ほうさんのお国柄

企画参加用創作ブログ。絵は描けない。文のみ。お腐れ。色々注意。

屍人 前章 ②

 

②が予想以上に伸びたので急遽分けました。③がまた上がります。前章が前章じゃねぇなぁ…いつも通りだなぁ…おかしいなぁ…?もっと短く簡潔にまとめるつもりだったんだ…よ…

 

前回のサラさん以外のメンバーの行動です。時間と場所は飛んで街。TRPGでいう情報収集パート感。

 

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【港の話】


貿易船の荷降ろしを指示する声が響く。観光客を歓迎する華やかな声も。街の港はいつでも活気があり、賑わっていた。


その港の中に停まる巨大な船が彼等の目的地だった。空を飛び交う白羽の海鳥に混ざる赤い鳥。観光客を出迎える人々の厚さに負けず劣らずの人数が集まる、一隻の船の昇降口。その中の見間違う事のない真っ赤な姿が、彼等が訪ねた者だった。


煌びやかな格好と生まれ持った華とでもいうのか。彼等はその真っ赤な彼をどこで見ても別人に思う事はないだろうと思っていたし、ましてや他人を空見で間違う事も無いだろうと思っていた。一目で種を認識できる妖怪たちと同じくらい、彼は彼らしかった。


彼は四人の姿を確認すると、笑顔を浮かべて手を振る。周りの民衆に一言断ってまで四人の元へ近寄ってくる様子から、双方の親密な関係性が伺えた。


「ルートグラン!ゴズウェル!ルノーテスラ!アレスト!はっはー!なんと格調高雅たる面々!ご機嫌麗しゅう!貴方方に出会えた素晴らしい今日に感謝しよう!」
「惜しまない賛辞誠に感謝しようレイゲンドール。話がある。よいかね」
「はっはー!!いや、わかっている!招待状の話だろう!」


レイゲンドールは特徴的な触角のような髪をみょんみょんと揺らしながら、満面の笑みで一人一人と握手と抱擁を交わす。蒼昊を思わせる瞳は澱みなく、裏表や陰謀めいた魂胆を全くと言っていいほどに感じさせない。いや、そもそもにそのようなものが存在しないのだろう。レイゲンドールはにこにこと、立ち話もなんだ、と彼等を城とも言える船の中へと招き入れた。

 

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「つい先日、ワタシの元に一通の手紙が届いた!しかし!ワタシの一存で決められる話ではなく!アダネアに話を聞こうとしたのだが!なんと!!怪しいという事で没収されてしまってな!はっはーー!!」
「…あの下衆野郎に…見せたの…」
「はっはーゴズウェル!相変わらず仲がお悪いようだな!うむ!見せた!以後待機を命じられていた!」


レイゲンドールのそばに控えていたアルビダの赤い女性が、彼等に紅茶とスコーンを差し出した。大量の蜂蜜が入って黒く変色した紅茶、ミルクと砂糖が多くほぼ白色の紅茶、山盛りのスコーンに早々に手を出す作法もクソもなく動く三人の精霊の様子を、アレストは苦笑い気味に、レイゲンドールはやはり変わらずにこにこと微笑みながら眺めていた。話題は物騒ながら、あくまでもその光景は和気藹々とした茶会だった。


「聞く所によれば、この招待状はアダネア、マザー、トトセルカ、そしてゴズウェル!貴方宛にも届いていたようだ!」
「…おれ、にも?」
「そう!」
「私にはなかったな」
「僕もないぞ!」
「これはワタシの予想に過ぎないが!貴方方の場合は存在を認知されていない可能性!居場所がわからなかった可能性!この二つがある!
だが…うーむ、うむむ。正確にはアダネアとサラトナグに答えを求めた方がいいのだが…おそらく彼等は、貴方方を最後に呼ぼうとしている、という結論を出すと思うのだ!」


レイゲンドールは少々悲しげに眉を寄せて、揺らぐ紅茶の水面に視線を落とした。この真っ赤な青年の表情が曇る時は、なにか犠牲を憂いている時が殆どだという事を知っている彼等は、それを否定できない事を理解していて、ただ茶を啜った。レイゲンドールはまた語りだす。


「この手紙の送り主、裏で動いていた計画!それについてはワタシもあまり詳しくない!だがこれでも我が祖国の政の一角を担う身!不穏の覚悟はしていた!そして貴方方の来訪、これにより確信にもなった!!荒事になるというのはわかる!できうる限り行いたくない!だが、行かない事で無くなる話ではない。なれば、出来うる限り痛みを少なく、生まれる悲しみを減らす、それはワタシがしなければならない事だ!だから…うむぅ…」


それでもやはり歯切れの悪そうに声がしぼんでいくレイゲンドール。確かに四人が彼の元を訪れた理由は仕事の通達だった。正しく言えば呼びに来たのはルートグランとゴズウェルだけであって、アレストとルノーテスラは街で待機、であるが。
だがゴズウェルは黙々と美味しそうにスコーンを頬張り、ルノーテスラは地に付かない脚を揺らしながら頭に登って来た蜘蛛と呑気に遊び、アレストは慣れていると言わんばかりに紅茶の品質と値段を推測していた。明らかに対面するルートグランとレイゲンドール以外の世界が違う。眉を下げ悲しげに紅茶の水面を見つめる蒼い目に、ルートグランは静かに声をかけた。


「…レイン、お前は聡い。私達が望む物もわかってしまう程にだ。
確かに私達はお前を呼びに来た。研究所内部の反乱が予想され、その制圧が目的だ。彼等がどのような抵抗をするかは未だ完全に不明だが、荒事は確かに避けられない。
レイン、お前が本当に行きたくないというのなら、私は無理には連れて行かん。ここに残りルノーとアレスの世話を頼む」
「はっはー、相変わらずお優しいお方だルートグラン!しかし!貴方がそう判断してもサラトナグはそうは思わないだろう!」
「黙らせる。どうした、アレをそんなに大事にしているのか。あの男が、殺せと言えば、殺せるかね」
「サラトナグがワタシに目の前で殺しをさせる事を、決してワタシは彼の非道と思わない!『いつか』の為の、準備に過ぎないのだと思っている。…ソレにワタシが、永遠に慣れる事が出来ないだけなのだ…
…それにワタシは!ワタシの我儘で貴方がたの仲が割れる事を望んでいない!まだ未熟なワタシでは、その処置が平定を保つに必要な行為であるのかの判別がつかない!であるから!今は…貴方方に従おう。その中でワタシは、世の嘆きがほんの僅かでも消滅に近づくように、限りを尽くそう。」
「…そうか」


笑みにいつもの屈託のない光が見られない。歳を重ね、責任感と共に強がりばかりが上手くなっているのではないかと、かつて師弟として過ごした頃を思い出す。そして、いや、この子は昔から心の強い優しい子であったと、静かにカップを傾けた。
そんな時、


「そんな難しいことを考えるのか?」


そう口を開いたのは、ルノーテスラだった。青味がかった緑色の瞳がレイゲンドールを納めている。誇らしい自らの父と兄弟子に当たる者の会話に何を思ったのか。物申す、には威厳の足りない、スコーンのかけらを口元に付けて。


「そんなに殺したくないなら、僕が代わりにやるぞ?」


何を、という顔をしたのはルートグランだった。己が息子の発言に躊躇いを見せ、何ゆえにそんなに血の気が多いのかと、叱るべきなのかどうすればいいのかと、日頃の頭の回転など何処へやらといった様子だった。
流石にそんな父の様子に異変を感じたか、意図とは違う伝わり方をしたかと、言葉を探り言い直そうとする。


「おっ、お前がそんなに戦いたくないなら僕がやってやってもいいんだぞ!!僕がトドメを刺してやる!その代わりっ!その、ほら!あれなんだぞ!僕の子分だからな!!僕に守られるんだぞ!」
ルノー…そういう問題ではない…そういう問題ではないのだ…」
「違うのですか!?」
「情操教育もするべきだったか…」

 

額を抑えるルートグラン。慌てて訂正できていない訂正をわたわたと起こすルノーテスラ。正しく親の苦悩子知らず。そのようなやりとりをまんまるにした目で見つめていたレイゲンドールだが、次第にその表情は綻びくだけ、随分と柔らかく、その不器用な親愛に対して笑んでみせた。


「…はっはー!そうかそうか!つまりルノーテスラ!貴方はワタシを気遣っておられるわけだ!」
「なっ、そんなのじゃないんだぞ!いっぱい修行したから僕も行きたいって思っただけなんだっ!お前を気に入ってるからついてってやろうとかじゃないんだ!お菓子が美味しくて見目が良くていい奴だからって思い上がるんじゃないぞレイゲンドール!!」
「はっはー!そうかねそうかね!それは実に頼もしい!」
「そうだろそうだろ!なぁゴズウェル!僕はつよいもんな!」
「……そう、です…ね?」
「あれすなんか絶対勝てないぞ!な!」
「(ビクッ)俺…!?まぁ、そっすね…勝てねぇなぁ…」
「ふふんっ!」(ドヤ顔

 

鼻高々く誇らしげに胸を張る少年を無粋な茶々を入れずに適度に(歳相応らしく)褒め称えるゴズウェルとアレスト。おー、といいながらぱちぱちと拍手をするのは、本意なのか子どもをあやしているだけかそれとも面倒を避けているだけかそれはわからないが、少なくともその様子を見た保護者はため息をついたのだった。


「…はぁ」
「…ルートグラン、どうだろうか?【任せて】みるのは?」
「…確かにかなり戦闘に関しては…自衛も…しかし…しかし…うむ…」
「(きらきらした瞳とドヤ顔)」
「…ルノー、これは任務であって、遊びではないぞ」
「ですが僕もいつかはするんでしょう?」
「…そう、だな。分かった。必ずレインや私の近くにいなさい。それが約束だ」
「はい!! やったなレイゲンドール!僕に任せておけ!おーぶねに乗った気持ちでだ!!」
「はっはー!そうさせていただくとしよう!!」

 

和気藹々きゃっきゃと戯れる二人をそのままに、ルートグランは小声でゴズウェルとアレストに声を掛けた。


「…ゴズ、何かあった時は、頼んだぞ」
「…承知、しました」
「アレス、もしも私が戻らなかった場合は、この子の世話をしてやってくれ…」
「いや、ルートグラン様が戻れなかったら誰も…」
「子はなんとしてでも無事に帰す。命を懸けても。それが、父の責務というものだ」
「…ウス」

 

 

港を舞う海鳥の声があいも変わらず響く昼。茶会は酷く穏やかに、過ぎていった。