ほうさんのお国柄

企画参加用創作ブログ。絵は描けない。文のみ。お腐れ。色々注意。

ひたすらIFの話

まず本編でここまで行ってないくせに先にIFの方を書くってどうなの???みたいなツッコミは容赦していただきたく…。
 

 

【もしもルガにいの復讐タイミングが機械化した直後でサラさんが両親二人ともぶっ殺して家を出る前で兄弟が合流していたら】の世界線。これ絶対兄弟応援したくて堪らない世界線になるから絶対そうだからでもこれIFでやっちゃうってことはほんへ報われないの確定なのほんとどうにかしてほしい。
 
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「ナグ、飯できたぞ」
「はぁい、るがにいちゃん」
 
赤黒い夕陽が、家を照らしていた。畑に座り込んでいた弟が振り向いて、土を払ってから駆け寄ってくる。
 
「今日はなぁに?」
「わぁい、僕、お豆好きだよ」
「そうか。兄ちゃんも好きだ」
「一緒だねぇ」
「だなぁ」
 
手を繋いで家に入ろうとすると、また背後を振り返って、空を見上げる弟。
 
 
「ルガにいちゃん。どうして、雲が引っ掻かれてるの」
 
指差した先には、雲に線のようなものが浮かび、真下に伸びている光景があった。夜になりかけている黒い空だ。その雲を断つ一筋の線。
 
「ああ、あれか」
「泣いてるよ」
「そうだな。きっと、大勢泣いてるぞ」
「あれは、なに?」
「戦争」
「戦争だと、ああなるの?」
「いんや、どうなるかはその時々だ」
「いまは、どうなってるの」
 
自分と目だけはよく似ている弟の、黒い眼が。少しだけ恐怖が伺える声色で、そう尋ねてきた。戦争を教えたことはなかった。それでも、何か嫌な物であるということは、きっと、感じているんだろう。
 
「手、出してみろ」
 
しゃがんでそういうと、小さな掌を上に向けて差し出してきた。白い手。でも土に塗れた手。小石を一つ拾い上げて、その掌の上に落としてやった。
 
「痛いか?」
「いたくない」
「だよなぁ」
 
小石を落とす位置を少し上げて、もう一度落とした。
 
「痛いか?」
「あんまり」
「そうだなぁ」
 
今度は僕だけ立ち上がり、手のひらめがけて落としてやると、少しびくついた。しかし石自体がまっすぐ落ちず、当たる事もなかった。
 
「高い所から落ちると、痛いな?」
「うん」
「でも、小さい石だとうまく落ちない」
「…うん」
「これなら、どうだと思う」
 
近くにあった、弟の頭位はある石をもって、頭上からそう問いかけた。手が震えている。弟がゆっくりと手を引っ込めたのを確認して、落としてやった。石は真っ直ぐ、僕と弟の間に落ちる。もう一度雲の断たれた方角を見ると、その雲は燃えていた。
 
「あっちには、街がある」
「…うん」
「雲よりも上から、家くらいでかい石が、降ってくる」
「…いっぱい?」
「かもな」
「あの引っ掻かれたのは、誰かが、石で、引っ掻いたの」
「そうだ。大丈夫、こっちには降ってこねぇよ。もし降ってきても、兄ちゃんがぶっ壊してやる」
 
 
黙り込んだ弟を抱きかかえて、家に戻った。飯が冷える。弟も冷えちまう。断末魔の響く空なんざ、見せるものでもない。
 
 
 
 
「戦争って、なんなのかなぁ。戦争があると、どうなるの?お兄ちゃん」
「そうだなぁ。まぁ、起こっていいもんじゃねぇなぁ。普通は」
青豆と人参。南瓜。塩。水。不味くないだろうということは感知できるが、美味しいかはわからない。彩りを上げてやることぐらいしか、弟にしてやれることはない。
「怖がってる」
「怖いか?」
「…うん」
明日は小麦を練ったやつを入れてやろう。
「戦争に勝つと、いろんなものが勝った奴の物になる」
「…まけたら?」
「いろんなものが無くなる。で、どっちが勝とうが負けようが、いろんなものが壊れる」
「なのに起こるの?」
「そう。なんでかっていうとな、今回のは…そうだなぁ。勝たないと全部なくなる同士がいて、お互いに必要な物を互いが持ってたからだ」
多分考えすぎるから、明日は何か甘いものも食べさせてやった方がいいかもしれない。
「…ぼくは、おにいちゃんがいないと、生きていけないよ」
「そうか」
「おにいちゃんも、ぼくで生きているでしょう?」
「…そうだな」
「でもぼくはおにいちゃんと、その、仲良しだと…おもう、よ。それじゃ、いけないの?」
「ああ。それじゃダメだった」
「どうして…?」
「互いが欠けている物を持ってても、境遇と未来が同じでも、望んでいるものが違ったからだ」
「…そっか」
「あとはそうだなぁ。ギリギリで保たれていたバランスを、誰かの、悪意が、崩した。そんなもんだ、戦争が起きるのなんて」
弟の食事の手が止まった。食べ終わったらしい。今日も残さず食べた。
「お兄ちゃんが望んでいるもの、って、なに?」
「平和」
「うん」
「なんてことのない毎日。自分勝手に過ごすこと。破滅のない明日。家族との語らい。お前の幸せだ。一緒だろ?サラトナグ」
「…うん!ぼくもね、ルガにいちゃんが一緒にいてね、楽しいって、言ってくれるの、すごく、嬉しいよ」
「ああ。だから大丈夫。これでいいんだ。何があっても、兄ちゃんが守ってやるから。ナグも兄ちゃんの事、助けてくれよな」
「うん!ぼく、がんばるよ!いつか、ぼくだっておにいちゃんを守ってあげるんだ!…ほんとは、守ることも、ないほうが、いいんだろうけど」
 
弟が笑った。可愛い弟だと、笑顔を見る度に思う。もしも自分がこうだったらと、過去には何度も思った。そしてその未来さえ幻想であったこともよく理解した。
大切な、たった一人の肉親。血肉を棄てたこの僕にも感じられる、家族の縁。兄弟ではあるが、僕が求め、弟に必要な親であろうと。そう、決めたのだ。ごちそうさまでしたと手を合わせる姿には、何度だって笑みが零れる。これが持つべき親心なのだろう。と、その瞬間、遠くの方から、何かがドンと大きな音を立てた。咄嗟にビクついてしがみ付いてくる弟の頭を撫でて、抱きしめてやる。
 
「どっかの工場が爆発したんだろうなぁ」
「…ばくはつ?」
「ああ。あの方角でこの距離ってぇと…大分デカいのがいったな。大丈夫だ、戦争はすぐ終わるぜ。この調子ならな」
「ルガにいちゃん」
「どうした」
「ルガにいちゃんは、いろんなことを知ってるけど、ぼくは、それがすこし、怖いよ」
「…なぁナグ。戦争、兄ちゃんが少し、関わってたって言ったら、どうする」
ソファに腰かけて、唯一の家族を膝に乗せて。ずっと避けていたことを口に出す。
機械の身体を手に入れて、逃げ出すように町を離れた。復讐のために。追手は皆殺し。幼い記憶を探り出し、ようやくたどり着いた生家で見つけたのが、母の服を纏い、独りで泣いていた弟だった。衝動のまま父を殺した。これ以上、こいつを穢させるものかと。自分が守ってやらねばと。何も知らない弟に何も知らせず、静かに生きてきた。
 
家族からの二度目の拒絶を恐れていたのは、何よりも僕自身だったから。
 
「お兄ちゃんは、お兄ちゃんだよ。もしそうでも、お兄ちゃんがぼくを助けに来てくれたのは、変わらないんだもの。ぼくはルガにいちゃんがだいすきだよ」
 
首筋の髪をかき分けて、弟のうなじから蔦が伸びてくる。それを僕のコードと繋げて。魔力を、吸われるままに差し出してくる。その命を兄に預けてくれる。
 
黒い瞳が、僕を見上げた。
「何、泣いてるんだ」
「わかんない。でもね、つながってるんだと、思うな」
笑顔と、目尻に溜まった涙の雫。
「お兄ちゃんの涙も、ぼくが流すよ。ルガにいちゃんは、とっても優しいよ」
強く、抱きしめた。
「むぎゅう。痛いよう、お兄ちゃん」
「生意気言ってんじゃねーぞ、弟のくせに」
絶対に、何があっても、守ってやる。
 
「僕を信じろ。」
「うん。信じてる。」
 
 
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これ絶対戦争精霊側が圧勝して街に自分の痕跡遺さずうまいことやってたルガにいがサラさんのフォローもあって処刑とか免れて平穏な暮らしとかなんかトラブルメーカー(確実に聖女様)辺りにちょっかい掛けられながらどうにかして過ごすけど闇堕ちの未来も見えてくるから辛い。逃げ回る二人の逃亡者生活もあり得るから辛い。どうして辛い方向にばかり考えてしまうのか。
 
とりあえずつかの間の夢は見れた。はぁ~幸せになってほしい~~~