ほうさんのお国柄

企画参加用創作ブログ。絵は描けない。文のみ。お腐れ。色々注意。

【閲覧注意】それは過保護な繁栄の恵みですので。

どれだけすけべなワードをもりこんですけべじゃない物をすけべっぽくかいてすけべさせるか。つまりそういうことです。短いです。
 
やってはないです。ですがサラさんとルートおじじの発情期のお話ですので当然性的な要素は入ります。
ちょっと暗めの、ああほんとうに性欲処理なんだなーって感じ。恋愛的な感情があまり見えない感じに。
 
前半はサラさん視点。後半はおじじ。折角のえろえろなテーマなのにエロエロにさせなかったのは僕の意地か何かなのだろうか。素直じゃないね。
 
もしかしたら続くかも知れません

 

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冷ややかな夜だった。暗い、夜。か細い月と星々の灯りは、鬱蒼と繁った木々に覆われた小屋にはほとんど届く事はない。
 
 
暗い部屋の中で、寝台の上で、仕切りに四肢を蠢かし、苦しげに喘ぐ少年がいた。一糸纏わぬ姿で、呻き声がたった一人だけの室内に転がり落ちる。
熱の篭る湿った吐息は途切れなく続き、口の渇きを癒そうとしたのか、側に置かれた水差しに震える腕を伸ばす。掴むという目的は達せられる事はなく、がたりと音を立てて硝子のソレは崩れ落ちた。鋭い音が疾る。伸ばした腕は力なく項垂れ、また、体内の狂おしい衝動を押さえ込むようにシーツに爪を立て握り込んだ。
 
「(かたづけ、ないと)」
 
寝台の下、足元に散らばる澄んだ破片。柔い少年の肌が触れれば、切れ、真紅が溢れる事は明らかだった。
寝そべったまま、手を伸ばす。乱雑に大きな一欠片を掴み取った。透明な鋭利な硝子片。夜の帳の中では煌きはなく、そこにある、という事しかわからない。
 
白い、柔い、てのひらに、握る。ぷつりと膜が裂ける。体液が滲み空気に触れ、紅が白いシーツに落ちた。
手を開き、ぽいと凶器を放り投げる。傷の深さの割には流血は異常に少なく、傷口は血液が固まるよりも速く、根や蔦のように見えるものが縫い合うようにして閉ざされた。その光景を痛がる様子もなく呆然と眺める。何もおかしくない、いつも通りの光景だというように。だが血液とともに、身体の中を焦がす行き場を失くしていた魔力の奔流が、自己の修復によって流れ出る。張りつめていたものが、わずかながら、解放される。
 
「(気持ちいい)」
 
またひとかけら、握りこんだ。痛みがないわけではないのだろう。裂けるたびに、蕩けたような心ここにあらずな表情に、意識が戻っているのだから。
しかし、その痛みの表情は永くは続かない。一瞬の影を落とし、また、その眼の焦点は揺らぐ。もっと、もっと。血を流そうと、傷口を広げようと、ぎちぎちと刃と化した塊が断面を曝していく。滴は種子にかたちを変えて辺りに散らばっていく。いくらでも湧きいずる、身体を焼く恵み。掌を傷つける程度では、気の紛れさえ一瞬。
 
「(もっと、なにか、傷つかないと)」
 
身体の修復。もっとも容易に魔力を消費し生命力を摩耗する行為。散らばるガラス片を気にせず踏み潰し、魂の抜けたような覚束ない足取りで寝台から離れた。真白の布を引き摺る様に背負い連れる。足の裏が裂け紅が床を汚し擦る布を染める。
少年は生命を撒き散らす行為を望んでいた。厨に包丁、コートにナイフ、薪置き場に斧。一人虚ろに繰り返し、ゆっくりと歩む。
 
「ッ、ひ、ぃあ…!?」
 
なんの前兆もない震えが、少年を襲った。ガクンと膝から崩れ落ち己を掻き抱く。断続的な呻き、いや、喘ぎが零れる。悶える。呼吸を留めようとしているのか甘い声を抑えようとしているのか、口を抑えようとしてその意味のなさに諦めて、恍惚の想いを吐露した。
 
 
「きみが、きたか」
 
 
 
 
少年の人避けの森を、侵した者がいた。熱い昂りのままに、乱暴に。拒むように求愛する少年の荊を断ち、次々と生え変わる根に衝動を打ち付け、真っ直ぐに。
そのものが少年の拘束を跳ね除ければ除けるほど、少年の熱は解き放たれていく。少年の中に滾る激情を受け止め破壊されずにいる存在など、たった一つしか元より有り得なかったのだ。
 
待ち侘びた存在。決して少年自身が認める事はない、希ったもの。
 
 
「はやく、きて、」
 
 
この発情をとめてくれ。
 
 
「ねぇ」
 
 
ルートグラン。
 
 
 
 
 
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花蜜の香りが鼻を擽ってきた。それが決して大地の恵みではなく、自身の嗅覚が冴えていたという前兆であることを、理解すべきだった。なんせ数十年振りだったのだ。気づかぬ事を誰が責められようか。
 
 
今年の恵みは大層な物だった。山菜はよく茂り、果実も多い。兎等の獣達も大繁殖とは言えないが、例年より確実に多い。普段菜の物を摂る者、肉を摂る者。その多くが菜も肉もよく摂る事となっただろう。
 
元より恵みの時期、そして整った食事。それが我々精霊に与えるものは大抵、発情期、とされる、命を産む権利、だ。
 
喜ばしい事なのかもしれない。いや、喜ぶ事だ。感謝すべき事だ。だがしかし、度が、過ぎるのだ。
 
 
子を残せと、情欲が、脳を嬲るように叫ぶのだ。力を持つ者ほどその衝動は重く、意思を支配しようとする。記憶を失くして情交を終えることが常である程であり、基本的に、望んでは、いない。
勿論、番がいるもの、子を残したい者は別だろうが、私は求めていなかった。今は子はいらない。よくわからぬ内に情婦気取りができるのも実に困る。
 
だが、なってしまったのだから仕方がない。なっていた事に気がつかなかった事も、初期段階では仕方のない事だ。
甘美な蜜に誘われた。勾引かされた。無意識の内に人里を離れて森に入った。結果として不特定多数の女性に遭遇せずに済むのは助かる事だが、森を彷徨う内に嗅覚はより鋭くなり、覚えていたはずの森の形状とは似ても似つかぬ鬱蒼とした森は募る衝動の発散も許さず、蠱惑の香が脳を完全に籠絡をする頃には、もうこの花蜜の元に辿り着くしか解放の道はないのだと思わせた。
 
 
森を進む。道無き道をひたすらに。考えなどなかった。ただなにかが呼んでいる気がした。本当にそれだけが思考としてぼんやりと残っていた。
強い人避けの術がかかっていた。その奥から、もっと、もっと、あまい、蜜が。
 
漏れている。
濡れている。
…啼いている。
 
それは圧倒的な威圧だった。粗暴極まりない魔力の澱だった。砕き破壊しきってやろうという牙を剥き出した理性のかけらもない衝動。ある程度の学習能力があれば近寄れば無事で済まないことは本能で理解できるような危険さ。
それが、薄いうすい膜のように、私の求めているモノを覆っている。
 
実に、小賢しいと思わんかね。素直でないというべきか。このようなもので、この私を撥ね退けられるとでも。
 
屈する気はない。させようというのならば、させるまでだ。一歩踏み出す。敵意が認識される。確かに破った。この界の内に入った。荊が襲い掛かる。樹木の槍が襲い掛かる。なるほど。いい準備運動だ。ああ、いや、前戯、だろうか。
 
 
「(きもちが、いい)」
 
確実に、人のいない空間。なにをしても、何も傷つかない空間だ。衝動を伴いすぎる魔力が無暗矢鱈と消費され放出に歓喜する。まだ、まだ、湧く。野生が鎌首を持ち上げて情欲の発散を求めている。なりふり構わず薙いだ。何度も断ち、壊し、潰し、命と命のやり取りを、心を置き去りにして愉しんだ。本能と本能の打ち付け合いというこの体が求めていたものに打ち震える。爪を立ててくるような擦り傷さえも愛おしい。もっと、もっとだ。足りない。今の快楽が大きければ大きいほど、期待させるのだ。その、奥にあるものを。それがどれだけ私を満足させられるものなのだろうかと。
 
 
だがそれは終わりを迎える。どれほどの時間だったのだろうか。何も覚えていられなかった。私が制した。荊の群れを私が侵し尽くした。無我夢中で、ただ、力の発散に酔っていた。あっけない。あっけない。物足りない。
その先にあった物は、鬱蒼とした森の、小屋。
 
…考えればわかることだ。考えが及ばなかった。考える気もなかった。これほどの人避けを施し、超広範囲に色香を放出し、精霊における最大限の恵みを与えられる発情期、この私の発情期の全力を受けて壊れぬ森を造る。そんな者、そう沢山居てたまるか。アレの住処だ。
 
 
通ってきた道を見る。既に修復の始まっている荒れた道。あれだけ乱雑に押し入ってきたのだ。あれだけ激しく抵抗したのだ。いくら眷属の行動と言えど、気付かぬ訳があるまい。そしてまだ沈黙を保っている。拒まぬ。香りは止んでいない。発情期。
ノックは不要だろう。…いや、むしろ、戸が開いた。
 
 
 
黒い瞳が、光の無い夜に、なるほどよく似合う。ただその背の屋内はさらに暗い。見上げてきている。何も言わない。息を吐く。何も言わない。息を吐く。何も言わない。距離が縮む。息を吐く。何も言わない。手を伸ばす。息を吐く。何も言わない。肩を掴む。息を吐く。何も言わない。腕が伸びてくる。息を吐く。何も言わない。
 
 
息を吐く。
「くるしい」
 
息を吐く。
「らくになりたい」
 
息を吐く。
「      、   」
 
 
 
ああ、もう、知らん。
 
 
 
 
 
 
(続く?)