ほうさんのお国柄

企画参加用創作ブログ。絵は描けない。文のみ。お腐れ。色々注意。

こどものひ アレスと15サラと


「おにいさんは、僕の、恋人なの?」

ずっと、気になっていたことを、きいてしまった。

「…さぁ?俺にもわからねぇ」

帰ってきた言葉は、ひどく曖昧なものだった。

 

 


「恋人ではないのに、いっしょにいるの?」
「なんつーかその姿で至極まっとうな質問されると違和感があるな」
「一体僕はどんな成長をしたんだろ…」

なぜだかわからないけれど、僕は、自分の未来から分裂してしまった。
自分が自分ではないことは、わかる。過去に何があったかは覚えているのに、昔を考えようとするともやがかかる。自分が切り取られた一部だという感覚は、自然と受け入れられた。
けれど、今の僕からこの先何があったのかは、わからない。最も成長した僕は、戦争があって、たくさんの人が死んだ、といった。
今僕をかわいがっている人間の女性も、僕の寂しさを紛らわせている村人たちも、死んだんだろう。彼らが僕の元からいなくなっても僕がきちんと生きていられているというのはとても安心できることではある。

でも、今僕らの、僕の世話をしてくれているこの男性が、どうしてもわからない。

未来の僕は彼をとても大事にしているようだけれど、恋人だとか、伴侶だとか、そういった言葉で彼を表現しなかった。世話をしてくれる人、と紹介した。

彼もそれに対して何か言うわけでもなく、僕らの世話をしてくれる。遊んでくれるし、食事も与えてくれる。こうした話し相手にもなってくれるし、強請ればキスもしてくれた。最後までを望んだことはまだないからわからないけれど、きっと、言えば抱いてくれるような気もした。

 

僕が知っている人間の中では、最も美しい顔立ちをしている。かっこいいと思うし、好きだな、と思う。きっと女性には困らないだろうし、要領もよくて、自分の好きな事をすれば何でもできるような気もする。
もちろん僕は自分の美しさに自信があるし、彼に劣るとは思わない。彼が僕を好いているということも十分考えられるけれど、それにしては異様に感じた。それが僕の知らない愛、だというのなら何も言えないけれど。

「俺は未来のお前に気に入られたってだけだ。そのあと色々あって一緒に過ごしてるが、不自由はねぇよ」
「僕のこと、好きなの?」
「嫌いじゃないし、どちらかと言えば好きだ。…少し照れるんだが」
「いいじゃないか、僕は僕であって僕じゃない。気になるんだよ、教えてよおにいさん」
「まぁ、それで不安が解消できるなら構わねぇけどよ」
「…不安だなんて言ってない」
「眼が言ってる。伺うときの癖か?見つめ方がちょっと違うんだよ」

見透かされたように、微笑まれた。彼は僕のことを何でも知っているんだろうか。
確かに、不安はある。ちゃんと、僕を愛してくれる人が僕のそばにいるのか。今の僕は幸せなんだろうか。彼の真意が知りたい。僕がどんな僕に成長したのかしりたい。きっと今の僕が何を知ったところで何も変わらないけれど、それでも、もしかしたらぽっかりと空いた心の穴が、満たされるかもしれない。

「不安だ、って言ったら、全部教えてくれるの?」
「ああ、もちろん。応えられる限りを尽くすぜ」

彼は僕をまっすぐ見た。僕としてか、他人としてかはわからない。でもそれを聞くほど無粋な奴じゃない。
僕は、彼に何でも聞いてみることにした。

「おにいさん、歳は?」
「25位だな、一応。でもお前と暮らし始めてから何年か経ったから、生きてるのは30年くらいじゃねぇか?」
「人間だよね?」
「おう。でも、元、だ。今は植物と人間の中間位らしいぜ、未来のお前曰く」
「僕がおにいさんをそんな風にしたのかい?なんで?それでいいの?」
「いいんだよ。死ぬかこうなるかしかなかったんだ。未来のサラトナグがあまりにも寂しそうにしててな。他人事じゃ思えなくなって、大事にしてやりたいと思って、自分で選んだ。だから、そんな申し訳なさそうにするな」
「…おにいさん、何で僕を選んだの」
「顔かも知れない」
「むしろうれしいけどねそれ」
「あとは、可愛い所。長生きでも子供っぽくて可愛い所あるんだぜ」
「複雑だよ、それを聞かされるのは…」
「甘えてくる。感情を恥ずかしげもなく伝えてくる。そうされたら、気付いたら俺がいないとダメになるんじゃないかって思えてきててよ、なし崩し的にこうなってた」
「おにいさん僕が言うのもなんだけど悪い人につかまっちゃいそうだね」
「未来のお前が俺を手放さない限り大丈夫だろうな」
「それなら死ぬまで安心だね。僕がおにいさんみたいな人を手放すわけがないから」

僕を語るおにいさんは優しい眼をしていた。未来の僕は、十分に愛されているらしい。

「羨ましいな、未来の僕が」
「未来も過去も自分だろ?お前の努力が実って、少なくとも今、笑顔でいられてるんだと俺は思うぜ。…何も知らない他人に言われるのはあまりいい気分じゃないかもしれねぇけどよ」
「…ううん、そうだね。ありがとう。すこし、報われた気がするよ。
でも、そうだなぁ…おにいさんが今の僕をかわいがってくれたら、もっと嬉しいと思うな?」

おにいさんの背後に、音を立てずに、僕が来たのが見えた。おにいさんは気づいていないようだ。
僕に目を向けると、にっこりと笑っていた。

「それはどうだか…あいつが許したらな」
「許さないかなぁ?僕、そういうのゆるいでしょ」
「許すだろうが拗ねるんだよ。多分」
「そこも好き?」
「…そうだな。そんなところも好きだ。慣れれば可愛いもんだ」
「わがままなの好きなの?物好きだね」
「そうか?甘えられるうれしさ、ってのもあるもんだぜ」
「だそうだよ、僕。もっとわがまま言ってみたら?」
「かんがえておくよ。まったく、あれす、きみはぼくがだいすきなんだね。ちょっとねやへいこうか」
「うわっいつの間に」
「ついさっき。いっといでよおにいさん。僕をかわいがってあげて?」
「そのあとはそっちのぼくをかわいがってあげなよあれすと。いいものきかせてくれたれいだ」

僕は、おにいさんの手を引いて、こちらに目配せしてきた。満ち足りた表情なんてしちゃって、妬めばいいのか喜べばいいのかわからなくなる。
おにいさんもおにいさんで、照れている。ああ、いいなぁ。言わずもがな信頼し合える関係って。


僕が望んでいたものは、僕の知らないところで、僕がきちんと手に入れた。
それが知れただけでも、よかった。