されてきた睦言。
森にひっそりと建つ一軒家。閉ざされた扉の向こうは、これからも、これまでも数十年、変わることは無い。