ほうさんのお国柄

企画参加用創作ブログ。絵は描けない。文のみ。お腐れ。色々注意。

精霊小話

精霊のよくわかんない価値観に触れるアレストくんのお話。相変わらずサラさんとおじじは仲が良いようです(?)

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春のとある一日

 

1。

コンコン
「…客人だぞ」
「…ルートだなぁ…」
「わかるんだな」
「そりゃね…こんだけ魔力垂れ流してきたらすぐわかる」
「その、魔力でわかる、って感覚がわからねぇんだよな」
「他の五感で例えるなら…音とか匂いとか味とか…見える、って精霊もいるかな…でも基本、感じる、としかいえないなぁ。あるんだよ。濃さも属性も個体で違って…」
「ルートグラン様はどんな風に感じるんだ?」
「重くて濃くて自信過剰、硬いって感じじゃないなぁ最近は。そこに大きな苔むした岩がある。そんな感じ」
「言われてもマジでわかんねぇわ…」
「僕らと一緒にいればもしかしたらそのうちわかるようになるかもね」
「とりあえずドア開けるか?」
「うん」

 

 

2。

「ついこの間出てったばっかりなのに、また君のツラを見なきゃいけないなんて僕は災難だよ」
「私も貴様にはできる限り会いたくはないのだがな」
「(またすぐ険悪な物言いをする…)
でも確かに春に来るのって珍しいっすね。場所も、ルートグラン様がでて行った後に引っ越して来たのに、やっぱり魔力でわかるもんなんすか」
「ああ。私は元々魔力の感知は得意だからな。それに…」
「ねぇちょっと、余計なこと言おうとしてない?」
「こやつは私に居場所を知らせるように魔力を垂れ流しているからな」
「ちょっと!!!言わないでいいでしょそんなこと!!」
「でも昔のサラトナグはルートグラン様から逃げてたって…」
「ああ。隠していたな。そもそも国全土からこやつの匂いがする程だ。隠すのは容易い事だろうが、わざわざ…」
「ねぇ!!言わなくっていいじゃんか!」
「なんでだ?」
「いや、え、だって…」
「もう私は貴様の命を狙おうとはしておらんぞ。隠す必要がないから、で済むことではないか」
「…ああ、うん、そう…だね」
「なんかあるんだな」
「なんもない」
「何かね。言ってみなさい」
「なんもない!!!」

 

 

3。

「そもそもなんで来たの?まだお腹すいてないでしょ?」
「私は空いておらんが、蜂がな…」
「…肉なら街で罪人貰ってきてよ。僕のとこには今はないよ」
「いや、この辺りに花畑があったはずだと記憶していたのだが、無くなっていてな。蜜蜂が飢えていた」
「ああ、先の冬に火事で無くなったよ。なるほどね、花畑を貸して欲しいのかい」
「ああ。同じものがあるだろう。案内しろ」
「頼み方ってのがあるだろ?」
「…貸していただけるかね、サラトナグ」
「まだ違うなぁ」
「…つべこべ言わずに寄越せ。喰われたくなければ」
「あーそうそうそういう負け犬が吠えてる感じ好きだよ。家の裏手に入口があるから目を瞑って歩いててよ。後は勝手に着くから」
「わかった」
「(それが正解なのかよ…)」

 

 

4。
「…仲悪いって割に、毎回助けてるよな」
「彼が人間だったら助けてないよ。それに僕と彼は加護の系統が違うし」
「系統?」
「そう。僕は生産系。農作物とかの生産に特化してるからね一応。彼は生産はほぼほぼ出来ない。どちらかというと加工系統。
僕ら精霊は助け合って生きる。それぞれがいないと生きていけない。好きだろうが嫌いだろうが、余程の事がない限りは助けるのさ」
「上下関係とかねぇの?」
「ないねぇ。人間の文化では生産者は軽視される傾向にあるみたいだけど、僕ら精霊にはないよ。生産系の加護を持ってる精霊が一番多いけど、数の違いだけだね」
「へぇ…差別とかマジでねぇんだな、あんたら」
「みっともないだろ?そんなの。差別するほど僕らに権利も欲もないし。
アダネアみたいな子は相当下に見られる事があるかな。後は僕やルートみたいな強い精霊が上に立つ事はあっても、それ以外ないなぁ」

 

5。

「なぁ」
「なに?」
「なんでさっき焦ったんだ?」
「…いや、だって恥ずかしいじゃん。あいつ調子乗るし」
「サラがあの方の居場所がわかるってのと一緒だろ?」
「…僕の魔力はさぁ、国中に撒かれてるからわかりにくいんだよね」
「拠点とか多いもんな」
「…またあいつが野垂れ死そうになって、変な思考になったら、困るからさ」
「おう」
「わざと、わかりやすく、魔力出してるよ…」
「…そんだけ?」
「な、なんだよ!それだけってなんだよ!!!!こっちは恥ずかしいんだ!!」
「なんでだよ。優しいじゃん」
「なんで僕があいつを気遣ってるって事を知られなきゃいけないんだよぉ〜!!優しくないもん〜!!」
「ああいつもの素直じゃないやつか…」
「それに僕みたいな生産系の加護の魔力って結構美味しいらしいんだよね…わかりやすくする意識だって、その、美味しそうな感じにしてるし…」
「(美味しそうな感じがわからねぇ…)」
「さ、誘ってるみたいじゃない…?」
「わっかんねぇなぁほんとあんたらの感覚はよぉ!?」
「嫌なんだよバレるのーー!!自意識過剰みたいにしてるのも誘ってるみたいなのもわざわざ配慮してるのもすごく恥ずかしいんだってばーー!!!もうおわり!!この話終わり!!!忘れて!!」