ほうさんのお国柄

企画参加用創作ブログ。絵は描けない。文のみ。お腐れ。色々注意。

鳳凰様と鴉さんのほんのちょっと昔の話

またまた妄想。ちょっと昔の話じゃないですかね。今はもういろーんなお風呂があっていろーんなものがあるけど。きっと出来るまでに相当黒羽のお兄さんが振り回されたんでしょうね。ええ。今は完全に森でのんびり鳥の鴉と戯れてるんですけどね。ええ。別に鳳凰様と鴉さんはデキてませんよ。師弟かつ親子かつ同胞かつ、みたいな。家族みたいなもんです。仲良しなのは間違いないですけど。

 

しかもクソほど伸びた。こんなに喋らせるつもりはなかった。勝手にペラペラとお話ししおって!!仲良しかよ!!好き!!!

 

 
前振り
温泉地としてそこそこ発展をしたと思い森に帰った鴉さんだったが何故だかいきなり巫覡様からお便りの鳥さんが届いたぞ!渋々会いにいったが一体用件はなんなのか!

 

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赤く熟した太陽が、西の海に落ちていく。薄暗くなっていくに合わせて街灯が点灯していく様子が、十数年前にはなかった光景が、高い木の上から見渡せた。

都を裾野のように持つ建造物、社。その離れの一室が灯った事を確認し、黒羽をひらめかせ音もなく飛び立った


「おぉ鴉!!きたか!」
「なんで巫覡様は俺が来るのがわかるの?」
「音は無くとも風はあるぞ。ほれほれ、座れ座れ」
「はいはい」

対面に座る。部屋の主であった大きな赤羽を持つ鳳凰、巫覡は足を崩し、黒羽の鴉は背筋を凛と正座する。巫覡は脇に置いていた箱を持ち上げてひっくり返す。蓋のないその箱からはバサバサと、紙片がいくつも流れ落ちた。

 

「おかげさまで大盛況だ!」
「何よりです」
「従業員もな、増えた」
「それもまた何よりです」
「しかし投書箱にはりくえすとが多い!!」
「わかった、久々の使いっ走りだ」
「正解とは言いたくないがそういう事だ!」

 

鴉ははぁと息を吐き、姿勢を崩した。閉じられていた翼も力を抜き、足を伸ばす。

 

「以前従業員からの希望で、風呂の男女を分けた」
「なんで気がつかなかったのか不思議でならなかったよ。雌雄、あるからね」
「アホだったと思っとる…だが混浴もないと女性型の同胞の風呂がないのがなぁ…それで風呂の数が3倍になったわけだが」
「激務(材料集め)で死ぬかと思った。なんで時間帯で分けるとか日で分けて節約しようと思わなかったのかな…?」
「あっはっは、多ければいいと思ってなぁ!」
「ガサツだなぁ」


豪快にカラカラと笑う鳳凰に対し、やれやれと息をついた。面で隠れている目はわからないが、口元は柔らかく笑んでいる


「しかしだ、それは解決したんだが、今度は色んな効能の風呂が欲しいとの要望があってな」
「効能か…巫覡様のお仕事っていうのは尽きないね」
「儂は趣味みたいなもんだから構わんがな!」


紙片の山から一つつまみ上げて開く。びっしりと丁寧な字で一面埋まっていた。女性的な文字だ。時候の挨拶から始まる文であり、実に教養深い女性であるという印象がある。

「えー…はー…ほー…薬の湧き出る温泉と聞いて、身体の怪我を治しに来た。主人が受けた呪詛の傷には効き目がその他の傷よりも弱いように感じたが、呪詛に侵された傷にも効くものはないか。だそうだ」
「妖怪の呪いか」
「呪詛…あぁ、身を清めにきたって投書もあるな。ふぅむ、ここいらは元々社だ。不浄のモンが相手ならお神さんの力を高めて湯に…媒介を溶かすか…精のものに取り憑いて…いやしかし重症となると流石に一時的なものか…だが…」(ぶつぶつ
「…御神体を直すものをもう少し持ってきて、エレメントの喜ぶものを集めればいいんだね?」
「そうなるな!後はなるだけなんとかする」
「そのなんとかに関しては信用してるから、何でも言ってくれ」
「相変わらず頼もしい!」

 

鳳凰は手元の酒瓶を一つ、鴉に投げて寄越した。きちんと両手で受け取り、先ず材料の印字を確認するが、特に何も書かれていない。投げ渡した当人は機嫌良さげににっかりと笑っている。

 

「仕事を受けた後にしか渡してくれないのはやらしいよ」
「お前は酔って話にならんだろ?」
「そんな事ないって」
「そうかのー」

きゅぽん!と景気のいい音を上げ、栓が抜かれた。視線だけで乾杯をし、二人揃ってぐいと気前良く流し込む。二、三口で離し一息つく鴉と、一瓶飲み干すのではという勢いで喉を鳴らす巫覡。うわぁ、という声が聞こえてくるような引き気味の姿勢で、角度を上げていく瓶の底を見ていた。

 

「ぶっっはーーー!!んまい!」
「度を超えてる。寿命縮んじゃわない?」
「わしの作った薬酒だぞー?そーんな事あるわけなかろー」
「もう酔ってる…」
「お前がくる前に4つあけとるぞ」
「うわっ」

確かに指さされた方向には、形状は違えど酒瓶だろうとわかる4つの容器が転がっている。

「完全に酔ってるね巫覡様」
「酔っとらん酔っとらん」
「酔いどれほどそういう事を言うんだよ」

かっかっかと笑いながら次の瓶を開ける巫覡にやれやれと再度息を吐き、まぁいいか、とぼそり呟いてもう一口を煽った。

 

「これ、美味しいね」
「儂が作ったやつじゃないぞー。他国のだぁ」
「へー」
「うまいか」
「おいしい」(ごくごく
「そうかそうか」
「(ごくごく)」
「おうおう、うまいかうまいか」
「とてもおいしい」(ごくごく
「…酔ったな?」
「よってないって、よって、ないって」
「酔っ払いほどそう言うんだぞぉ鴉ゥ」
「あははっ」
「酔ったな」
「はーおいしい」(ごくごく
「それでなぁ鴉。他にも色々あってな。隠しておくのも良心が痛むから言うが、お前がくる前にちゃーんと全部確認して欲しい材料はな、書いといたんだ」
「面倒ごとは勘弁してくれ」
「おっとまだ酔っとらんかったか。そんなら、これは真面目な話だ。精神的な健康、ってのも昨今では重視されとるらしくてなぁ。精神安定やりらっくす、という効能を求める声も多い。香りの観点や湯気に効能を乗せて中から癒すのも検討しとる。つーことでこれも頼んだ」
「はいはぁい、お仕事ねっしんですこと」
「酔ったか?まだ酔っとらんか?んん?」
「ほんとさー、ぞめさんはさー、いっつもそうやってさー」
「酔っとるな。よし、じゃあこいつもどうだ。頼みにくい事があってな。


【とーってもりらーっくすしてしまうような湯】だとか【なんだかお互いがドキドキしちゃうような湯】だとか【夫婦仲が円満になってしまうような湯】だとか【思わず人恋しくなってしまうような湯】だとかいうのもなぁ、あってなぁ、それを作りたいんだなぁ〜」
「はぁ〜そうなの〜へぇ〜」
「こんななぁ〜儂の趣味みたいなもんはなぁ〜鴉くらいしか頼めんからなぁ〜」
「しかたないな〜ぞめさんのたのみはことわれないな〜」
「おぉそうか!流石話がわかるな!遠出ついでにこの紙に書いといた分も持ってきてくれ」
「はいはぁい、わかったからおいといて〜おかわりぃ〜」
「ちょろすぎんかお前」
「ありがとぉ」
「褒めとらんぞ。ほれおかわりはない。ついでに言うとその酒には呪詛が込められとるらしい。どうせ二日酔いになるんなら呪詛払いの実験にも付き合っとくれ」
「おやすいごよーおやすいごよー…」
「もう少し頻繁に酒飲んで耐性つけた方がええぞ鴉」

 

 

〜次の日〜

 

「うぅ…まぶ…し…」
「おぉ起きたか鴉。もう正午だぞ」
「道理で眩しいと…正午!?ッ、いったぁ…!!」
「おうおう、きっちり二日酔いになっとるな」

 

面をつけたまま毛布をかけられて眠っていた鴉は、時刻を聞き飛び起きる。その瞬間頭を抑え再度蹲るように呻き声を上げた。ごりごりと音を立てながら鉢の中で何かを砕き混ぜ合わせていた鳳凰は、薬包紙に粉末を丁寧に包みながら呑気に眺めて僅かに笑った。

 

「俺、今度はいくつ目で寝たの…」
「一個は飲み切れたみたいだぞ。よかったな、新記録だ」
「はぁ…申し訳ない巫覡様。寝込んじゃって」
「構わん構わん!ほれ、薬も用意したぞ。好きなもん飲め」

ちょんちょんちょん、と三つの小さな包みを並べて、一つ一つを指差した。うう、と怠そうに視線を向ける鴉。

 

「まずこれだ。沼地の古清魚の浄化器官を元に作ったものだな。不浄物に対しての古代から変化していない実に高性能な浄化器官…あれには何か参考にすべきものがあると思うなぁ儂は」
「あぁはい…力作なんですね…」

 

「次がこれ。消化器官の中身を綺麗さっぱり取り除き、吸収された不浄物の排出を促す整腸剤に近いもんだ。薬剤としての効能より素材の持っている材質を生かした使用方法で植物の根が主な材料になっとる。使用者本来の浄化機能に大きく依存するが丈夫なお前には十分に効くだろうっちゅう算段だな。安価で手間がかからんのが長所だがしかし使う材質によって一々作り方を変える必要があるから安定した品質にするのはちぃと難しい。しかし大量生産には向いとるなぁ」
「多分褒めてくださってるね。ありがとう…」

 

「最後がこれだ!!!これはなぁ!?」
「(勢いが違う…包みも大きい…)」
「まず晴らす追い出すといったのとは違う、治すとも違う、ある種逆!!破壊!!儂はこういうのは少し苦手だがだからこそ治癒の効能が上回る結果になる!!まず身体に吸収され侵された部位の破壊を行い!僅かな時間さで上回る治癒効果を発揮し負傷した部位を再生させる事で身体から消し去るという方法だな!!重要器官を傷つけんための保護粘膜の分泌、修復不可能な部位を傷付けんための超微毒の調整、そして他器官に回す栄養を奪いすぎん程度かつ迅速な自己再生の促進!!機能を三つも持たせたせいで量が増えたな!しかも時間の差や効能の前後が狂わんように粒子を選別したりと手間がかかる!しかし意外な事にだなこの効能は主に鈴蜂の毒、それを打ち消してしまう陽谷草、劇薬動悸茸という三つの素材からできとるんだがその繋ぎというひっじょーに重要な位置にこの部屋の畳にも使われとる実に簡単に入手が出来る藁菜が最も最適だったというのに辿り着いたのが一番の功績でな!!手間はかかるがほかの調薬にも応用できるに間違いない!!それに加え丸薬の形状にしかできんかったが時間差で効果を出さねばならんのなら溶ける速さを変えればいいという単純かつ明確な方法で実現ができた!確かにリスクはある!しかし新たな薬剤を作るにあたって異なる視点からのあぷろーちが出来たというのは正しく今後も活用される技術!!ただ治すだけが健全への近道ではないという事だ!!まぁ勿論この理論での攻め方というのはこれまでもあったが技術や材料の兼ね合いといった点で渡るには犠牲が大きくなりすぎる橋だったしかし今なら確信を持って言えるこの丸薬は効果を発揮するだろう…そう言えるようになった儂自身が今は実に誇らしい…」


ふぅと語り切った実にイキイキとした表情の赤羽の鳳凰は、どう見ても水を飲むような気安さで酒瓶をまた一つ傾けた。中身が本当に酒なのか疑わしいが、素面の暴走具合とは思えない気もするが、酔っている様子はなく。淡々と随所で気の抜けた相槌を打っていた鴉も平然と眺めている。
そして、少し考えるように口元に手をやり、うーん。といって一拍。明確な表情は面により窺えないが、さて何を考えたのやら。口を開いた。

 

「一ついいかい巫覡様」
「ん?おお!!なんだ!!」

 

「俺って、ただの二日酔いなんだよね?」

 

「…」

 

「新しい薬作る必要、あった?」

 

「…さぁ飲め!」
「ぞめさん!!!!また俺になんっ…ァあ〜!!痛い…!」
「叫ぶな叫ぶな!あっはっは!!あと鴉、お前ちゃんと儂のお願いを聞いてくれると約束しとったからな!材料集め頼んだぞ!」
「えっ?あっ!なにこの紙…しらないけどっ」
「頼む〜お前が頼りなんだ〜儂は一日以上離れられん〜」
「そう…やって…っ、はぁあ〜ほんと貴方ってお方は…」
「坊は優しいなぁ!わしゃーそういうやさしーぃ子に育ってくれて嬉しいぞ!」
「…はー。まぁ、いいですけどね」

 

 

 


「ちなみに来年から生物学とか専攻しとる学生の研究留学を受け入れる事になったからな。手伝いが増えるぞ!」
「それは本当に手足になる(使える)のかい?」
「さぁなぁ?良い若人が来るかは運だな!だがまあ未来ある少年少女の応援はしてやりたいだろう?」
「俺がお守りを任される未来が見えるよ」
「あっはっは!そんな年もあるかもしれんな!」
「(大変になりそうだ…)」
「とりあえず風呂掃除と布団敷きと食器洗いと畳干しと館内清掃全般は覚えてもらわんとな」
「(その子達もとても大変になりそうだ…)」

 

 

 

鳳凰様はお酒にどちゃくそ強いけど鴉さんはすぐ落ちるから程々に飲ませましょう