番外編:萌えようコリーディ②
完全におふざけ下ネタギャグ。国内に同人誌文化を生み出そうとしている、情熱あふれる一人の女性編集者の熱い戦いの物語(嘘)
本編終了後の設定。サラアレは同居してるしおじじは普通に暮らしてる。
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「同人誌の販売に関して、残すところ障害はあと一つになったわ」
ルウリィド国首都、ルーダ。噴水広場を囲うように並び建つ主要施設の一つ、出版局ビットヒット。夕暮れ時、企画開発会議室とプレートの掲げられたドアの奥で、三人の精霊が座り、向き合っている。机の上にはいくつかの薄い冊子のようなものが散らばっており、その表紙は主に肌色。躊躇いなくその中から1冊ずつをそれぞれ手に取り、パラパラとめくる。
A「編集長、これ、どうやって作ったんすか?」
「マダムがどうにかしてくれたわ!元はB制作よ!」
B「えっへーん!どう!です!か!」
A「すげーと思う。ちゃんとしてる...ちゃんと本だ...絵だ...」
「量産の体制も取れた。ま、そんなに作る事もないけど...局内で描きたい人員を募ったら結構いたし...序盤の描き手も十分いる。っていうか今までにみんな勝手に妄想してたわ。それを手直しして公開するだけね」
A「じゃあやっぱり障害って...」
「ええ。明勲様達の許可よ」
B「あと誰が取れてないんですか?やっぱりマダム?」
「いいえ。マダムは一番に許可してくれたわ。条件付きで」
B「売上の何割かとか...?献上?」
「マダムを絶対に出さない事。それと、他の明勲達の名誉を破損するようなえぐい内容のものを必ず発刊する事だそうよ!」
A「さっすがマダム!!他の明勲のこと大っ嫌いだ!!」
B「おまかせあれ!って感じですね!明勲様に無礼を働けるまたとない機会なんだし!」
「特にルート様とサラ様のじじいどもはこっ酷くやれ、ガキ扱いしてくるマザーもやれ、お人好しの弟も痛い目見せろ、働かないゴズウェル様はケツぶっ叩け!とのご命令よ!」
A「有名どころに容赦ないあたり流石俺たちのマダムだ!」
B「地味にゴズ様が難易度高いですね!あたし78年で一度も見た事ない!」
A「俺もそろそろ200年経つけど見たことねーよ!」
「あたしは一回だけしか見た事ないわ!大丈夫、誰も見た事がないからこそ何したっていいのよ」
B「すっごい名誉破損!」
A「マダムも大喜びだ!」
「あとマザーも条件付きでオーケーが出たわ!」
A「えぇ!?マザーは条件無しで許しそうな…予感がしてたんだけどなー、意外だ!」
「可愛い奴隷ちゃん達が喜んでくれるような作品を絶対に作ってね。協力するから。だそうよ!」
B「マザーーー!!!やっぱりマザーはマザーだー!!嬉しい〜!!夢を見させてくれる〜!」
A「発刊の暁には編集者一同でお礼に行きますマザ〜!!満足させられるかわかんねぇけどー!!」
「レイン様も、この前街にいらしてたときに取ったから大丈夫!」
B「レイン様も取れてるんですか!?きゃ〜!レイン様〜!!何か仰ってました!?」
「醜いものは許さないがそうでないなら好きにするといい!!勿論私はとびきり美しく書きたまえ!はっはー、どう描いたところで私の方が美しいであろうがね!!」
A「マジで編集長レイン様の真似激ウマっすよね…」
B「あぁ〜んレイン様〜♡あたしレイン様すっごい書きたいけどレイン様の美しさを表せる気がしないんです〜♡」
「それはご承知の上だったわよ。まぁ〜レイン様はこういうのお好きよね〜。許可しないわけが無いとは思ってたけど…」
A「あと?誰に取るんす?」
「えぇっと、ゴズウェル様は見つからないからまあいいから…」
B「基準が適当ですね!」
A「あの方確かあれだろ、あの…」
「多分女性と組ませたりしなければ怒らないと思う…割とお優しい方よ」
B「へぇ〜!くまさんみたい、っていう事しか知らないから新鮮〜!」
A「眷属狼の癖に穏やかなんすね」
「そうそう。意外よね。
あとは…うん…雑魚っぱ明勲様はどうでもいいでしょ多分…」
A「仮にもお偉いさんを雑魚っぱなんて言ったらどこから狙われるかわかったもんじゃないすよ!?」
B「仮にも常に見張られてるくらい警戒されてるのに!」
「いいのいいの。ここの部屋は無礼講よ!勿論街で言ったら首飛ぶけど!」
B「スレスレで生きてますね〜編集長やっぱり…」
A「流石!俺にゃー真似できない!じゃあ後?サラ様とルートグラン様?」
「そうそう。そのお二人ね。街に普段いらっしゃらないからまだ取れてないのよ」
B「ルートグラン様って許してくれるんです?」
「無理じゃないかしら…」
B「えぇ!?」
「だから、内容は伏せてそれっぽいプレゼンをするわ。任せて。ルートグラン様あたしのこと苦手だから二つ返事で帰らせようとするはずよ!」
A「平然と重罪犯していきますね!よっ!流石命知らずの編集者!」
「あたしの上司正式にはマダムだから!マダムさえいいって言えばいいのよ!!」
B「開き直りっぷりが気持ちいいですね!一生ついて行きます!」
「ありがとっ♡さて、あとはサラ様ね」
A「余裕ですよね?」
「うーん、意外とあの方厳しいのよ。お国に関しては。でもね、大丈夫!必殺技を用意したから!」
がさごそ
「はい!じゃじゃん!これさえあればもーサラ様はイチコロよ!」
B「あーー!!」
A「編集長これはずるいんじゃないですかねー!!」
「手段選んでられないのよ!!じゃ、早速行ってくるから!」
「「いってらっしゃーい!」」
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「で?いきなりきたの。相変わらず君の行動力は流石だねぇコリーディ」
「お褒めに預かり光栄ですわサラトナグ様!」
「褒めてたかよ今の会話…」
森の小屋。小鳥の囀りと緑の輝かしいその場所で、二人の精霊が向き合って座っている。一人、人間の青年が客人と家の主人に紅茶を出した。来客の女性の持つ袋はやけに大きく。何が入っているのかは分からなかったが、青年はひしひしと嫌な予感を感じた。というか、この家に客が来て良い事があった試しがない。厄介ごとを避けるように、青年は二人の座るテーブルから距離をとった。
「じゃ、せっかくだしそのお土産見せてくれる?何か知らないけど」
「勿論!あ、その前に、あの、そこの彼、どっか…」
「そんな大事な話?わかったよ。
アレスト、お小遣いあげるからちょっと席外しておいておくれ」
「…今俺すげーやな予感してるわ。出て行くけどよ…」
「好きな時に帰っておいで。気をつけて」
「おう。じゃ、コリーディのねーさん、俺は失礼するわ」
「ええ!ありがとうねアレスト君!!」
満面の笑みで青年を送り出すコリーディ。大抵の場合、トラブルメーカーの笑顔が清々しいほど不穏な事態になるのだ。受け取った、お小遣い、にしては重量のある布袋を手に、青年はその家を後にする。
残された精霊二人は紅茶を啜り、そして、片は意気揚々と。袋の口を開けて、中から一冊、冊子を取り出すと、笑顔でそれを差し出した
「こんなのを試しに作ったんですよ!」
「へぇ、どんな、っうえあっwwwwあっはっはっは!!!!そうかそうか!!そういう…あーへぇへぇ成る程ねぇ!!!」
「どうぞどうぞご覧になってください…」
「これはこれはご丁寧に…
あー…うん…そうね…ふふふ、なにこれ、誰が書いたの」
「あたしですね!!」
「君かぁwwwそうだね、こんな生々しいのはそう表せるものじゃないよねぇ…はぁ〜いやぁ驚いた…許可取ってないでしょ」
「はい!!!」
「取れるわけないかww許可なくやる為に僕らの所回ってるんだもんね、そりゃそうかwww
ふふふふ、いいんじゃない。いいよ、やりなよ。これくらい派手にやるんならもう関係ないね。好きにするといい。くっくっく、程々に、しておきなよ」
「やった!!!あ、奥の手でこんなのも用意してたんですよ。いります?」
「なに?」
「ルートグラン様がサラ様に魅了されて犬のように傅いてご奉仕するっていう設定の「いる」やっぱり〜!!」
「なんていうか、流石だよねコリーディ。君の被虐心の描写は他の追随を許さないというか…」
「ええ、自負してます!」
「…どんな形であれ誇れるものがあるのは良い事だよ…これも貰っていいの?」
「あ、持ってきたのは全部お好きにどうぞ!サンプルなんで!」
「じゃあ本人に見せて楽しむとしようかな…」
「アレスト君泣いちゃうんじゃないですか?」
「描いた本人がそれをいうのかい?」
「彼の泣き顔そそるって街で評判ですよ!」
「嘘泣きだろ、それ」
「らしいですね!」
「わかってるのかい…つまり本気で泣かせるつもりで描いた、と」
「編集局内ではサラアレ派とアレサラ派が大きく分かれましたけど、サラ様のお気に入りって評判でしたし…たぶん…どっちもあるかと思って…」
「アレサラアレに落ち着いたと。」
「はい!!」
「正解だけどさ…またできたら持っておいでよ。検閲するから」
「やったー!!どうです!!使えそうです!?」
「…何に使えっていうんだい…まぁそれなりに興奮はするね意外と…うん…」
「お気に召して頂いた様で何よりです!!
じゃ、あたしルートグラン様のとこにもいかないといけないので!」
「はいはい。頑張ってね。期待してるよ」
「お任せください!じゃあしっぽりお楽しみくださいね!!」
「下ネタ言って去るんじゃないよ…」
満面の笑みで忙しなく小屋を飛び出すコリーディ。足元に風が渦巻き、軽い足取りで道なき道を駆けていった。
残された袋をひっくり返し、何冊か入っているものを取り出す。にやにやとした笑みが無意識にこぼれる様な、肌色の数々。完全に見知った顔触れの、一糸纏わぬ姿が当然の様に描かれていた。その中には当然自身の姿もあるのだが、それはそれで、楽しいというか大した衝撃ではない。妥当な線だった。
「あれまぁ…ふふ、ふふふふ…コレは中々…イイな…へぇ…うん…そう…あー…
……よし」
ガサガサと全て集め、部屋の奥へと持っていく。隠す様に本棚の奥へとしまい、そして、数冊を手に取り寝室へ消えた。
後日、この本を見つけた同居している青年が顔を真っ赤にして問い詰めに来るのだが、それはまた別のお話。