ほうさんのお国柄

企画参加用創作ブログ。絵は描けない。文のみ。お腐れ。色々注意。

ごんちゃの休暇。休暇?休暇。

ごんちゃんとおじじとルノ様とサラさんの話。基本ごんちゃんとおじじ。ルノ様とゴンちゃんは初対面。全然出てこないからねごんちゃん。仕方ないね。
 

 

 
ほぼ初披露なのではというごんちゃんの簡単な説明
ルウリィド国の海底にある海底洞窟の探索を取り仕切っている、探索者管理局の長。長なんだけど事務仕事というよりは歴代担当している業務があって、洞窟内を徘徊しているゾンビ的なものを排除し続けるという仕事がある。洞窟内を地図にしたり崩壊してるところを直したりと、そのほとんどの時間を洞窟内で過ごしているので地上に出てくるのは稀。数年~数十年に一回程度。とても無口だけど、あまりにも他人と喋る機会がなさ過ぎて喉の筋肉が緩いというか、発声の仕方を忘れかけてるだけ。話し出して慣れればちゃんと話すし、喋るのは嫌いじゃない。いい子だ。
背が高い。おおきい。かわいい。つよい。以上だ。
 
 
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「…ると、さま…!」
「ん?ゴズウェルじゃないか。どうした。外に出てくるのは珍しいな」
 
泉のほとりで初夏の日差しを若葉越しに浴びながら昼食を摂っていると、茂みの中から現れた大柄な青年。それと二頭の狼。何かが近づいているのは感じられたが、何かとしか感じられないほどに気配を断つのが上手くなっていた弟子に自然と微笑ましさを覚えた。
 
「ちゃんと髪を切ったな。誰にやって貰った?」
「今回、は、マザーに…」
「通りでレインの時よりも些か乱れているな…来なさい。魚ならまだある」
「はあい…!」
 
私よりも大柄な精霊というのは、この国では非常に珍しい。ゴズウェルはその体躯の割には大人しく、穏やかだ。私の隣に座る時も一礼は欠かさず、食事は…少々下手だが、昔よりかは随分とマシになったものだ。
 
「ゴズ、今は幾つだ」
「…うん、と…えっと…」
「…数えてないならいい」
「多分、300、くらいです」
「そうか。もうそれだけ経ったか」
「はい」
 
私が何を言いたいのか尋ねるようにこちらを見てくるゴズウェルの頭を撫でてやると、嬉しそうに笑う。日光が眩しいらしく常に前髪を伸ばしてしまってはいるが、その中の表情がいつまで経ってもあどけないままなのはよく知っている。それだけではぐらかされる純朴さも変わらない。
 
…よっぽど息子の方が素直じゃない。
 
 
「…二ヶ月後、」
「うん?」
「大、規模な…洞窟の、整備工事を、行う、らしくて」
「随分と久々だな」
「それ…まで…待機するよう、言われ…まし、た」
「それで時間が出来たから会いに来たのかね。積もる話もあるだろう。ゆっくりしていきなさい」
「…♡」
 
甘え方に躊躇がなく、すぐに抱きついてくるのは幼い頃から変わらないので構わないのだが、既に私よりも力が強くなっている事は理解しているのだろうか。重くて痛い。そして大抵こうなると話を聞かない。ので、何を言っても無駄だ。背を撫でて好きにさせてやりながら、拾った当時に意識を投げる。
 
 
 
今から300年以上前、その頃は研究に没頭している時期だった。どうしても聖女マリーシャが死んでいるとは思えなかった私は、彼女と出会うための方法をひたすらに模索していた。指導者でありながら、明勲精霊でありながら、ろくに国の為の仕事をしていなかっ…していないのは今でも変わらないのだが、急を要する事態でもない限り私になんの案件も振ってこなかったのは今も昔もあの男だ。なんだかんだといって、特別待遇を受けていた事は理解していた。だからこそ、振られた案件はいくら憎い相手によるものだとしても、全て受けていた。その数少ない案件の一つが、この子の、保護だった。
 
 
リードロ島、沼地の側にある村が、突如として壊滅した。その原因を解明しろとの任務だった。通常ならばそういった捜査任務は一般の明勲が行うが、村に常駐していた精霊までも含めて死んでいた事から、只事ではないとの判断で私に回って来たようだった。
一刻さえも惜しく、当時の私は早急に向かった。任状を持ってきた者に馬を用意しろと言った時には既に用意されていて、今でなら感謝するがあの頃は無性に腹が立ち、乱暴に駆った。
 
 
数日程度の荒れではないと一見して分かるほどに、廃村は腐っていた。精霊が常駐していたということは、その者が報告も担っていた筈であり、その場所には常日頃気をつかう必要があるだけの危険があるという事に他ならない。正直、その頃も今も、首都のあるルーダ島は整備され治安も良いが、それ以外の場所の治安は保証されていない。危険などキリがない程にある。任状には既にある程度の見識が記載されており、それは村の状況から考えて、相違ない物だった。
 
火の類の使われていない荒れ具合。損傷の激しい死体。時の割には腐敗が激しく、刃傷は見当たらない。貴重品の類が漁られた痕跡もなく、そもそも助けも呼べない程に迅速に一つの村を制圧できる勢力。点々と散らばる獣の毛。それは、この沼地周辺を縄張りにしている、腐肉を喰らう狼達位しか、思い当たるものがなかった。
 
しかしながら彼等の主食は腐肉。生者を襲う事はまず無い。となると考えられるものは、誰かが彼等の大事なものを奪ったか、狼を使役できる者が村を襲わせたか、だ。
後者であると感じた。この村には2名夫婦の精霊がおり、死んだその二人以外精霊はいない筈だ。しかし、沼地の森から、精霊の気配がした。明らかに私よりも格下である事はわかった。しかし眷属の扱いは己の能力とは別だ。私は警戒しながらその森を進んだが、そこにいたのは、
 
狼の子に混じり乳を飲む、精霊の赤子だった。
 
 
 
 
私が産まれた時、私の眷属は私の外敵を排除したらしい。私の意思とは関係なく。それよりも過度の、眷属達の愛情表現。いや、独占欲。きっとこの赤子が産まれた瞬間、狼達はこの子を欲しがった。元より狼達の子であると言うかのように、奪われたとさえ思ったように。そして村を群れで訪れた。鼻のそう効く狼達では無い。一軒一軒回ったのだろう。奪われた怒りをぶつけた。人間は成すすべなく、産後直後の母親は虚しく、父も数に押されたか。そうして狼達はこの赤子を連れ帰った。群れの長に治めるべく。…そんな所だろう。
 
 
狼達は、赤子に触れようとしない限り襲う様子がない。狼の母乳を、赤子は問題なく飲んでいる。さて。どうしたものか。
 
 
私に課せられた任務は、原因の究明と再発の防止だ。原因はわかった。再発はしないだろう。というよりかは防ぎようのない自然の摂理であった、とするべきだ。発端がこの狼と赤子なのは疑いようのない事実だが、果たしてこの者達を、私は処罰、するべきなのだろうか?
 
迷うまでもない。選民思想?実に結構。強きものが正しく、正しき者が生きる。それが今も昔も変わらないこの国のあり方だ。今更人間が何人死のうが、死ぬような精霊が死のうが、どうにでもなる。なんの支障もない。それよりも、毒の沼地を赤子ながらに耐え、成熟した精霊と間違える程の魔力を持った精霊の赤子一人の方が、重要だ。それを間違えるような者はこの国にはいない。それこそ、必要がない。
 
つまり私はその赤子を保護することを選んだのだが、問題があった。どこにも連れていけないのだ。触れようとすれば狼たちに威嚇され、退けることはもちろんできるが、狼の事を親だと認識している赤子の前でそのような事をしては恐らく良い方向には転がらない。なにより、私は子育てができない。この狼達よりよっぽどできない。保護すると言ってもアテはない。そもそも他者と顔を合わせたくなかった。何をどれだけ拗らせたのだという話だが、結局私の選んだ行動は、仕事だからと割り切って、狼の群れと数年共に過ごすという物だった。主のいなくなった廃村を容赦なく使用していた私は、一体何が指導者だと言えるほどの荒くれ様だったと思うが。仲介の部下である精霊の男も何も言わなかったので良しとした。…当時の私に何か口を出せる者がいたとは思えないが。
 
 
 
「…ると、さま?考え…ごと、ですか…」
「ん、ああ。お前に会った頃の事をな」
「…おせわに…なり…ました」
「どちらかというと私よりサラトナグだと思うがね」
「…まぁ。そうかも、です、けど」
 
特に問題はなかった。魔導構成式の形成だのなんだの、紙と筆さえあれば出来る事を進めていればよかった。修練の時間はどれだけあっても損ではない。そうして数年過ごしたのだ。狼は私をある程度受け入れ、赤子、家だったと思わしき場所から見つかったゴズウェル、という名前を与えた赤子も、随分と私によくなつき、仲間として受け入れられていた。何の問題も無いように思えていたのだが、根本的なものを私が忘れていた。本当に私には父親の才能というものがなかったのだろう。
…言葉を、教え忘れていたのだ。
 
当然だ。子は親の言葉を聞いて覚える。ゴズウェルは狼の言葉は理解できていたが、私はほぼほぼ一人で過ごしていたし、そう言葉数の多い奴じゃない。野性的な肉体言語で思考を伝えてくる事に対して違和感を覚えず、むしろ静かでいい位に思っていた私は、殆ど話しかけることはなかった。言葉を理解するわけがない。名前くらいは憶えていたようで、呼べば来る。だが、その程度。魔法を教えるにしても仕事を与えるにしても何にしても言葉は必修科目だった。欲を言うなら精霊語と共通語両方覚えさせたかった。ただし習性としての記憶は正直もう望めない。教育しなければならない。一対一で、付きっ切りで。…今なら。今なら多少は…そういう気もあるのだが。自分の事に手いっぱいだった当時の私がそのような面倒事、に手を出すわけがなく。私は狼達を連れた子供のゴズウェルを連れて、私とサラトナグの仲介をしていた部下を締めてアイツの家まで案内させたのだった。暴君が過ぎたと思う。
 
扉を開けさせた時その仲介役は申し訳ございませんと泣き呻いていたし、扉から顔を出したサラトナグは死ねクソ野郎と言わんばかりに私を睨んでいたし、言うならゴズウェルは私にしがみ付きすぎて髪を引かれて痛かったし、家の奥からまた見かけたことのない随分な美少年が囲われていたのでまたこの色狂いは見境がないなと舌を打った。そんな険悪な中私は仲介役毎扉を蹴っ飛ばし、言葉を覚えたころに迎えに来るから済ませておけ、とだけ言ってゴズウェルを無理矢理サラトナグに押し付けて去ったのだ。いや、凄まじく無礼な真似をしたという自覚はある。今はある。勿論。事情もよくわからず数年前の任務の報告を自分でせずに勝手に判断した男にいきなり言葉の通じない得体の知れない子供と数十頭の狼の群れの世話を押し付けられたアレの怒りと困惑混りの声は…いや、特に何も思わなかったな。後ろ髪を引かれる想い所かもう髪を引っ張られて叱る必要がないのだと満足していた。
 
「きちんと言葉を話せるようになったのは、喜ばしい事だったぞ。賢い子だ」
「…」
「どうした」
「あの下衆に…虐められたから…がんばりました…」
「…あぁ、アダネアか…」
 
 
家の奥に見えたもう一人の子供はそう大層年が離れているようには見えなかったので、一人も二人も同じだろうと思ったものだ。ゴズウェルも可愛らしい顔をしていたし、なんだかんだで世話をされるだろうから問題はないと安心していた。実際にアレはゴズウェルにも優しく言葉やらマナーやらをしっかりと教え、世話もした。問題は、友人関係になるのではないかと思った少年、アダネアの方だった。小間使いとして家に置いているのだろうと思ったのだが、そんなものではなかったらしく。当時からひねくれにひねくれこの私にも毒を吐く豪胆な小童であり、よそ者に一切の歓迎の意を抱かなかったようだ。一体具体的にどのような事をされたのかをゴズウェルに聞いてもされたことが多すぎるのか負の意識が強すぎるのか殺気だけを滲ませ、気になったのでサラトナグにも聞いたが、僕の見ていないところで器用に虐めてたらしい、と疲労の篭ったため息を零したので詳細はわからない。アダネア当人に聞くと疎ましそうに、無駄に頑丈だったから仕留め損ねたんですよね、とだけ返ってきた。どことなく詳細を聞くのは憚られたが、引き取りに行った時の罵り合いと、アイツを殺してやりたい、という動機での異常に身の入った修練に勤しむ様子は、なんとも言えない親心を持たせた。少し申し訳ないと思いつつ、おかげでこの子は強くなるだろうと感じた感謝もある。実際にゴズウェルは若くしてこの国でも屈指の実力者になった。ライバルや復讐の怨敵というのは、その気持ちに心が呑まれさえしなければ、何よりも固く高い礎になるのだと。私は、それを知っている。
 
「結局、どうなんだ。修練を重ねて…勝てたかね、兄弟子に」
「…勝ってたら、アイツ、死んでます」
「はっはっは。それもそうか」
「…逃げ、きられた。です。もう…殺したらいけない、場所に…逃げられた」
「…その感情を制御できているのだから、お前は優秀だぞ、ゴズ。利口でよろしい」
「…はい」
「…すまなかったな。もう少し私がお前の世話をしていれば、そういった恨みは持たずに済んだかもしれない」
「…無理だと…アイツ…どうせ嫌いだし…」
「…それはそうだな…」
「でも、おれ、ると様もサラ様も、好きです。だから、大丈夫。今、おふたりの、役に立てて…嬉しいです、おれ」
「…そうか。…そうだ、ゴズ。暇なら私と、アレに会いに行くかね。今、私の息子もあそこにいるんだ。話した事はないだろう。是非私から紹介しておきたい」
「…ルノーテスラ、様、ですか」
「ああ」
「…ぜひ。おれが、お力になれるなら」
「信頼、している」
「…!っは、い!へへっ、へへへへへ、」
 
 
立ち上がり草屑を払う。休憩の跡を処理して行くかと声をかけると、ひょいっと私から大杖を奪って背負う弟子。随分と…信頼という言葉に機嫌をよくしてしまったらしい。素直なのは実によい事なのだが、私の役に立とうとしてくれているのも結構な事なのだが。心情の表現が少々大味なのは、一体何が原因なのか。拒むと泣いてしまい更に面倒になることはわかっているので、ため息をつきながらも、私は軽々と抱き上げられるままに抱えられた。いい歳なんだが…恥ずかしいというよりかは呆れるというか…素直に慕ってくる者の涙に私が弱すぎるというか…実際、この子の足でなら数時間で到着する場所だ。私は悠長に歩くし何故かよく道を外れるので数日かかるのだから、任せた方が、よいのだが。
 
「…ゴズ、」
「おれが、もってったほうが、はやい、です!」
「…なるべく、揺れないように頼もう」
「!!!! はぁい♡おまかせ…ください…!」
「はぁ…お前がそれでいいならもう構わんさ…」
 
 
 
 
その後私が随分とあっさり横抱きにされるがままになっている光景をみたルノーテスラが困惑するのも、それに動揺してゴズウェルに不敬だのなんだのいうのも目に見えていたが。
 
 
るの「なっ、なんだ貴様!!父上に何たる無礼な!!父上!!父上ッ!!」
ごず「…え、と、えっと、」(おずおず
るの「父上は指導者たるお方だぞ!!そのお方を腕に不用意に抱くなんて!!その杖も大切な物なんだっ!!かーえーせー!!!」
ごず「るとさま…?」
おじ「まぁ、まだ相手の力量を測れん愚か者だ。のしてやりなさい。お前の二人目の弟弟子だ」
ごず「でも、ご子息…」(おどおど
るの「なんだ!?父上と仲良さそうにするんじゃない!!なんなんだ!はなれろ!手荒にするぞ!!」
おじ「構わん、やれ。仮にも我が息子、武人の一人だ。手合わせ以上の会話もあるまい」
ごず「…はい…!」(うきうき
 
 
身体を動かすことが好きなゴズウェルが手合せを受けない訳がないと思っていたし、血の気の多い息子が喧嘩を売るのも目に見えていたが。
 
さら「…ねぇ、簡単に言ってるけどここは僕の家の庭なんだけど」
おじ「片付けはルノーにさせろ。良い訓練だ」
さら「…容赦ないねぇ」
おじ「父以外にも自分が勝てない者がいると、ああいう子には幼いうちに教えた方がいい」
さら「そういう教育ならまぁ、口出さないけどさ。あーあー、死なない?大丈夫?」
 
穏やかな語りからは想像もつかないほどに血気に燃えた目で、手足に鉱物を纏い異形化させていくゴズウェルと、僅かに怯えをみせた我が息子。自尊心の強いルノーテスラがここで引けるわけがない。すぐにわかるだろう。私がおとなしく横抱きにされていたのが、仕方の無い事だったと。
ルノーテスラの周りには、レイゲンドールの様にうまく手加減をして負けてくれる相手、サラトナグの様に強大ではあるが魔力の供給源として動く者、地位はあるが力はなく我儘を言い放題なアダネアの様な者、力はあっても指導者の息子という立ち位置に跪いてくれるラフラトやその他明勲の様な者ばかりだ。恐らく、ルノーは敗北を知らない。私以外に負けたことがない。そしてその私もまた、父であるがゆえに。自分はまだまだ勝てなくて当然だ、と思わせてしまう存在でもある。
 
その点、ゴズウェルは理想的だ。ルノーが負けを正当化させられる理由が一つもない。負けてやれるほど空気を察せない。完全に肉体の技量でのみ戦う生粋の戦士。戦い始めると言葉が通じない。何のためらいもなく、圧倒的な実力差で我が息子を蹂躙してくれることだろう。恥ずかしいとも思えないような圧倒的な暴力。そしてそれを決して驕らない。高慢と傲慢が際立ってきたルノーには、いい薬だ。
 
おじ「ゴズは穏健で、ルノーとは対照的のような子だ。死にかけたとしてもきっと、いい訓練になる」
さら「黙認かい…厳しいお父様だこと」
おじ「ルノー、ゴズウェルは私より強いぞ。上手く捌きなさい」
るの「!? なっ、おま、お前がか!?」
ごず「…はじめまして、ご子息様。…探索者管理局が長…ゴズウェル、です…。おてあわせ、よろしく…おねがい、します…!」
 
今となっては私も、あの子に勝つのは難しい。私が衰えたというよりか、あの子が未だに強くなっている。間違いなくこの国一番の勇士であるゴズウェルと、まだまだ未熟者なルノーテスラがどのように向き合うのか。それを楽しく思ってしまうのは、私の性格が悪いのか一種の親心なのか。
 
さら「…ゴンちゃんは一回遊びだすと一時間は止まらないはずだけど、それまでルノーが持たなかったらちゃんと君が治めてくれるんだよね?」
おじ「…」
さら「…流石にそこまで僕に振るなんて無責任な真似、息子の前でしないでよ?」
おじ「…わかった。ではその代わりあの子が地上にいる間ここに居座るぞ」
さら「何の代わりだよ!!代わりの代わりを要求しないでよ!?」
おじ「二カ月みっちり手合せし続けさせる。認めろ」
さら「無理だよ…アレスとごんちゃんは割と仲がいいけど、二カ月もあったら絶対にアダネア君が一回は来ちゃう…」
おじ「まぁそう言わず何とかしてくれ」
さら「君ってやつは…あっ」
おじ「おお」
 
ルノーテスラが吹っ飛んだ。すかさずそれを追ってゴズウェルも森に消えていく。もうこれは手合せではないな。一方的な狼の狩りだ。
 
さら「心に傷を残しそうだ…」
おじ「ふむ、追いかけさせ合う方がいい修行になりそうだな」
さら「鬼畜…」
おじ「ルノーは強いぞ。幼い割には強すぎるほどだ。だから、丁度いい」
さら「…お茶でも淹れて、ご飯も用意して待ってようか」
おじ「ああ、そうしよう。肉を用意してやってくれ」
 
 
結局、二時間ほど経ってから、ルノーテスラはゴズウェルに横抱きにされながら帰ってきた。力の差を散々見せつけられたのか一切の抵抗はなく、父上が何もしなかったのがわかりましたと細々と答えた。懐かれたようでゴズウェルは機嫌がよさそうだった。
 
おじ「ゴズ」
ごず「…?」
おじ「明日からもしばらく、ルノーと遊んでやってくれ」
るの「ひゃぇっ」
ごず「…は、い!よろこんで…!」
 
 
情けない声とスプーンを取り落とした音は、聞こえない振りをした。