ほうさんのお国柄

企画参加用創作ブログ。絵は描けない。文のみ。お腐れ。色々注意。

【閲注】番外編:サラアレ 脳内お花畑

R-18なんて言える程大したもんじゃないですが、そういった描写が強めなので、閲覧注意の自己責任でお願いします。

 

もしかしたらこうなるかもしれないサラアレの話、です。

 

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森の中に佇む小さな家。

表の庭には美しい花々や少々棘のある色合いの食肉植物が植えられており、それらはよく手入れされている様で瑞々しさと華やかさをその家に与えていた。

その華やかさとは打って変わって、裏手。

鬱蒼とした茂る樹木の群。自然そのものといった野草達が好きな様に生え、侵入することを拒もうとする意思すら感じる。

しかしその中に、一筋。うっすらと草の薄い線が浮き出ている。

青年は、その中を進んでいく。草木を分け入り、少々高い位置にある頭に当たる葉をなんとか屈みながら避けていく。もう少し背が低ければ、ここまで苦戦することはなかっただろうに。青年は記憶にある自分よりも背の低い人物が、この道をひょいひょいと進んでいく姿を思い出していた。

...いや、もしかしたらその者の場合は、草木が避けている可能性もあるのだが。

なんにせよその青年には少々通る事に苦労する道無き道を、歩き続けて十分。土と木の香りに混じり、甘い花の香りが混ざる。視界には一切映らず、未だ鬱蒼とした樹木しか無いが、そこには何かがある。

青年は目を瞑り、まっすぐ、ただ歩く。ゆっくりと一歩ずつ踏み出せば、直ぐに足元を掬われそうになる木の根も、頭に当たるはずの木の枝も、肌を切る薄い葉も、あったはずのそれらはなんの影響も及ぼさない。ただ花の香りだけが強くなっていく。

まっすぐ、まっすぐ。足を前に出し続ける。


「おや。ちゃんと来れる様になったのかい」


その声で目を開けた。


眼前には先程まで一輪もなかった色とりどりの花々が咲き誇っている。まるで空間を切り取ったかの様な唐突な花畑。森の中の木々がその場所を守る様に避ける様に囲い、差し込む陽の光を受け、その花々は美しく生を謳歌していた。

その中央に、花々とは異質な黒。埋もれる様に寝そべる、この場所の主。

青年を一瞥する事もなく、ただ天を見上げていた。


「サラ、探したぞ」
「何か用かな?特に何も無いだろう、今日も」

寝そべる精霊の近くへ寄り、見下ろす

「こら。空が見えないだろ」
「いつもは、もっと近づけって言う癖に」
「今日はそういう気分なのさ、多分」


精霊の横に咲いていた花々が散っていく。うっすらとした緑に覆われただけとなったその場所を、精霊は細い指で指し示す。青年は大人しく位置を移し、作られたその場所に座り込んだ。

どこからともなくやってくる風が時折、充満する甘い香りを拐っていく。二人の髪を揺らす。限りなく遅く時が過ぎている。青年は地面に散らばる黒い髪を指先で弄りながら、無言で空を眺め続ける機嫌の良さそうな精霊を観察していた。雲が流れていくだけの時間は、どれほど経過したのかも分かり辛い。それでも隣に居続ける青年へ、流石に声をかけた。

「...飽きないのかい?」
「喋る気分じゃないんだろ?それならそれでいい」

「ふぅん。そうかい。本当に?」

 

漸く空から外れた漆黒の瞳が、青年の紫の瞳と視線を交わす。瞳の奥、思考を探る様に何処を見ているのかわからない漆黒に、吸い込まれる様に、逃げる様に近付き、瞳よりも下。色付く艶やかな唇に青年の唇を落とした。

 

口付けと言うには軽い。触れただけ。触れて、離れる。しかし鼻を擽るような芳香に酔い、また。次はキスとして。僅かに長く、感触を得るために。

もう一度、離れる。漏れる吐息の色香に惑わされ、もう一度。もっと強く深く、吸いつくようなキスを。呼吸のために再び離れ、誘う様に先を見せる精霊の舌に喰らいつく。

 

品のない音も構わず、彼等の口端から流れる唾液の一滴すらも勿体無いと言うかのように、舐め、啜り、貪る。吐息が漏れるたび、逃さぬ様にその口付けは激しさを増していく。

 

もう一度、また一度、誘い誘われその応酬は終わらない。互いの舌は絡み、気づけば青年は身を乗り出し精霊の上半身を覆う様に被さっていたし、精霊の腕は乱暴に青年の後頭部を掴み引き寄せ逃さぬ様にしていた。青年の呼吸が荒立ち始めても、その紫の目が涙の膜を張っても、その腕は青年を解放しない。

 

 

「口を開けなさい、アレス」

 

それは確かに命令だった。求めているのは青年、だけなのだ。黒い瞳は潤みなどなく、いっそ鋭い。その眼差しでさえ、欲しがる身体には熱になる。

精霊は身体を起こし、軽く青年を押した。逆らう事はなくいっそ待っていたと言われても信じられる程に、その逞しく育った体躯は細い腕に倒された。大地に身を預け、その上に精霊が跨る。じっと、口元を見続けている。

 

「開けなさい」

 

美しい精霊からもう一度発せられるその言葉に、唾液を飲み込み従う。ゆっくり、淫らに、迫る。徐々に期待が胸を焦がす。これを待っていたのだと高鳴る鼓動が、じゅくじゅくと熱を持ち湧く血潮が、物語っている。

 

ああまた、口先だけで、おかしく、されてしまう。

 

迎える腔内へ、舌が這入る。探る様な素振りはなく、犯し尽くした場所を無闇に荒らす真似もしない。あくまで淡々と、確信を持って、青年の善いところを愛撫する。触れる度に青年の身体は跳ねるのだ。何千回も掠められ、撫でられ、犯され、躾けられたその場所が、善くない訳がない。

呼吸さえ許されない程に責め立てられ、その後を乞う事しか頭の中に残らない。呻きは甘く、腕を伸ばせば取られ、首に回させられた。快感を逃そうとする落ち着きのない足先は、精霊と交わった視線で、視線だけで、動きを、止めた。

 

時を置き、そして、離れる。どれだけの間唇を合わせ続けていたのか。痺れてしまい、熱を伴う快感だけが残る。感覚は無くなったと言っても差し支えがない。

地面に倒れる青年はその熱を冷まそうと犬の様に呼吸を乱す。対照的に、上に乗る精霊は息を乱す様子はない。赤らんだ彼の頬を撫で、髪を撫でてやる。その表情は愉しそう、としか言い表せない。淫らな彼を瞳に映し、笑うのだ。

 

「アレス、君から欲しいと言ったんだよ」

「っ...なんだよ、わるいのかよ」

「いいや、可愛らしいさ」

 

木々がざわめく。次第に暗くなっていくではないか。天候は決して変わっていない。覆う木々が枝葉を伸ばし、天を拒み始めた。

 

「いい子のアレス?今日はどうしたのかな。発情しているのかい。それとも昨晩の続きがしたいのかな?触れ合うだけでは足りなかったかい」

 

甘い香りが充満していく。頭がおかしくなりそうなほどの芳香。もう一度首へ回した腕に力を入れ、口づけを強請る。今度は優しく、慈しむキスを。素直になれば、精霊は優しげに微笑む。

 

「足りないのかい。ごめんよ、気付いてあげられなくて」

「あんたが、朝から、こんな所に隠れていなければよかったんだ」

「許しておくれ、可愛い僕のアレスト。怒った訳ではないからね。怖がらせてしまっただろう?」

 

意地の悪い笑みで、青年の身体を撫でる。熱く火照った身体は、布越しの感触でも身悶えするには十分の快感を拾ってしまう。自らの腕で嬌声を抑えるために口元を覆う。それでも漏れ出る、という事実が相手を煽るというのに。

 

「君を見たら動きを止めてしまったから。怯えてしまったのかと思ったんだけれどねぇ」

「うるさい...くそ、ばか、ぁっ、ばか、ばかやろ...」

「ははは、君は本当に僕の目が大好きだね?全部見ているよ。安心するといい」

 

躊躇なく、じっとりとしたそこへ、手を差し入れる。纏わりつく体液に未だに熱い昂り。青年の表情を見ようとすれば、今更何が恥ずかしいというのか。両腕で顔を覆い、弱々しい悪態をついている。それでも身体を震わせながら、まだ欲しいと訴えているのだ。

 

「顔を見せておくれ?」

弱く横に首を振る。喘ぎと嗚咽の混じった情けない呻きで拒んだ。

けれど、それで許す彼ではない。確かに彼は優しい。特にこの青年に対しては何よりも。

だとしても、最愛の者のこれほどあられもなく淫らな姿を見て簡単に引く様な男ではない。何よりその拒絶が本心でない事など、互いに分かりきっているのだから。

 

「見せなさい。どうせ厭らしい顔をしているんだろう?」

僅かに間を置き、少しずつ、腕を退けた。じっと見ていればすぐに隠そうとするが、その度にこら、と声をかけてやると、驚くほど従順になっていく。

そうして露わになる、快楽と羞恥と僅かな怒りと、そして期待に濡れた紫。精霊は満足気に、淫らに微笑んだ。

 

「まだ肌を重ねた訳でもないのにそんな顔をするのかい」

唾液を呑み込み喉が鳴る。

「いやらしいねぇ。どうしてそんなに淫らに?ああ、させたのは僕か?」

這う指先に身体が跳ねる。

「まだ、欲しいかい?ここで?閨ではなく、こんな場所で。知性のある人間には相応しくないね。

 

そうだ、獣らしくなんてどうだい。いつもの様に、優しく強請らせてあげてもいいけれど。

強請る暇も理性もなく、意味もない大声だけあげて、力尽きるまで犯されて...そんなはしたない姿にさせてあげようか?来客が来ないといいねぇ...」

 

決して耳元で囁かれている訳でも無いのに、その言葉が、無性に脳内で響く。それだけしか考えられなくなっていく。

いつもの優しい彼が、手荒く、快楽だけを与えてくる。愛も満足も全て等閑にして、熱を打ち付けて、欲のままに乱れさせてくれる。ひどい言葉を言わない恋人が、可愛いと、美しいと言わず、淫乱だと。背後から脳を犯す様に罵ってくる。ああ、あつい。それは頭の中の光景だけであるはずなのに、まだ、まだ自分も彼も何一つ衣を脱ぎ捨ててなどいないのに。何故こんなにも、期待してしまっているのだろう。

 

青年は頷いた。美しい花々に囲まれた上で、木々しか覆う物が無いことを理解した上で。

きっと、寝台では出来ないような、決してされないような、乱雑な扱いをされると知った上で。

 

その上で、美しく雄々しい精霊に瞳で乞うた

 

「...こら、そんな目で見るんじゃない。止められなくなるだろう...?」

 

 

それを、望んでいる。