ほうさんのお国柄

企画参加用創作ブログ。絵は描けない。文のみ。お腐れ。色々注意。

【学園PFCS】交流改変①【放課後図書室にて】

以前ツイッターで行った、ナツユ様との交流(学園でサラ先生とソラくん)を、サラ先生目線で書いちゃいましたっていうやつ。あまりにも平和で和んでしまったのでつい。許可はいただきました。

 

サラ先生は生徒が大好きなだけのいい人です。大丈夫何もしないよ…大丈夫…

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施錠当番。教師を順に回る校舎の戸締り当番だが、僕は部活に使う美術室によくいる事もあって、割と遅くまで残る事が多かった。そのため残るなら締めて帰って、と、担当する事が多い。家に帰った所で何もする事はないので、のんびりやらせて貰っていた。

 

秋になって、陽はすぐに沈む。空の色は暗く茜は見えない。最終下校のチャイムが30分程前に鳴り、美術部の部員は帰した。

その時に、図書室の明かりがまだついているのを見かけた。誰かが調べ物をしている可能性があるのなら最後にしておこう。そう思い図書室以外を施錠し終えやってきたが、未だに灯りは点いたまま。目の前には、眠っている男子生徒。

 

「あれまぁ…これなら早く来て起こしてあげるべきだったねぇ…」

 

高等部の、季夏ソラ君。よく知ってる。可愛らしい真面目な優等生ちゃん。っていうか高等部の子で僕が知らない子がいるわけない。受け持ってるし。
何か調べ物をしていたのか、何冊かの本が重ねられてる。開かれたノートから察するに課題かな。全く真面目で…甥っ子にも見習って欲しいと思う。

「授業中あんまり寝てくれない子の寝顔を見れたのは嬉しいなぁ♡かわいいなぁこの年頃の子はほんと…」

大人と子どもの境界。どれだけ普段きっちりとした子でも、大人びた子でも、眠る顔は幼い。せっかくの貴重な姿だしどうせならもうちょっと見てみたいという気持ちは多少あるけれど、風邪を引いてはいけない。とんとんと肩を叩き、起こす。

 

「貴方は……?」
「ふふ。おはよう寝坊助さん。風邪引いちゃうよ?」

 

まだ寝ぼけているらしい。自分がどうなっているのかを思い返しているようだ。
「むにゃ…?風邪ですか…?
あ…サラ先生、おはようございます…?」
目をごしごしと擦りながら、窓の外の暗い景色を見たようだ。
「あれ、今、何時ですか…?」
「はいおはよう。もう七時になっちゃうよ」
「えっ…もうそんな時間ですか!?兄さんに怒られてしまう」
眠たげな目。よく見れば伏せてしまったせいで頰にノートの跡がついている。おっちょこちょいさんだなぁ。

「この頃は冷え込むんだからさ。ほら。ほっぺも冷たい。気をつけなきゃ」
「むにゃ…寒いと、眠たくなってしまうんです…気をつけますね」

 

ひんやりとした頰に手を当ててみる。跡に沿って撫でて、引っ付いていた消しゴムのカスを取ってあげた。 反対側の頬に手を当てて冷えを確認する季夏君。跡の赤さが相まって少し頰を染めているように見えて可愛らしい。僕は頰を紅く染める少年少女のいじらしい姿が非常に好きだ。この子にはそんな感情はないだろうけど、まぁ僕が勝手に和んでやる気が出るくらいになる絵だって事で。

 

出していた本を片付けてくると立ち上がった季夏君に、僕も手伝うよと言って本を半分奪った。大丈夫ですという言葉を、生徒は早く家に帰さないとね、と笑って制すると、ありがとうございますと軽く頭を下げてくれた。実際この子が帰らないと僕は施錠出来なくて帰れないわけだし、片付け終わるまで急かすように待つというのも好きじゃない。そもそも誰かを助けるというのは嫌いじゃない。それがかわいい生徒なら尚更だ。

 

仕舞われていた本棚に向かい、作者順になるように照らし合わせながら戻し始める。適当にバラバラに戻す者も多い中、この子はきちんとあるべき場所に戻す。元々がバラけた場所にあったから、他の本が乱雑だから。そんな理由で乱れる規律をきちんと遵守する。当然で些細なことだけれど、きちんと教育のされた子なんだろう。仲の良い家、なのかな。

そういえば、お兄さんがいるって言ってたな。

「季夏君、お兄さんいるんだって?仲はいいかい?」

今はもういない姉と、ずっと一緒に生きてきた幼馴染の義兄。二人が脳裏に浮かんで、懐かしい気分になる。三人で家族のように過ごしてきた日々は、今も何よりも美しい思い出だ。
「兄さんですか。とても、仲はいいですよ?
兄さんは盲目なので、ご飯を作るのは俺ですけどね」
感情の表現の幅があまりないと記憶していた季夏君が、わずかに微笑んでそう言った。愚痴を言うような風じゃない。本当に穏やかな笑みだ。

 

それだけで、愛されている事。大事にされている事。何より愛している事が分かるほどに。

「兄弟仲がいいのは良い事だねぇ」
しみじみと思う。この子の事だ。兄をよく助ける弟なんだろう。
「目が見えないのか…それは大変そうだ。早く帰ってあげないとお兄さんがお腹を空かせてしまうわけか。急がないとね」
「はい、早く帰りましょうか。眠りすぎましたね…
後天性の盲目なんですが、しっかりとサポートしてますよ」

そうだろう。お兄さんもよく信頼しているに違いない。仲のいい兄弟の姿というのは僕から見ても美しいものだ。ただ一つ残念な点を挙げるとするならば、この後の食事に誘うことも、のんびりお話しするのも無理だろうということ。警戒心の強い生徒にはあんまり近寄れない事もあって、可愛い真面目な優等生ちゃんとお話しできるのはちょっと嬉しかったんだけど…長く時間をとっては仲のいいお兄様やご両親から連絡がきて教師が引き止めたとかなんだとかでまた教頭先生とか…ああ…エリーゼ先生に怒られてしまう…

 

「家族のガードが固いかぁ…」
「ん?なにか……言いましたか?」
「ふふ、なんでもないよ」

美しい女性に叱られるのは嫌いじゃないけど、大切な兄弟の帰りが遅い時の不安は、僕もよく知っている。
…これくらいでも、十分役得、だ。最後の本を棚にしまい、季夏君もしまい終えた事を確認する。そして、彼の茶髪の頭に手を乗せて、微笑む。

「お兄さんの手助けを出来てるのは疑ってないよ。真面目で文武両道の優等生だもの、君は」
目が、こちらを覗く。はっはっは、どうだ。伊達に長年生徒の頭を撫でてないぞ。自然だったろう。
「お兄様も嬉しいだろう、いい子に育ってくれた事が。だから、もう寒い中居眠りなんかして心配させちゃダメだよ?わかったね?」
「あ…ありがとうございます!
わかりました、俺、寒い中で寝たりしません」
声のトーンが上がった気がする。こうして褒められて素直に喜んだ反応を見せてくれるのは嬉しいものだ。
俺は子供じゃないですって、と照れくさげに手を退かされた。かわいい。僕からしたら生徒たちはみんな子供さ。

鞄を取るように促し、荷物を片させる。きちんと綺麗になった机。鞄を肩にかけて、きっちりとお辞儀をしてくれた。


「では、帰らせていただきます。ありがとうございます」
「うん。お疲れ様。明日も元気よく学校に来るんだよ。気をつけてね」

 

去っていく後ろ姿を見送って、鍵を掛けた。
きっと、急いで家に帰って夕飯を作って、家族で仲良く食べるのだろう。仲睦まじい事は、素晴らしい事だ。

 

星の瞬く空の下、少年が駆けていく。
どこかでだれかが、たくさんのひとが。大切な人の帰りを待って、大事な場所へ帰っていく。

どんな事よりも尊くて、美しくて、理想的な、平和の姿。

 

ほんの少し懐かしい気分になる。僕は、今日は、どこへ帰ろうか。
携帯のディスプレイをなぞり、電話をかける。数回のコールで出る聴き馴染んだ低い声。

 

「やぁおにいちゃん。今日は帰ってくる?」

 

僕も、僕の家族の元へ帰るとしよう。