【閲注】サラアレ練習 本編終了後if
書き方を変えたすけべ練習(?)。サラアレ。
変えたって言ってるけど多分変わってないように思える。スマホとパソコンで交代して書いたのだが、何故か書く画面が変わると文章も変わって、ぎこちなくなる。ということがわかりました。どうにかしたい。
BL注意、やってないけどやってるので注意。
本編終了後設定。終了してくっついた比較的すぐの当たり。
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荒く乱れた呼吸。髪の張り付く額。閉じられた瞳。小さく漏れる濡れた声。
細められる眼。吊りあがる口角。腰を掴む手。柔く笑う男の声。
数度、大きくきしむ音が部屋に響き、重なる二人はキスをした。
更けきった夜。暗闇を縄張りとする森の獣たちだけが蠢く中、森に立つ小屋の中で明かりが一つ燈された。揺らぐ炎に照らされて、月明かりだけではわからなかった色が浮かぶ。
長い黒髪をひとまとめにした精霊が、燈した明かりから手を離し、そばに横たわる青年へ声をかけた。
「アレス、だいじょうぶかい」
ゆっくりと、深く。呼吸を繰り返し鼓動を鎮めている茶髪の青年。赤らんだ頬のまま、濡れた紫の瞳で声の主へ視線をよこした。
「…だい、じょうぶ」
返されたのはなんとも弱々しい声。
自らの喉から出た予想以上の掠れた低音に、不満げに唸る。そんな青年に苦笑し、精霊は側のテーブルに置かれていた水の入ったコップを差し出した。
怠そうに横たわる青年は差し出されるコップを認識しながらも受け取らない。精霊の不思議そうに見つめてくる黒い瞳に向けて、はくはくと、無言で唇を開けた。
「...甘えたい気分かい?」
「だるい...あんたのせいで」
「あー...そりゃあ申し訳ないねぇ...君が可愛かったものだから」
精霊は、青年の身体を眺める。大小濃淡様々な紅が点々と散り、肩口には噛み跡。手首や足首、太腿には絞めたような、縛った痕跡が残っていた。何も知らぬ者が見たら、拷問か、折檻か、あるいは当然のように特殊な趣向を想像するに難くない姿。
まるで咎める様な目付きで、青年は精霊を見ている。はぐらかし誤魔化す様に、精霊はコップを傾け水を含んだ。外気と変わらぬ温度になっている水でも、熱に浮かされていた直後の身体には冷たいと感じる。
身体のだるさを訴える青年に唇で水を運び与えた。重力に逆らわず少しずつ流れでる液体。それに合わせて上下する青年の喉。渡りきった後吸い尽くす様に精霊の舌もすすり、わざとらしく音を立てて離れた。青年は満足げに、少々高慢そうにも見える笑みを浮かべている。
「こら。またそうやって煽るんだから」
「ただの礼だよ。好きだろ?」
「好きだから、煽ってるって言ってるんだよ」
「くくく、あんたのそういう正直なとこ好きだぜ」
「僕は君の素直じゃないところ、好きだよ。まったくもう...」
困ったように、けれども不満もなさそうに笑う。もう一度青年の身体を見て、拭くものを持ってくる、と立ち上がった。精霊の白い背中に揺れる黒髪と、合間に見える紅い引っ掻き傷。小さな三日月の散った肩に、青年は唇を噤み視線を逸らした。
「...どうかした?」
「別に、なんも。持って来いよ。早く寝ようぜ」
「はいはい、ちょっと待っててね」
遠ざかる背中。青年は思考を巡らすが、傷跡をつけた記憶がなかった。いつ、あんなに。近くの窓のカーテンを開け、月の位置を確認する。青年は指折り時間を数えるが、片手を過ぎた所で数えるのをやめた。
「また、記憶、ねぇわ...」
体感しているよりも大いに過ぎ去っている時間。青年は力尽きたように枕に顔を埋めた。
自身の体力と疲労感から考えてみるが、相当、していたのだろう。しかし、青年はそのうちの殆どの自分の挙動を思い出せない。一人呟いた、また、の言葉に違わない程にその経験は多く、精霊のいないうちに青年は顔を赤らめて大きく息を吐いた。
理由は明確でないにしろ、ある程度の予想がついていた。疲労による睡魔か失神。この時点で青年は屈辱的な気分であるのだが、最も大きな理由が快感による気のやられであることを本人が一番よく分かっている。それが青年にとっては、なんとも情けないような、恥ずかしいような、照れるような、屈辱であるような。
無意識のうちに縋りつき爪を立て、肌に無数の痛々しい傷をつけたことへの謝罪が、思っていても声に出せないのは、今更ともいえるなけなしの男のプライドだった。
啼かせた女性は数知れず。あまりあの黒髪の精霊に言ったことはないが、男相手も当然のように経験がある。
そのほぼすべてで、余裕をもって、主導権を握ったままでいられた。あの精霊相手にだって、抱く方であれば比較的余裕をもっていられる。
それなのに受け身になった途端に、なんともまぁ。
ずいぶんとあられもない声を上げて、とろけきった表情で、縋って強請ってしがみついて、好きだの気持ちいいだの、もっとだの。ましてや、欲しい、いかせてください、だなんて。
思い出せば出すほどに青年は恥ずかしさに顔を染める。そんな自分を受け入れられるほど、青年はまだ慣れていなかったようだ。
ぬるま湯でも用意しているのか、ばしゃばしゃと水の音が小さく聞こえてくる。夜の営みに関してのみ異様な体力を見せる黒髪の精霊は、どちらの立場になろうとも、大いに乱れて終われば平然と持ち直す。
圧倒的なまでの経験値の差と言えばそれまでのことなのだが、青年としてはそれが負けたようで納得がいかない。
そんなこと、少しでも表に出そうものなら確実に揶揄われることは明白だ。だからこうして、いないうちに照れて、戻ってくるころには平然と、余裕を気取る。思い出すと跳ねる心臓も、火照る体温も、知らないふりをして。
しかし、この日は流石に取り繕う体力も気力も残っていないのか。襲い掛かる睡魔に負け、瞼を閉ざした。
汚れたままの肢体を放り出し、カーテンも閉じぬまま。近づいてくる足音を意識の最後にし、眠りについた。
「…おや、まぁ」
桶にいれたぬるま湯と柔らかな布をもって寝室へ戻ってきた精霊は、安らかに眠る青年の姿を見て微笑んだ。そう長い時間席を外したわけでもないのだが、よほど疲れていた違いない。
できるのであればこのまま寝かしてあげたいのだが、さすがに放置しておくのもはばかれる状態。口元に手を置きわずかに考えたのち、精霊は青年に声をかけることを選んだ。
「アレスト、起きて。このまま寝るのはちょっとだめだよ」
焦点の上手く定まっていないような紫の瞳が現れた。
「…さら、」
「うん。僕だよ。拭くね?すぐ終わらせるから、ごめんね」
「う......あっ、あぁ、んっ、」
「こら、力入れちゃダメでしょ?」
半分以上寝ている状態でありながら、後処理のための接触にも反応する。元からこんなにも過敏だったか?と考えるも、大した問題じゃないと気にせずにつづけた。
小さく跳ねる身体の艶めかしさに、直後でありながらも少しばかりそそられる。漏れる声から意識を逸らし、最後に、ぐちゅり、という音を立てて離れた。吐息が抜け、うっとりと恍惚そうな瞳が宙を見ていた。
「…はい、おわり。大丈夫かい…?」
「…さらとなぐ、ねよう」
「なんだい可愛いねぇ…待たせてごめんね。寝ようか」
「ん…」
意識があるのかないのか、青年は精霊の手を引き腕の中に収めようとする。普段では考えられないような可愛らしい姿を愛おしげに見つめる。そばの炎を吹き消せば、開いたままのカーテンから射す月の光だけが彼らを照らした。
キラキラと光る紫と、しとりと垂れた茶髪。整った顔も、しなやかな身体も。精霊が愛して止まない全てが、月明かりに映されている。
「...いくらお月様にでも、今の君の姿は見せたくないなぁ」
「...おこって、る?」
「いいや、怒ってないよ。でも、ちゃんと閉めようね。そうじゃないと、僕は君を閉じ込めたくなってしまうよ」
「...そう、か」
「嫌かい?」
「.......」
「かわいいね、アレス。さぁ、眠ろうか」
布で閉ざせば、また暗くなる部屋。二人きりの深夜へと戻る。互いの輪郭程度しかわからない暗さの中、しっかりと青年の手は精霊の腕を掴んでいた。
枕にでもするように、青年は精霊を抱き込む。抗う事なく収まる精霊は、早々に寝息を立て始めた青年の寝顔を見て、幸せそうに笑った。
「おやすみ。健気で可愛い、僕のアレスト」