ほうさんのお国柄

企画参加用創作ブログ。絵は描けない。文のみ。お腐れ。色々注意。

【蜂蜜の日】蜂蜜だいすきおじさんがすごくバカっぽい

すごくバカっぽい蜂蜜大好きおじさん(ルートグラン様)が蜂蜜の為にならなんでもする(なんでもするとはいってない)話。蜂蜜紹介がしたかっただけなのでは疑惑。(疑惑じゃない)

 

多い。あとばか。ゆるゆる。蜂蜜の説明のところにだけ見出しつけるよ。需要?しらない。
 
無駄に多いから…後先に言っておくけどオチはないので蜂蜜がすきなんだなぁこのおじさんはなぁ~とだけ思っていただけたらとおもいます。後はちみつ関連イベントはこのおじさんが喜ぶよっていうそれだけ。来年とか素知らぬ顔でイベント在ると思うしこれがいつの年の話とか明言してないからもしかしたらもう蜂蜜イベントあるのかもしれない(適当)。 このおじさんの口の中に蜂蜜を放り込んであげてください。
 
尚ルートグラン様は蜂たべたり蜂蜜を食べたりすることで命を長らえる方です。彼が蜂蜜ジャンキーなのは確かですが、本能レベルで欲しないと本当に死ぬので仕方がないとも言えます。蜂蜜、よりよい蜂蜜の為戦友を苦しめたり外道になったりなんやかんやあっても仕方ない事なのです。度を越してるとかちょっとそれは…えっと…過激派だし仕方ないかなって!!だってどうせ相手サラさんだし!!死なないし!ねっ!!蜂蜜塗れのルトサラがみたかったなぁ~!!!(ただの願望)
 
 
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「共通歴8/3を蜂蜜の日に制定しよう」
「…暑さで頭がおかしくなったのかい?冷水を持ってきてあげるからその暑苦しい服を少し脱ぐ事を勧めるよ下心は無くね」
「真剣だ」
「えぇ…あ、ハーブソース取って」
「うむ」
 
8月・陰日向の月を二週間後に迎える、暑さが増してきたルウリィド国のとある森の中の一軒家。整然と管理された畑。巨大な蔦の茂る花々。柵の中でこけこけと鳴く数羽の鶏。それらを望むテラスで、サラトナグとルートグランがテーブルに着き向かい合い、バゲットに卵のペーストを乗せながら昼食を摂っていた。
 
「とりあえず蜂蜜が食べたいんだなって事はよくわかったよ」
「それは常に思っている」
「ぶれないなぁ…とりあえずご飯が済んでからにしよう?ほらこれ玉ねぎの微塵切り入れると美味しいんだよ」
「成る程、戴こう」
「粗刻みのソースも美味しいね。肉食的にはどうだい」
「むしろこのソースを肉に合わせるのはどうなんだ?」
「こってりしすぎないかなぁ?」
「もう少し香草を効かせればいいと思うがね」
「そっか。やってみよう」
「私は辛子と蜂蜜を混ぜた物が好みだが」
「だからそれは蜂蜜が食べたいだけだろ」
 
 
ただの昼食、にしては食材に対する会話の多い食事。酸味がどうだ、保存がどうだ、食べ合わせがどうだ、コストがどうだ、と。一口一口を味わい吟味するように嚥下していた。
 
そしてテーブルの上からソースもペーストもバゲットも全てが無くなると。
 
「じゃあ採点をしよう。まず大前提、味」
「3点」
「厳しいね…」
「そこまで舌に新しいとも感じない物だったな。改良の余地あれど、と言ったところか」
「悪くはないけど推すほどじゃないって事ね…次、保存」
「7点、輸出目的なら5点だ。大人しく卵のままにしておけ」
「だよね…そこは僕も同じだな。火を通してるし悪くはない…卵自体も常温でそれなりに保つから…でも長期はねぇ。国外に出せる程向いてないからなぁ。次、食べ合わせの可能性」
「4点だ。もう少し…単体で食すには旨味が足りない…オリーブの油が合わないな…卵の濃厚さに頼り過ぎだと感じる」
「へー。やっぱり動物性の味の強い材料と混ぜた方がいいのかな…でも売りは卵だし…うーーーん…」
「コストに関しては?」
「悪くないんだよね。今はちょっと余り気味っていうか。便利だから多めに生産してるけど少し余る。だから輸出できるようにできればうれしいんだけど、元の卵のままだと破損の損失が多くてさぁ。加工して売れれば、コストはいい。」
「成る程。大人しく生産量を減らせ。その分蜂の巣箱を増やし花畑を作るといい。それがいい」
「至極真っ当だけど私情を挟み過ぎだよ」
「いやなに、真剣だ」
「…」
「私は蜂蜜に関しては嘘はつかない」
「蜂蜜のためになら嘘でもなんでもつく君だから不安なんだよ…紅茶飲む?」
「戴こう」
 
サラトナグはテーブルの上の食器をかちゃかちゃと片付け、ルートグランは指を組ませ静かに夏の声を聴いている。その姿を見てサラトナグは、あー…と、一体何の思いが溢れたのやら声を漏らした。
 
「どうした」
「君は黙っていれば本当に顔がいいなぁ」
「その言葉はそっくりそのままお前に返そう」
「褒めてる?貶してる?」
「お前はどちらのつもりで言った?」
「褒めて残念に思った」
「そうか。ではそのまま返そう」
「うわっ失礼だな」
「どちらがだ阿呆め」
「折角呼んだ礼に蜂蜜あげようと思ってたのに」
「お前は喋っても愛らしいままだな」(キリッ
「ほら簡単に嘘つく…」
 
 
きりりと緑の瞳がキャラ崩壊を起こす。それについて慣れたように受け流し席を離れた。受け流されるのもまた慣れているのか大した反応を返さず、また夏の声を静かに聴いていたルートグランだが、暫くすると鼻をすんと利かせて席を立つ。つかつかと玄関に歩みより扉を開くと、そこには両手で盆を持って扉を開くのに苦戦をしていただろうサラトナグの姿。紅茶に、きらきらと輝く蜂蜜の瓶。突然開いた扉にア然として、盆を奪われた。
 
「えっあっ」
「持とう」
「いつもそれくらい気を利かせてくれない…?」
「美味そうだ早く席につけ色が薄いな紅茶用の物を用意したのか相変わらず几帳面だな私は何を入れても美味いと感じるが」
「コイツ蜂蜜しか見えてないのか…」
 
 
席に着くや否や性急にガラス瓶を開けてクンクンと香りを恍惚と嗅ぐ。その表情の幸せそうたるや。紅茶に使うだけにしては大きな瓶だが、その中にこれまた通常よりも大きいと思わせるディッパーを突っ込み、ぐるぐるとかき回す。
 
「君は蜂蜜瓶を抱えてる時が一番幸せそうな顔をしてるよね…」
「現にこれ以上の多幸感もない…美しい薄黄色だな…まさに恵…これ無くして生きる楽しみが残るとも思えん…ふふ…」
「麻薬みたいな事言ってるよ…ちょ、入れす、入れ過ぎだよ!僕でもそんなに入れな、止めろ!!」
「なんだ、お前の分は(仕方ないから)残すぞ?」
「(なんか聞こえた…)問題はそこじゃないよもうそれは紅茶じゃなくて蜂蜜紅茶風味だ」
「流石に溢れるからこれ以上は入れない」
「そうそれなら良か…いや飲んでからまた入れるの!?それは最終的にただの蜂蜜になるだろ!?」
「甘く見るなよ。こうして継ぎ足すほど旨くなる」
「そりゃ蜂蜜になっていくからねぇ!?マナーは守って!!」(奪う
「チッ…」
「ちゃんと話は聞くからさ…何?蜂蜜の日?」
 
黒々と色の変わったどろりとした紅茶とは名状しがたい物、をゴクゴクと飲んでいく(?)ルートグランに対し、やれやれと息を吐きふぅふぅと湯気を揺らしながら問いかけた。
 
「私を呼んだ理由を聞いた時から思っていた。真面目にだぞ。こういったことはお前や商人連中の方が詳しいだろうから素人考えですまないが」
「いやいや、君が本当に真面目に考えてくれたっていうならそれは凄くありがたい話だよ。本当ならね」
 
事の発端は数日前に遡る。数年毎に行われる、生産管理の大見直し。収支や売上、経費、余剰、国管轄での生産品目を全て計上しより無駄のない生産計画を立てる事が目的である。その際、より外貨を得ようという事で、新たな売りになるもの、を作れないだろうかという話が出たのだ。
グレーゾーンの取引では大抵外貨を使うこの国では、外貨の収益というのは極めて重要だ。余剰素材やこの国独自の物の中で、他国や観光客向けに値するもの、或いは新たな製品を開発する事。それは国力に直結する…という事で暇そうな奴(めーくんせーれー)にアイデアを出させてそれを評価する、というお仕事が舞い込んで来たのがサラトナグ。食べ物の発案が数多い中、コストには詳しいお子ちゃま舌のサラトナグは、舌の肥えた(とは思えない食生活を送っている)指導者様を家に招き、両人で、街から送られてきた試作品に舌鼓を打っていたのだった。
 
「私は給金のおよそ9割を蜂蜜に使うが…」
「えっそんなに使っておいてまだ僕に集ってるの???」
「言わせてもらおう、蜂蜜さえ食べていればどうにでもなる」
「えぇ…」
「だがしかし私は感じたのだ」
「君蜂蜜の事になると演技臭くなるのなんなんだろうね…」
「普通の蜂蜜とはなんだろうか、と」
「ちょっと考えが追いつかないから勝手に喋ってて貰えるかな…?」
「わかった」
「(素直だ…)」
「これからの事を話すに辺り、お前には我が国の蜂蜜についてのある程度の種類を知ってもらう必要がある。先ずはそこから説明しよう」
「(本格的だ…)」
 
 
 
・都蜂蜜(ミヤコハチミツ)
「先ず最も街の民に馴染み深い蜂蜜と言える都蜂蜜だ。巣箱は王城の中庭。街一帯の照明植物の花粉と蜜を年中集める。特定の花を集める訳ではないので味や色の特徴は一様には言えないが季節ごとにある程度の変化が見られる。私は小雨花の蜜を食べると夏が来るなとしみじみと思うな。
都蜂蜜の最大の特徴はその輝きだ。光量を保つ為、蜂達が迷わず蜜を集められる様に非常に多量の魔力を常に供給されている街の照明植物の保有する魔力は並大抵の植物では敵わない。光源としての改良がされた事もありその蜂蜜の輝度は感嘆の一言に尽きる」
「(こいつ改良について手を出してないのにそんなに詳しいのはなんなんだ…)」
「どちらかといえば、そのふわふわころころとした姿から観光客に喜ばれる街の蜜蜂が集めた光る蜜、として、土産物としての売られ方が主流だ。品質としても全く悪くない物だからこそただの土産物として扱われるのは悲しい。そしてなにより、これだけが我が国の蜂蜜である、と思われるのもまた、納得いかん話でもある」
「まぁいろいろあるからねぇ」
「8種の内で言うならば、推薦の順位としては7位だ」
「8個も言うの」
 
 
・煌蘭蜜(コウランミツ)
「蜜の生成量が多く魔力を吸い上げる力の強い煌蘭の蜂蜜もまた…高級品として精霊に愛されているな…花の砂糖漬けとしての使用の方が多いがそれは、蜂の分泌する成分と反応して蜜に苦味が多く出てしまうからだ。しかし精霊とその他種族の味覚が違うのか私は苦いとは思わんな。質が良い程粘りの強く透明感のある、ほんのりと光る赤褐色の硬い蜂蜜…その粘度の高さから採集も一苦労という一品だが、味の濃厚さは高級感のあるコクを持ち、風味の変化にも強く、栄養価も高い。そのまま固めて飴として舐めるのがやはり最も性質にあっているといえよう。硬化の条件が満たしやすく、食べられる工芸品としてもよく売られているのを見かける。高価で食べ難いので買わんがね」
「(そういうの買ってないくせに9割使うのか…)」
「香ばしさが特徴的な蜂蜜だ。元の煌蘭に近い香りがする。もしかしたら我が国以外でも種族毎に味に違う感覚を覚えるかもしれないな。だからこそ推薦したい。ハマればハマると間違いなく言える蜂蜜だ。特に精霊。手放せなくなるぞ」
「実際精霊にだけ効く成分が入ってるよね煌蘭自体に…興奮とか多幸感とか…少ないはずだけど、もしかしたら蜂蜜として熟成されてる間に増してるのかな…」
「順位は4だな。精霊相手なら3だ」
 
 
 
 
・林檎蜜(りんごみつ)
「一体この爽やかで果実感のある蜂蜜を嫌うものがいるだろうか?一人でも?もしいるのならそれは一生私とは語り合えない存在なのだろうな…コク、甘み…今すぐ食卓にプレーンのパンとヨーグルト、そして紅茶を用意するといい。結晶が緩やかに華麗に紅い茶の中で融ける様子を目と鼻で楽しむべきだ。そのひと匙で味気ない霜の降りる朝は貴族の朝食にn「ごめん流石の僕も突っ込むよ。どうしたの???」すまない盛り上がってしまった…」
「好きなんだね、林檎」
「私は薫り高い物を好む傾向がある。喉の渇きがちな蜂蜜で、この林檎蜜は瑞々しい果実を連想させ喉が逆に潤う気さえする。するだけだが」
「うん…」
「完全に林檎の樹木だけが残っている農園に巣箱を置く為に雑花の蜜が殆ど入らないという点も評価ができる。爽やかさから他の蜂蜜との合間合間に食べると舌が切り替えられるな。その為に食する機会は多い」
「そのヘビーローテーションは君だけだ」
「さらりとした口ごたえ、上品な味わい、澄んだ黄金色。クセがないのに蜂蜜らしさをきちんと兼ね揃えた優等生と言える」
「一体何目線でのコメントなんだろうね…」
「クセがあってこそ、蜂蜜らしくあってこそ、蜂蜜である。そういう思想がやはり私にも少なからずある。しかしこの蜂蜜だけは、クセがなくとも、【食べやすい蜂蜜】としての推薦をしてもよいと胸を張って言える、いや、送り出せる傑作だ。私の好みもあれど推薦順位は3。対象が精霊であれば煌蘭蜜と前後するが、それでも上位であることに変わりはない」
 
 
 
・柑露蜜(カンロミツ)
「林檎蜜と同じく果樹由来の蜂蜜だな。柑橘系の果樹を使う。やはりその果実の香りや味を味わうためにプレーンな食材と合わせられる事が多い。
余り柑橘類の生産が多くない故製造も少なく、特定の果樹による単一蜜ではないが、毎年同じ味の仕上がりにはなる。爽やかではあるがあくまで柑橘系特有の爽やかさというだけで、味わいはまろやか、が近いな。皮の苦味に近い苦味を感じる。甘いというよりもまろやかな印象が強い。クセは意外と少ないので、甘い物は苦手だが蜂蜜は食べたいという同志達に是非勧めよう。イチゴジャムは苦手だがマーマーレードはイケるという我儘な者とかな。独自性としては、昼の太陽光程輝く。海の見える丘で存分に浴びたに違いない。生産の立地条件から鬼達がよく製造に携わる。その事から鬼蜜とも呼ばれ、彼らの集落で出される一般的な甘味料だ」
「君も確かに甘味にはわがままだからなぁ…」
「見かける頻度は少ないが、チョコレート、に最も合う蜂蜜ではないかな。有名な甘味なのだろう?ここでは少ないがね。それでも数回は口にした。美味だったぞ。推薦順位は6だ」
「チョコがもっといっぱい在る国でぜひ使ってほしいよねぇ」
 
 
 
・仙花蜜(センカミツ)
「この国で最も生産量が多く安価で売られよく使われる蜜だ。蜂蜜、と言われて思い描かれる基準の味はこの仙花蜜だと言っても過言ではない」
「君は何を知って国民の総意を代弁しているんだ…?」
「しかしながら、当然でありすぎてその普段使っている蜜が仙峯樹という樹木の花の蜜であり、その仙峯樹がどういったものであるのかまで知ろうとする者は少ないだろう」
「僕は知ってるけど、この勢いで君は樹木の解説までするんだろうね。いいよもう。よろしくお願いしますルートグラン先生」
「うむ。理解がいい。
仙峯樹は一幹の樹木から大量の白い花を咲かせ、大量の蜜を生成し蜜蜂を誘う。養蜂者達でさえその期間は木に近づく事を躊躇うほどの蜂が群がるぞ。その結果種子も大量に実らせた仙花は一斉に周囲にその実を降らし、その一帯を完全に仙峯樹の領域にする。余りにも繁殖力が強い為一山を隔離するように仙峯樹の為の物とした程だ。真白に染まる山は名に違わずまるで白霧に覆われた異峯の空間のようだな」
「実が美味しいお豆なんだよねぇ。ほんと、繁殖力が強すぎるのだけが難点。管理が必須。木材の質もいいし万能なんだけど」
「かつての戦争で失われた樹木だとも言われていたな。復興の象徴でもある樹木だ」
「お世話になったねぇ…(しみじみ」
「蜜の味は実に上品でクセがない。特徴としては林檎蜜と似ているが、果実感のある味ではないな。香りも。輝きもそう強くない。蜂蜜としての味わいを楽しむ事に主軸を置かれた蜂蜜は当然濃い味の料理などに使われないが、この仙花蜜はむしろ、料理のコクを出す、菓子にまろやかさを加えるなど、そのクセの無さからその他のものを引き立たせるという役割を多く担う。私としてはそういった愛され方をしているのもまた素晴らしいと思うが、やはりこの色味の淡い儚げな蜜自体を味わって欲しいと思う。結晶化しにくくいつでもさらりとした液体状で嗜む事が出来るのは、家庭に根付く蜂蜜としての一級品の特性だな。推薦順位は8だが。らしさ、は確かにないからな。それは仕方がない」
「基本的に贔屓なく好んでるんだねぇ」
「そうだな。蜂蜜であれば全て好んでいる。しかしながら、まだ紹介していない三種は桁が違うぞ」
「…ちょっと聞くのが楽しくなってきた頃合いだったけど長いなぁ…そろそろ家に入ろうよ。コーヒー淹れるよ」
「珈琲蜜もあるな」
「殆ど見かけないレア物じゃないか…」
「そういった余りにも少なく銘柄としての確立が朧げなものは今回は省く」
「次回があるのか…」
 
 
 
 
「ここまでの蜂蜜をまとめよう。これらは毎年必ず街で手にいれることのできる、蜂蜜らしい蜂蜜だ。煌蘭蜜はクセが強いが、しかしそれでも蜂蜜ではあると言える程度。澄んだ透明の形態であるのも共通だ」
「確かにそうだね。美味しい、と言えるものばかりだったよ」
「さてサラトナグ。先程お前の出した蜂蜜…あれは仙花蜜だが、」
「当然のように当てるよねぇ」
「僅かに濁りがあった。結晶化しにくいという特性を持つ仙花蜜でありながらだ。それは一体何故か?答えは明白、混ぜ物、だ」
「はい」
「しかしながら不純物を嫌う我々…おかしなものが入っていればすぐにわかる。そうだろう。つまりその混ぜ物はおかしなもの、ではない。また別の種類の蜂蜜だ。
 
そしてお前は知らんのだろうが…その蜂蜜には名前が付いているのだよ…」
「えぇ…?」
 
 
 
 
・魔華蜜(マカミツ)
「百花蜜と呼ばれる、複数種の花蜜で作られた蜂蜜がある。都蜂蜜も百花蜜の一種であるし、特に花の種類が明記されていなければ全て百花蜜として扱う。その地域一帯の花全てから蜜を集める為に、その場所でしか採れない味わい、になる。ただの野山に季節ごとに巣箱を置いて春の蜜、夏の蜜、と売られる事もあり、私は季節を感じる趣のある蜜であると思う。
この魔華蜜はまさしく、その百花蜜の頂点であると言えよう。味による優劣をつける事はしない私であるが、何故断言までするのか。それは、その圧倒的な魔力保有量、その一つに尽きる」
「(長くなりそうだなぁ)」
「先程の都蜂蜜だが…その特徴は光度であると言ったな。魔力を多く含む植物の多くが発光する性質を持つが、都蜂蜜はより強く輝く品種の花々の蜜だ。蜜と花粉を身体につけた空を飛ぶ蜜蜂達の姿を光り輝せる程に強い。しかし、その輝きが最も強いのは採れた瞬間であり、瓶の中にある間だ。あくまでも魔力由来の光。魔力は生命体により強く引かれる。瓶を開ける度に外に連れ去られてしまうのは仕方のない事だな。輝かしい煌めきも次第に弱まる。では一体、輝きを保つにはどのような方法があるのか。一つしかあるまい。魔力の含有量を増やす。それに尽きる。
 
都蜂蜜の魔力量を10とするなら、煌蘭蜜は8程度だ。林檎、柑露は共に5程度、仙花は3。では魔華蜜は?というと100は固い。驚異的な量だな。その魔力量により、最大光量は都蜂蜜に劣るものの非常に長い期間輝きを保ち続ける蜂蜜だ。生物の持つ共通の生命力、と言い換えても遜色ない魔力をそれだけ多く含むこの魔華蜜は、肉体的な傷の治癒、明勲達の魔力補給にも使われる。味は濃く色は結晶のしやすさから少し濁って見える事も多いが基本は黄金色だ。しかし、用途的に味や風味が重要視されることが少ない。実に、勿体ない」
「…ねぇ、魔華蜜は僕も聞いたことがあるけど、あのさ。確かに僕、その蜂蜜よく知らないや。えっと、それで、思ったんだけどもしかしてそれって…」
「言わんとしている事はわかるぞサラトナグ。この蜂蜜は季節問わず、いつ市場に流れるのかわからない。しかもその量は少ない。少ないがその有効性と特異性ゆえに早々に【名前】がついたものだが…」
「…あれかー」
「私はこの蜂蜜の事を【お前の家で出される蜂蜜】と呼んでいる」
「…おいしいんだ」
「そうでないと私はここまで来ないぞ」
「うわぁなんかいやだなぁそれ」
「お前がもう少し流通量を増やせばいいだけの話だ。まぁ、高価なので来る頻度は変わらんがね」
「それもそれで嫌だなぁ…」
「香りは柔らかな春を思わせる花。甘みが強く、薫りに違わずまろやかな味わいだ。幸福感がある。おかげで止まらん。食べれば食べるほどに力が満ちる物だからか勢い余って大抵一瓶食べつくす」
「多分それは君だけ」
「推薦順位は2。まさしく春の蜜だ。心穏やかになる。うむ。よい蜜だぞ」
「褒めてる…?ありがとね」
 
 
 
・森蜜(モリミツ)
「厳密に言えば蜂蜜ではないのかも知れないが私からしてみればこれも蜂蜜だ。虫の出す蜜を蜂が集めた物だな。元は樹液で、花のほとんど生えていない鬱蒼とした針葉樹林、そういった場所で集められる。甘いというより苦い。完全に薬用だな…栄養価は確かに高く…病に重宝するが、飲めば確実に子供は泣く味だ」
「蜂蜜屋がそれを扱ってるのあんまり見ないよね…薬屋の方が多い…」
「嫌いじゃない」
「許容範囲が広いね…」
「黒い色がわかりやすい。それに、慣れると焦がしたような風味を感じ、焦がし砂糖とそう変わらないように思う。独特のクセというモノは総じて、慣れれば愛おしくなるものだ」
「ふぅん…」
「蜂蜜でありながら甘味の添え物、としてつかうか、薬用とするか。そのどちらかが主だ。苦い、渋い程上質だと…言えなくもない。だが、蜂蜜だな、とわかる味はしているのが面白い所だ。万人受けは当然しない。しかしこういった蜂蜜もあるのだという知識の幅を広げる蜜であるな。蜂蜜や蜜蝋を、薬、甘味、酒、照明、その他多くの様々な利用法で生きてきた我が国だからこそ、こういったものの産出に力を入れてもよいのではないかな。気候も合っているし、そう苦労もないだろう。そういった様々な点からいって、推薦順位は5だ」
 
 
 
・照咆蜜(ショウホウミツ)
「さて」
「うん」
「あと一つだ」
「長かったね」
「まだ続く」
「本題に入ってないもんねまだ。信じられないけど」
「この照咆蜜を語るにはすべて話す必要があると思ったのでな」
「っていうか、よく語れるほど食べれたよね、照咆蜜なんて。一体どれだけ張り込めば数回でも食べられるの?僕二回くらいしか食べたことないよ」
「取りに行けばいい」
「…」
「竜の住まう大山、立ち入り禁止区画。その頂上周辺にのみ自生する竜の木。その果樹の花の蜜だ。濁った黄金色、ざらついた舌触り、蜂蜜独特の喉の焼けるような濃厚な甘さが強烈に口内に満ちる…流石竜と精霊と蜂しか立ち入れぬ山といわれるだけの事はあり、穢れがない…最高に蜂蜜でありながら、一般の蜂蜜に求める要素とはどこか違う部分を求めたくなる魔性の蜜…栄養価、魔力量、香り、味、効能、全てにおいて満点をつけたいと思っているが、蜂蜜が苦手な者、には苦痛でしかないだろうな。匙に擦り切り一杯、それを毎日三食含めば健康長寿に手がかかる。実際疑いない程の逸品だ…私も懐に常備しておるよ餓死寸前まで食さないが(スッ」
「うわっ」
「漬けた肉の時が止まるとさえ言われる保存力の高さだ。旅の共にはもってこいだろう?贅沢すぎる…かもしれんがね。毎日この蜜が食べられるのなら私はもう少し働いてもいいという気にもなるが、現時点で生産量がこれ以上増える事もないだろう?貴重すぎる品だ。需要も高すぎる。唯一至高の、最高級品だ。文句なしに推薦順位は1。もっと食べたい。私が。」
「でも危ないから取りに行くのは止めてくれよ…竜が怒ったらどうするつもりなんだい?」
「(にっこり)」
「うっわ無責任な笑顔だ」
「夕食にしよう」
「はぐらかし方が堂々としすぎなんだよ。全く…えーと、肉と魚、どっちの試食したい?」
「二日連続肉は嫌だから肉って言っても魚にしたけどね」
「何故聞いた?」
「義理」
「そうか」
 
 
 
 
 
「この揚げた白身魚に昼のソースつけたらおいしいかもしれない…」
「そうだな」
「今度アレスにやってもらおう…」
「そうだな」
「…話聞いてないね?」
「そうだな」
「こういうときだけサラダに夢中だ!!ドレッシング(蜂蜜マスタード)没収!!」
「何をする!!返せ!!」
「ご飯の支度も手伝わないくせに悠々と食事だけして!!腹立ってきた!!」
「鶏は小屋に戻したぞ」
「えっあっありがとう」
「テラスの椅子も片した」
「…そっ、そのくらい当然してもらわないと困るんだよ!いっつも勝手に僕の家使ってさ…ほんと…」
「すまないな、後はお前の後姿を見るのに夢中だったよ」(キリッ
「はぁ~ッ!!??ほんっと!!君が見てたのはどうせ僕が蜂蜜を使うかどうかだろうに!!」
「食後のデザート(お楽しみ)が待ち遠しいな?」(キリリ
「あぅっ、ううっ、ほんt、ほんと君がかっこいい顔で何かを言うときは大体ッ…大体蜂蜜が欲しいだけッ!!ほんと顔だけだ!!」(蜂蜜酒ドンッ
「持て成す体制を万全に整えている癖に何を言うのか」
「おつまみはハニーローストナッツ!!」
「実によろしい。乾杯」
「乾杯…また負けた気がする…イケメンには勝てなかったヨ…」
 
天井に吊るされたランタンが僅かに揺れ、その光の揺らぎを受けて薄黄金にきらきらと輝く液体の満ちたグラス。その甘い酒を嚥下する。波紋とともに広がる、ふわりとした甘い香り。
 
「魔華蜜の酒は…まろやかな味わいが最もよく出る酒に思う。揮発に魔力まで乗るのか香りを嗅ぐだけで頭が浮かれる」
 
サラトナグはすんすん、と鼻をならしその甘く優しい香りに酔う。確かに、自然と笑みがこぼれるような気持ちよさ、が、脳まで走る。
 
「場を包むような甘さだな。実にこれは、恋人達の為の酒だ」
「…ふん。君が気障っぽいコト言うと、気持ちが悪いね」
「ふ、気分が良くて少々浮かれているらしい」
「今日は昼から浮かれっぱなしだろ君は…で?長い講釈の続きは?酒が入っちゃあできない話かい?」
「まさか。むしろ…入らんと進まん話だ」
「それなら結構。僕も機嫌は悪くないから…まだ、聞いたげる」
 
すぐに水面を下げる向かいの席のグラスに雑に酒を注ぎ、頬杖をつきながら黒い瞳で見上げた。度数の低い酒では、無いらしい。
 
「ああ、では続けようか。先ほど言っただけの種類の蜂蜜がこの国の主だった蜂蜜だ。特に照咆蜜などはどこのだれが見てもとても珍しい物だろうな。しかし、これら蜂蜜、森蜜以外には共通した特徴がある。それは何だと思う?」
「共通した特徴…?ええっと…」
「いくつかあるぞ」
「いくつか…んん…」
「わからんか。分からんと思う」
「ん…」
 
ルートグランがゆっくりと手を伸ばすと、その掌に引き寄せられるかのように頭を寄せた。ペースは速くはない(ルートグラン様比)が、随分と、酔っている、らしい。不敵に口元を歪ませた事にサラトナグが気づく様子はない。
 
「光る事」
「…ひかること?それはふつうでしょ?」
「そう思うだろうな。だがしかしサラトナグ。この国の蜂蜜は確かに実に上質であるから…他国の物を食べる必要が殆ど無い故に気づかんだけで…蜂蜜が発光するのは我が国の蜂が我が国の花から蜜を集めた場合だけなのだ…」
「へぇー…じゃあ蜜蝋燭もひからないし…蜜飴も…お菓子もひからないんだ…」
「そうだな。そういう事になる」
「それって、ふしぎだねぇ」
「そうだな、不思議な事だ。他所から見れば、こちらの方が不思議なんだろうが。夜闇に蜂蜜酒がほの光る酒盛りも、煤が光る粒子となって舞い上がる蝋燭も、蜜掛けの菓子が煌めく菓子店も…とても珍しい物なのだそうだ」
「…とくさんひん…珍しいものとか…そういうのがいいって…あーねあくん言ってたなぁ…」
 
グラスに注がれるままにこくこくと酒を飲み、じゃあぼくも、とたどたどしい手付きで注ぎ返す。同じペースにさせられていることにいつ気付くのか。もう気付いたところで二日酔いは避けられないのだろうが。
 
 
「…首都近郊の魔力量なら…お前が常に管理しなくとも、魔華蜜の生産は出来るだろう?」
「…うん…でき…るとおもう」
「私が思うに今までお前が流していた魔華蜜は、私に持たせた分の余りだろう?」
「うん…そう…ああにゃーくんに渡してた…それだけ…」
「勿体ないとは思わんかね…美しい蜜だぞ。それにな…清い蜜だ」
「きよい…」
「蜂は花蜜以外からも蜜を集める。それが甘ければ、何でもだ。だが…魔力という基準で集める物を選ぶのは…この国土由来の性質だろう。するとどうだ。大地と河川の魔力で育った花々や樹木以上に蜂達の目に止まるものはない。その辺に撒かれた砂糖水にも…妙な混ぜ物にも…決して寄らん。故に清い」
「つまり…ええと…よいものだって事か…」
「そういうことだな」
「…まちの…まわり…はなばたけか…」
「竜の木の改品種も植えられるだろう?煌蘭も、どちらも街の標高と魔力量で十分に育てられるはずだ」
「そうだねぇ…にんきのはなだし…くだものだし…」
 
「「…」」
 
しばらく沈黙が続いた。サラトナグはテーブルに頬をつけ、ナッツをぽりぽりと食べながら何かを考えているようだ。ルートグランは何やら、先ほどまでの熱は何処へやらといった様子でまた酒を飲み始める。
 
「…あぁ〜そっかぁ、わかったぁ」
 
視線をあげる。
 
「わるくないなぁ」
「だろう」
「ぼくもうれしい」
「だろうなぁ」
「おかし職人さんとか呼んでさぁ、きらきらした、たべられる作品をつくってもらおうよ」
「様々な種の蜂蜜も呼ぶのだ。街中が蜂蜜の香りで満ちる祭りになるぞ」
「なまえが売れれば箔がつく…箔がつけばよく売れる…」
「ただの農地に変えるよりは、心情としても良いだろう?」
「ふ、は…あはは、なるほど…うん…枯れない花畑…いいよ…いいなぁ…でも、」
「でも?」
「ぼくもうれしい、だけじゃ…たりないなぁ」
「強欲は身を滅ぼすぞ」
「えー…?しらないなー、わかんないなー、足でもなめてくれたらなー、かんがえなくもないなー?」
「…ほう。言ったな?少し待っていろ」
「えー、なにわらってるのきみ」
「まぁまぁ座っていろ。はっはっは。つまり、お前の足でも何でも舐めてやれば(気分を良くして)私の頼みを聞いてやると…そういう事だな?」
「んー、そうともいうな〜、あはっ、なに、してくれるの?あははっ!!うっそだぁ〜」
「言質は取ったぞ」
「ふぇっ」
「まだ蜂蜜はあるだろう?頭から被れ。いくらでも全身でも舐めてやる。頬や眼や何処とは言わんが何処かが削げてもそれは些細な事故だな?」
「ぴゃっ!!やだ!!やだそれ!やだ!!」(がたがた
「おいおい逃げるな逃げるな」
「あうっ!」(どてっ
「酔って動けん癖に暴れるから…」
「あうっ、やだ、だって、いたいもん、いたいのや…」
「力で敵わん相手をおちょくろうとするからそうなるんだぞ?いい加減学習しろ」
「ぴええぇえ…」
「で?何処から削がれたい?足か?私はお前の腿肉は好きだぞ?実に好物だ」
 
壁に追い詰められ完全に獲物と狩人の立ち位置になっている。頭が弱い。抵抗しても無駄なのか出来ないのかは定かではなかったが、抵抗しないというのは経験からかわかっているらしい。
 
「はぅっ、はしゅ、」
「ん?」
「たしゅけてぇえ!!」
「とうっ」(ばきっ
「やはりいたのか」
「どうも、マイラヴァーの危機に颯爽登場自分です」
「あだにゃあくぅうん!!!こわかったよぉおお」
「酒臭いですよ」
 
天井に張られていた板をぶち抜いて頭上からやってきた乱入者。しかしながら、サラトナグはぴえぴえ泣きながら縋っているがルートグランはまるで予想通りだと言うように動じず、またテーブルに戻り酒を飲み始めた。その対面の席に座ったのは今度はサラトナグではなくアダネアで、やはりまだぴいぴいと背後からしがみついているサラトナグ。完全に幼児退行している。
 
「いつからいた?」
「酒盛りの直前辺りで到着しました。嫌な予感がしてみればやっぱりコレですよ。どうしてくれるんですか」
「しらんなぁ」
「ドアまで壊して時間稼ぎとは随分と念入りにやってくださいましたね。おかげで入るのに時間がかかりましたよクソカニバじじ様」
「ふええこわかったよぉお」
「言質は取ったぞ」
「それは勝手な脅迫ですy「あーねあくんおねがいだよぉぼくたべられちゃういたいのやだぁ」ちょっと黙っててくださいばば様」
「最善を取るべきではないかね、商いの長よ」
「…はー、こうなると思ったんですよ。サラ様に味見を頼んだら、僕お子ちゃま舌だからじじ様も呼ぶね、とか返事が来て、この人は本当に馬鹿だなと思ったらもうホント馬鹿」
「おかしいと思ったのだ。何故特産品候補に一切蜂蜜の影がないのか。余り私情を挟むな」
「じじ様にだけは言われたくないですよ」
「そうか?ならば大いに挟め?なぁサラトナグ、お前もそう思うだろう?」(にやにや
「そうだようあだねあくぅん、いいじゃないかはちみつ、やってあげてよう、ぼくいたいのやだよう」(べそべそ
「…。今あるモノ、の有効活用の方法を考えていただきたかったんですがねぇ?」
「らいねんの、「余計な事言わないでください」ふえ、」
「言え。いいんだぞ全部言ってやれサラトナグ」
「おおいなら、らいねんのにわとりごやの…かいちく…なくせばいいじゃない…」
「無駄に来年の予定覚えてないでくださいよほんと中途半端に記憶力がいいから困る」
「おまつりでね、おきゃくさんいっぱいこればね、はちみついがいも、いっぱいうれるし、ほら、お菓子にはね、たまごたくさんつかうでしょ…?」
「花畑の管理は誰がするおつもりで?まさかばば様がしてくださる訳ではないでしょう?」
「るてるみ…あの子のけんぞくにもなって、おとくだし…」
「…蜂」
「おしろのはち、あまってるのしってるよぅ」
「…ええ、そうですね。そうですよ、何の障害もないですよ」
「ながもちだし、めずらしーし、いっぱいとれるし、はこべるし、いいこといっぱいだよ?」
「ええはい、そうですよ、わかってます。わかってますとも。ちょっとじじ様笑うのやめてもらっていいですか」
「いろんなはちみついっぱいのひ…あるとね、ぼくもうれしいしね、ぼくたべられないでいいしね、それでね、いっぱいうれて、ゆうめいになって、その、あの、」(あうあう
「泣かないでください…できれば今後こういう酔い方しないでください面倒だから…」
「あだねあくぅん」
「いい歳こいて上目遣いでうるうる見つめるの恥ずかしくないんですかプライドとかないんですか媚びないでくださいませんかおっ勃つんで」
「だってだってたすけてくれるのあだねあくんしかいないんだもん」
「うわ~聞きました?聞きましたこの殺し文句。完全にじじ様に怯え切ってるじゃないですか容赦なさすぎるんですよじじ様」
「私は何もしていないぞ。ただ少々語っただけだ。勝手に理解したのはソイツだ」
「無駄にお利口さんだから困るんですよ。はー腹立つームカつきますよほんとー」
「おこっちゃう…?」
「おこ…………っっってないですよええわかりました生産計画の見直しも宿場町の建設計画も花畑の立地案も明勲の任務配置も取引先の吟味と経済状況の見合いも商船の新規建造も新交易の価格設定も街の人口設定の推移予測から居住計画までその他ありとあらゆる事をしなければなりませんけど、も、」
「…」(うるうる
「…」(にやにや
「やればいいんですよね自分がね」
「あだねあくぅん♡♡♡」
「すごくやりたくないです」
「はっはっは」
「絶対に蜂蜜とかいう自分の嫌いな奴が一番喜びそうな案だけは通さないつもりだったのにその為に苦労など絶対にしたくなかっというのに」
「受けなくても構わないぞ私は。ソレがもっと必死にお前に頼み込むだけだからな」
「それを脅しというんですよじじ様知ってました?」
「知らんなぁ。私は私が良いと思った案を語ったにすぎんよ。ソレが足を舐めろだのそんなことを言ったから、私の歯が尖っていることは理解しているな?と確認した。それだけだ」
「年寄りってほんと太々しく面倒になりますよね。さっさとくたばってくださいよ」
「その時が来れば私もその男も死ぬさ」
「チッ」
「ありがとうねぇあだねあくんぼくうれしかったよぅ」
「そうでないと困りますよもっと危機感持ってください」
「ぼくもおてつだいするからねぇ」
「当然ですよね」
「きょうはいっしょにねんねしようね、ね、」
「よっしゃ」
「あとの世話は任せたぞ。私ももう眠い」
「自分勝手過ぎませんかほんと」
「私の蜂蜜の好みと感想は全部教えておいたから後はソレに聞け」
「何でばば様こんな理不尽の塊みたいな暴君に惚れたんですか男を見る目がなさすぎる」
「顔と体は好きだとよく言われるがね」
「面食いビッチショタじじい…」
「今夜はよい夢が見れそうだ。気分がいい」
「…数年はかかりますからね、当然。急かさないでくださいよ」
「急かさんさ。私はただ、蜂蜜を楽しめる日があればいいというだけだからな」
 
 
 
 
 
 
 
翌朝
 
「…あだねあくんほんとうにごめんなさいでも悪い案じゃないと思うのは確かなので国の特産品貿易科目に蜂蜜各種を入れる段取りを始めていただきたいです…」
「悪い案じゃないのは自分もわかってますからいいんですよ。ただ名前まで高めてお祭り騒ぎにさせて様々な種類の蜂蜜を国に集めて楽しみたいとかいうじじ様の欲望のために自分がそれだけの労力を裂きたくなかっただけですからねええ」
「でも蜂蜜を使った美味しくて美しいお菓子作りの大会を開くのは僕も大賛成なんだぁ♡」
「なら頑張ります」
「わーい(*´▽`*)」
 
 
尚蜂蜜大好きおじさんは扉ぶち開けてぱーぱーにさせた挙句倉庫の魔華蜜と蜂蜜酒を大量に持ち去ってすでにどこかに消えていました。蜂蜜の為だけに来て蜂蜜の為だけに脅して蜂蜜だけ持ち去って消えました。自国で蜂蜜の日イベント、蜂蜜品評会を行い審査役になれたら色んな蜂蜜がタダで食えるな。ただそれだけの為に普段使わない頭使った蜂蜜大好きおじさん。ただ蜂蜜の説明だけした蜂蜜大好きおじさん。食欲の8割蜂蜜2割肉な蜂蜜大好きおじさんはきっと今もどこかの森の中で蜂の巣を探して熊と鉢合わせて戦っている。