こどものひ ご都合主義前振り
食事の用意、といっても、この家の主人は殆ど包囲するものがない。果物や野菜を庭から取ってきて洗って出す位なものだ。
もう一度部屋へ戻れば、中サラはなきやみ、大サラに撫でられている。小サラは未だに寝ている元サラの頬をつついていた。
「...大丈夫なのか?」
「...!」
「大丈夫そうだな。よかった」
中サラはこちらを見ると申し訳なさそうに頭を下げた。精霊の年齢の仕組みがわからないので何とも言えないが、三人とも幼く見える。大サラなんて、見た目だけでいえば元々とそう変わらないのだが、纏う雰囲気は危なげで儚い。そして少し敵意がある。当たり前といえば当たり前だ。記憶がないようだ。唐突に知らないところにいて、知らない人間がいる。恐れて当たり前だ。
ようやく記憶を持っていると思われるサラが起きた。三人を見て、何やら俺の知らない言葉で話し始めた。
『ぼくはサラトナグ。みんなもそうだろ?』
『もちろん。何かがおかしいって事もわかる。僕はこんなに魔力が強くないし、記憶に靄がかかってる』
『お父さまとお母さまがいない。おかしいの!』
『パパがいないの。パパ、死んじゃうかも。どうしよう?どうすればいい?』
『あー、だいじょうぶ。たぶん、みんなぼくからぶんれつしたんだろ、なんでか。
よくわからないかもしれないけど、なんらかのげんいんでちいさくなった。でもぼくのからだはぼくだけのからだじゃない。だからちいさくなりきらなかった。いくつかのちいさいもの、にわかれた。そういうことでなっとくしておこう。いいね』
『いいよ。僕が僕じゃない事はわかるし、なんでもいいや』
『大丈夫、ぼくもわかる。僕じゃないんだな、って』
『よくわからないけど、あそばせてもらえるなら、なんでもいいやぁ』
『よしきまりだね。おせわはぼくとあそこのおにぃさんがしてくれるから、なんでもいってね。こわいひとじゃないからね』
「あれすと、はなしはおわったよ。
なんらかのりゆうで、ぼくのまりょくがせいぎょできなくなってる。ちいさくなってる。
でもぼくのからだはいろんなひととしょくぶつのしゅうごうたい。ちいさなからだにおさまりきらず、まりょくもおさめられるうつわじゃない。たぶんぜんぶおさめるためにふえた。
なんですがたときおくまでぶんれつしたかはわからないけど、ちいさいぼく...ぼくがいちばんちいさいけど、かれらにはいまのきおくはない。でもじぶんがじぶんでないことはわかる。つまりけっきょくぼくだ。
ことばはちょっとつうじないとおもうけど、ぼくあたまいいから、きょうつうごをすこしおしえる。いちばんおおきいぼくはすこしはなせるはずだから、そのことはなしておいておくれ。かわいがってあげてね、ぼく、さみしがりやだから」
「あー...とりあえず、気にしちゃいけない、って事だな?」
「そう。にんげんにはりかいのおよばないちからでいかされてるぼくらだから、なにがおきてもふしぎじゃないさぁ」
「よぉくわかってるぞそれは。とりあえず、意思疎通できる程度に会話ができると助かる。世話はまぁ...あんたが増えたくらいなら大丈夫だろ...」
「きみぃ、しつれいになってないかな?」