ほうさんのお国柄

企画参加用創作ブログ。絵は描けない。文のみ。お腐れ。色々注意。

父として出来る事をした日(後半蛇足感)

ルートグラン様とルノーテスラ君の会話ss。父の日イベ用。おじじの昔の頃のssを読んでいるとわかりやすいかもしれない。

 

 

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ルノー。この場所がどういう場所かは学んだ事があるか」
「はい父上!蛇呑の谷と呼ばれている場所で、主に咎人の処罰に使われます!非常に危険で質のよい毒が採れることから、蛇使役の明勲が採毒にもきます!」
「ああそうだ。大抵登り切る事ができた場合は免罪とされるが、ここに落とされる者は戻る事を想定されていない。採毒の取引としてこの場所の蛇に肉を与える事で無事に採毒をしているからな」
「そうだったんですか!はー。自業自得ですね」
「そうだな。深さは…うむ。途方もない、としておこう。横にも縦にも広く深い。夜になると中の蛇は活発に動き餌を求める。日光の出ている間はそう動かないが、どの道光の届かん奥底は常に蠢いていると思っていいだろう。日中は上までは出てこんが、夜はそれはそれは執念深く追ってくる」
「まるで体験したかのような口ぶりですね父上!父上はなんでもしってる!」
「…凡その精霊は、眷属が毒性を持っている場合、その眷属の毒に耐えうるだけの毒耐性を元から持つ。お前の蜘蛛も毒があったな」
「はい!牙と噴射です!」
「致死性は」
「毒牙なら10割!獲物の中身、肉と筋繊維を溶かす腐敗毒です。血流に乗り体全体を侵します。肌への接触のみでは多少落ちますが、接触部位の爛れと激痛、毛穴や小さな傷から体内にはいるので、早急に部位を抉りとらないと死にます!」
「そうか。実に強力でお前との相性も良い。
…この谷の蛇の毒は、お前なら即死はしない。と思う。ただし急激な血圧の上昇、混乱、目眩を与え、一度咬まれるとその毒の回りは早い。心臓、及び脳に毒が大量に回れば流石に死ぬ。つまりなんにせよ咬まれん方がいい」
「はい!勉強になります!」
「使う事はない方がいいが、一応教えておこう。毒牙の上部から毒線があり、身体の上部にも渡っている。頭を断っただけでは肉は食えん。口の端を切り、そのまま上顎と下顎を引き裂けば毒腺ごと上の身が取れる。下手に切るよりは力で裂いた方が処理としては確実だ」
「父上は博識だ…父上のお話は聞いていてとてもたのしいです!」
「そうだな。知識が増えるという事は実に、楽しいものだ。そして、一番の知識を得る方法は、経験だ。それ以上の物など存在しない」
「はい!」
「時にルノーテスラ。お前はナイフを持っているか」
「ああはい、狩猟用の物は武器とは別に…」
「眷属の毒以上の毒耐性を得ようと思った場合は、慣れ、しかない。お前なら…うむ。2度位は耐えれるかもしれん。武器を貸しなさい」
「? はい」
「蛇達は共食いを繰り返し、何匹か凄まじい大蛇がいる。まぁ大蛇は谷底からは出ん。対処は楽だろう。お前にはその眷属もいる」
「…あの、父上、」
ルノー。今は何時だ」(襟首を掴み上げる
「ふわっ!?…ゆ…夕刻です」
「つまり?」
「…今から夜明けまで、蛇達が活性化します」
「ああそうだ。よくわかったな。えらいぞ。それと、組手の受け身も非常に上手くなった。父は嬉しく思う」
「…ありがとうございます」
「では大丈夫だな。よし、行け」(ぽーい
「うわぁあああああああ!!!!ちちうえぇええ!!!」
「夜明けには迎えに行こう。せめて生き残れ、我が愛息子。…聞こえていないだろうがな」

 

 


「(やばいやばいやばいどうすればいい受け身っていう問題じゃないぞこんなの落ちたらその衝撃で死ぬに決まってるどうするどうするどうするどうすればいいどうすれば生き残れる考えろ焦るな僕焦っても始まらないそうだ先ずは速度を落とさないと、壁、壁に手がつけば、蜘蛛の糸、いや無理だこの速度の落下には耐えれないどうするどうす、)」


「いっ、!」(がささっ


「(なんだ今の痛い、見えない、音からして、木か?小さい木が壁から生えてるんだじゃあ壁はそんなに硬くない?岩を隆起させ…いやもう遅いもうぶつかれば死ぬ、木、木しかない、自生よりは丈夫で、僕を殺さない柔らかい木、どれだ、どれが、僕の生やせる樹木で一番柔らかい…ああああああどれだ硬いものならわかるのにどれだどれだどれだ早く早く)」


(葉の量が多くて、枝がしなやか。成長速度も早いから、雨宿りの屋根にしたりできるよ)


「(サラトナグが言ってた!!あれ!!!あれならある!!質はもうどうでもいい!量!!落下を遅くできればいい、ああ、この見えない状態で、この速度で、壁を指定して、生やす?そんなのあるか!?いややるしかないやるしかないやるしかないんだぞ僕僕は死なない死ぬわけがない父上がそう判断したんだ僕はやれる!!!壁まで移れたら後はできる限り丈夫な枝か岩で壁を擦りながら行くしかないやるしかないやるしか、やるしか…!!」


「蜘蛛、ちゃんと掴まってろよ。僕が、守ってやる…!!」

 


「枝垂れ、抱擁、木々、木漏れ日、暗きを照らせ豊穣の明!」

 

 

 

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「(…あれ、ここ、は、)」
「気がついたか」
「ぁ、ち、」
「詠唱のし過ぎで喉が枯れている。飲め」
「…」(こくん
「…蛇が撤退する、日光の射す場所までは登れていた。蛇が退くのを見て安心して足場を作って休んだだろう?そのまま寝ていたぞ。記憶はあるか」
「……」(こくん
「彼を労ってやれ。きちんと足場の周りに糸を張ってお前を守っていた。体力を使い過ぎたな。今は食事中だ」
「…ちち、うえ」
「ああ。」
「……!」(うるっ
「泣くな。ただでさえ水不足だぞ今のお前は。飲み干してから泣きなさい」
「はい…!」(ぐすぐすごくごく
「器用だな。食事も用意してある。湯もあるから、拭くぐらいは出来るだろう」
「…ちちうえぇ…!」(えぐえぐ
「ああ。おいでなさいルノー。よくやった。誇り高い私の息子、お前は天才だ。さぁ父にお前の話を聞かせておくれ。お前の努力を。お前の健闘を。お前の勇敢さを」

 

 

 

 

 

 

 

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「最初は、すごく、焦って、でも、本当に深かったので、考える時間はなんとかありました。その、途中に小さな木が生えていたので、柔らかい木に当たって速度を緩めようとしました。底に落ちてしまったら、死ぬと思ったので」
「そうか。お前は樹木の操作が得意だからな。よい判断だ。ウサギも焼けたぞ。食べなさい」
「…!ありがとうございます!
…あの、父上も、落ちた事が、ある、なら、父上はどうやって…?」
「私は底まで落ちたぞ」
「死ななかったんですか!?」
「お前は天才だと言ったがね。お前は特に思考せずとも肉体強化が働くだろう?若い頃の私は、強化は意図的に行うものだった。今でこそ慣れたが…まぁ、強化が馴染みのある魔法だった。木が生えている事は私も認識し、ある程度の水分量が地層にあると判断した。一か八か谷底に岩槍を落とし蛇を殺した。その血と元来の水分で出来る限り柔らかい土に作り変えた。それからはひたすらに魔力を練って自己強化をし続けて、そのまま落下を耐えた。ふふ、速度を緩めるより、耐える、という考え方をした」
「強化は大事なんですね…」
「大地の魔力は肉体強化に向いている。使わん手はない。さぁ続けなさい」
「もぐっ…ふぁい!」
「食べてからでいい」
「……ごくんっ!生やす場所の指定が難しかったですけど、なんとか、やわらかい木に当たりながら速度を落とし、壁の位置も認識できたので、少しずつ近寄って、それからは丈夫な木で壁を削りながら出来る限りゆっくり落ちました。受け身が取れそうな速度になった時、下に足場を作って着地しました。ほとんど、谷底でしたけど…」
「底まで落ちて一晩で上まで登れたのは非常に優秀だ。蛇には咬まれたか」
「一度…足場で息をしずめていたら、気づかないうちにそばにいて、指先を少し…すぐに振り払ったので大事には…」
「囲まれなかったか」
「僕が驚いて声をあげたら、蜘蛛が咄嗟に糸を吐いて、落下用に出した木まで引き上げてくれたのです…」
「…きちんと労ってあげなさい」
「はい、本当に…とにかく蛇から距離をとりたくて、それからは岩や樹木を頭上に出して、蜘蛛の力が持つ限りまで糸で引き上げさせました」
「成る程、通りで早かった訳か。眷属の心強さがわかったかね」
「すごくよくわかりました…」
「私に言えたことではないが、大事にしてやりなさい」
「はい、そうします。
それから蜘蛛の体力が尽きて…休ませてました。時々毒噴射で蛇を追い払ってくれてましたけど…」
「あの蛇達は早いだろう。すぐに群れが追いついてくる」
「はい。思ってたより量が多くて…登るための足場と手をかける場所を作るのと、蛇を追い払うのを一緒にやるのがすごく疲れました。先も見えなくて、魔力が持つかもわからなくて」
「お前はまだ無声詠唱ができないだろう。喉は途中から枯れたと思うが、どうだった」
「…枯れました。喉が渇いて仕方がなくて…それで、眷属の毒耐性はある、ときいていたので、」
「ああ。そういったな。限度はあるが」
「蛇を追い払うのをやめさせて、蜘蛛の噴射毒を飲みました」
「耐えれたか!」
「喉はすごくいがいがして痛くなりましたけど、渇きを潤す位はできました!出なくなっていた声が出るようにはなったので、なんとかまた詠唱できました!また喉は枯れましたけど…その時には蛇は撤退していました」
「ナイフは使わずに済んだか」
「いちおう…最初の方は、蛇を捉えて蜘蛛に食わせ、糸を出し続けていられるようにするのも考えました…でも登るのをやめた瞬間追いつかれる気がしたので…」
「もし大蛇と相対した時は捌くのに使うだろうな。大蛇を倒すとしばらく蛇達は追ってこん」
「口の端を切るためだと思ってましたけどそういう使いかたもあるんですね…」
「ああ。…なんにせよ、よくやった。暫し休め」
「えへへ、身体中が痛いです。腕とか、足とか」
「数日は痛むだろうな。近くに仮屋を作った。よく眠りなさい」
「はい!あうぅ、喉が…ゲホッ」
「…喋らせすぎたな。すまない。薬湯も作ろう」(抱き上げる
「ちちうえ、ぼく、父上のたんれん、きびしいけど、すきです」
「そうか。…いい子だ。お前は努力家で強さに貪欲だ。道を誤るんじゃないぞ。お前は後の指導者。お前は守る者だ。それを心得て、強くなりなさい。母よりも、父よりも…私よりもだ」
「…はい!いつか、かならずや、父上も越えてみせます」
「ああ、楽しみにしているぞ、ルノーテスラ」

 

 

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「それと筋肉痛が消え次第もう一度だ。対策を考えながら休み、覚えたい技能があり私に教えられる事ならば叩き込む。なんでも言いなさい」

「ひゃぇっ…!わかりました…!」

「登り切るだけなら眷属を増やせばいいだろうが、それでは意味がないぞ。己を鍛えろ」

「…微力な魔力操作と、無声詠唱の大事さを学びました…」

「ああ、だろうな」

「扱う木の種類を、硬度だけで選んでいたのも、変えようとおもいます」

「ああ、それならサラトナグかルテルミに聞くとしよう。課題は多いな。何、時間はある。一つずつこなしなさい」

「…はい!やってみせます!」

「よろしい」