ほうさんのお国柄

企画参加用創作ブログ。絵は描けない。文のみ。お腐れ。色々注意。

こどものひ 8歳サラと面談

8歳サラトナグとちょっとお話

 

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「ダメな子」

「ふぁい♡」

「いけない子」

「ふにゃ...♡」

「悪い子」

「はい♡」

「...いい子になれるな?」

「うん、なれるよ♡ぼく、いい子だよ♡」

 

「ちょっとまってきみたちなにをしているんだい」

 

 

自分を11歳のサラトナグだという少年の望みが、【わるい子になる事】だった、という事に気がついてしまい、少年の望むままに望む言葉を与え続けてしまいこの有様。記憶を保持している5歳児程度の見た目となってしまったサラトナグが驚く程度には、少年はなんとも蕩けきった表情で青年の腕に抱かれていたし、青年は少年の耳元で甘く優しく囁いていた。

 

「え、いや、こうして欲しいって言うからよ...」

「アレスト、ね、もっと、もっと、わるい子にして、ねぇ、ねーぇ♡」

「きみはあっちでぼくとあそんでいなさい!」

 

アレストに異常な程に懐いた11歳のサラトナグ、青年は心の中で中サラと呼んでいたが、その中サラは別室へと連行されていった。

おそらく大サラと部屋に詰め込まれ、面談室となったその部屋には、もっと幼いサラトナグと記憶を保持したままのサラトナグが残された。小サラと元サラと名付けよう。

 

「ええと、あれす。もうしわけないけれど、このぼくはきょうつうごをおぼえるきがないらしい。なんとかしてくれ」

「何とか」

「まぁかいわはいらないよ。さみしいみたいだから、つねにだれかがいてくれればいい。そとにいきたそうにしてたらだしてあげて」

「...意思疎通はいらないのか?」

「いりそうにみえるならこころみてもいいけれど、たぶんきみじしんにきょうみはないよ。ぼくだし」

 

8歳程度に見えるサラトナグは、机の上に置かれていた果物をモグモグと食べている。お行儀よく汚さないよう布を引いて、こちらには見向きもしない。

 

「ぼくがあんまりおぼえてないけど、たぶん、りょうしんのなかがわるかったころのぼくだから、あるていどかまってあそんでやるのがいちばんかな。

きみがぼくになにをしていたのか、ちょっときいてくるよ...」

「...怒ってるか?」

「いいや、おこらないさ。なにをしたところでなにもかわらない。ちょっとびっくりしたくらいだから、すきにしておくれ」

「でもちょっと不機嫌だな?」

「じぇらしー、だよ。ぼくもあまやかされたい」

そういうと最も幼い見掛けのサラトナグは、無邪気とは程遠い笑顔を見せ別室へ行ってしまった。

青年と少年だけが残される。青年が少年を見ると、少年はあまりにも可愛らしい笑顔を見せた。

 

「っ、クッソ可愛いなおい!!」

「?」

「邪気がない...まっしろ...こども...そうだよ...子供ってこういう感じだよ...」

『これ、いる?』

「くれるのか...?ありがとうな、もらうわ...」

果物をひとつ。差し出された小さく柔らかいおてて。受け取ると、それすらも何が楽しいのか笑顔になる。

「はぁー...かわいい...コレは自惚れても仕方のない可愛さだな...」

もとより子供好きの青年には、その少年は非常に可愛らしいものだった。8歳にしては幼いような気さえするあまりにも無邪気な笑み。日に焼けていない白磁の肌。長い睫毛。ぱっちりと眼を開けているはずなのに眠そうにも見えてしまうほどののんびりとした雰囲気。そこんじょこらの広場で走り回っている子供の無邪気さとは違う、神聖で穢れていない、と思わせる無邪気さ。

その少年も頭を撫でられることが好きなのか、手を伸ばすと自ら寄ってきて撫でさせる。その時の余りにも嬉しそうな表情が、青年の庇護欲をくすぐってたまらない

 

「子ども...欲しかったな...」

少々自嘲気味に呟いた。思ってしまったのだから仕方がない。あまりにも無垢に笑う子供をみて、口から出てしまった。まだ自分に未練があったのかとそれすらも笑えてくる。

そんな青年の様子をおかしいと思ったのか、少年は急いで果物を食べ終え、ごちそうさまでした、と手を合わせると、椅子から降りて青年の方へやってくる。その膝の上にのせろ、と言うように足をよじ登る。

「どうした?慰めてくれてるのか?」

『ないたらだめ。なかないで』

「...ん、ごめんな。ありがとうサラトナグ」

 青年の膝に上に向き合うようにちょこんと座り、足をぷらぷらとさせる。見上げてくる黒い瞳を笑って見つめ返すと、満足げにし体を預け眠り始めた。

「眠いのか?」

「.........」

「もう興味がないのか...よしよし、寝る子は育つからな。よく寝ろ」

まさに食べて寝る。あまりにも素早く寝息を立て始めた少年の背中を優しく叩きながら、寂しがりやな少年の枕となる。別室での会話が終わったのか黒髪の三人が出てきた。何やら会話をしながら出てきた三人に向かい、静かに、というジェスチャーをすると、顔を見合わせ静かに歩いてくる。

 

眠る少年のあどけない表情を全員で覗き込み、微笑ましく見守る。そんな、ありえないながらも、当たり前のように穏やかに過ぎていく、1日。

 

青年は思ってもいないのだ。平穏が、この日までしか続かない、など。