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ほうさんのお国柄

企画参加用創作ブログ。絵は描けない。文のみ。お腐れ。色々注意。

国設定要約メモ

ルウリィド国

ひとつの大きな島と3つの小島で出来た国。

精霊が多く自然と美を愛する。

草原と森ばっかで温暖。国民も穏やか。

独自の奴隷文化を持つ。

物価が安い。一文無しでも多分生活できる。

食料自給率160%。食べ放題だよう。

 

歴史

元は二つの国。精霊vs他種族の戦争を精霊が制し、精霊優位の国として統一。

3つの小島の間は、海に沈んだ戦争時代の工業施設や資産があるとされていて、潜って探険する人も多い

 

文化

自然壊しちゃダメ、絶対。

給料もらう人は大体奴隷

分け与えましょう助けましょう

まぁまぁ楽しく生きましょうや

差別はダメ。区別。驕るな

人の物盗ったらお痛だよ

 

文明

魔導銃

魔法が打てる銃。かっこいい。高い。

 

魔導地雷

いざという時の保険。起爆の条件付け可能な、魔力を使った地雷。

 

特産品

水膨草(ミズボウソウ)

水・汚い空気でも呼吸ができる草。

人間の平常呼吸で2〜3時間ほど持つ。

 

水草(チョスイソウ)

水を溜め込む蔦。便利。

 

奴隷

他国で高く売って、安く買い叩き連れて来て、育ててまた売る。良いビジネスだそうだ(奴隷商人談)

国設定 特産品&文明

17 4/3 4種記入

 17 4/4 2種追記

 17 4/22 1種追記

 

 

特産品

 

・水膨草 (ミズボウソウ)
元々リード島洞窟内の巨大な地底湖に原生していた植物。根が太く長く、水の中でも腐らない。葉も茎も根も額も、水中から酸素を取り出すことが出来るため、水中でも発芽可能。


地面から約20センチ程の高さまでの、細く硬い葉を何本も出す。(イネ科植物の様な)
根元から、太く丸い茎を一本だけ伸ばし、その先に実をつける。(この茎はメロンやスイカのように地面を這い、成長するにつれ茎の強度が増し、タンポポの茎のように天に向かう)


茎の中は空洞になっており、呼吸の際、余った空気を茎から果実に送り溜め込む。
成長に伴い、実は大きく皮がどんどん薄くなっていく。その中には、遠くまで種子を飛ばせる様に綿毛のついた種子が大量に入っている。

成長していくと、実の皮は極めて薄くなり、空気がパンパンに詰まる。そして、あるところで破裂し、その風圧で中の綿毛付きの種子をばら撒く。

 

この植物の綿毛には毒性があり、吸い込むと呼吸困難、麻痺、発熱を起こし、付着した生物を宿主にして成長する。その場合宿主は死ぬが、そもそも地底湖に全然依代になる生物がいなかったため特に脅威ではなかった。

 

この植物を、

・毒性の排除

・綿毛の縮小

・破裂前に茎を通して綿毛を取り出す

・果実付近、額の巨大化

・額の呼吸効果上昇

以上の品種改良を行うことで、

茎をストローのようにくわえながら息をすると、額から果実内へ清浄な空気を送り込み、人間の平常呼吸なら2〜3時間の間水中でも息を持たせることが出来るようになった。

この植物の誕生により、海没地帯への探検が可能になった。

※鼻は塞いで下さい

※吸った息を水中で出したらいけません。茎をくわえた状態で呼吸して下さい

 

 

水草(チョスイソウ)

ルーダ島で自生する木の幹・枝などに絡まる蔦科の植物。

朝露・雨・霧などの水分を浄化し、果実とは違う、葉の下に出来る瘤に溜め込む。

主に水不足の地域で多く見られるがこの植物自体は非常に乾燥に強く、自分が絡まっている木や周囲の草花が乾燥していると判断すると、自ら瘤を割り、地面に水をばら撒く習性がある。

現在では森に住む住人はほぼ全てこの植物を家屋に生やし、瘤の位置を家屋内に調節し、水分補給に使っている。

白色の可愛らしい花を咲かせ香りも良いが、花が咲く割には根の分裂や接木でのみ増える。花での交配をしないため花粉も出ない。愛らしく便利な、今では生活に根付いた植物。

名前の由来は、猪が好んで花を食べるため。

 

奴隷

その名の通り奴隷だが、この国の奴隷の大半は、奴隷と呼ばれることに怒りを覚えることがなく極めて穏やか。大抵の奴隷が基礎教育を受けている。マナーや知識の水準が高いことから、他国では貴族の側仕えとしても通用するほど、見窄らしさがない。

ルウリィドの安い物価も相まって、ここで生まれ育った奴隷を他国の扱いのいい高級奴隷として売ると非常に儲かるらしい(奴隷商人談)

戦争孤児や浮浪者など、生活に困っている者をタダ同然で引き取りルウリィドで生活&教育させる。するとやはりめちゃくちゃ儲かるらしい(奴隷商人談)

余談だが、この国の食料自給率は160%を超えている。どれだけ奴隷を連れて来ても、国としては痛くもかゆくもない。本当に、生きるだけなら困る方が難しい国である。

 

煌蘭(コウラン)
赤く小さな蘭。花の奥部はほとんど蜜という程大量の花蜜を溜め、花びらも花粉も葉も茎も種も全てが甘い。
その甘さにより野生動物もこぞって食し、育成の難しさから育て増やすことが難しく、非常に貴重な花となっている。
魔力の多い地に咲く煌蘭は極めて鮮やかでわずかに発光する。蜜を舐めると魔力の回復も見込める。主に花を砂糖漬けにして食べる。みんな大好き

ごく稀に、ミツバチが蜜を集めに来て花の奥へ入り、蜜で溺死し閉じ込められることがある。
そのミツバチの死骸が蜜と反応し結晶化したものが芸術品として扱われることがある。非常に高価。
煌蘭の砂糖漬けがもっともメジャーな食べ方だが、たまに発見されずにその中にもミツバチが入っていることがある。この場合は固まりきっておらず、半個体状。精霊以外の種族は「ありえないほどまずい」「確認しなかった10秒前の自分を殴りたい」「舌をちょん切って丸洗いしたい」という程不味いというが、何故か精霊は絶品、大当たりという。ミツバチ結晶の美術品を購入して飴のように舐める煌蘭ジャンキーの精霊もいる。

 ※微量な興奮成分、多幸感を与える成分が入っている。極めて少量だが、大量摂取は危険。

 

 

満三月百合(ミミツキヒャクゴウ)

非常に花弁の多い百合(90ー100枚)。約90回月光を浴びると、成長しきり開花する。その後、日の出の太陽光を一回浴びる毎に、一枚ずつ花びらを散らす。

最後に散る一枚が非常に特殊な香りを放ち、気持ちを前向きに、記憶を朧げにさせる効果がある。

そのため、別れを惜しむ元恋人へ、「半年間この花を見てあなたを思い出します。それが終わればお互いの事はすっかり忘れ、前を向いて生きましょう」という意味合いを込めて渡す。

 

この花弁の最後の一枚を集めて生成した薬は、非常に強力な自白剤になる。何を聞かれても考えて話せず、思った事を全て言うことしかできなくなる。

約10枚分の薬で、廃人確定となる。薬が切れる事は無く、頭は常に開放状態。非常に強い快感が伴う事だけが唯一の救いか。

 

高価な花だが、購入は一般でも可能。自白剤の精製法は極秘とされている。

 

 

 

 

文明 

 

魔導銃

人間の作った銃に、精霊の魔法を付随させた物。歴史上しばらくの間はロストテクノロジーとされていたが、今は高価ではあるが少量流通している。

力の強い精霊と契約し魔力を込める事でより強い魔導銃になるが、信仰の厚い精霊は銃を嫌う傾向がある事と、銃に抵抗のない鉄信仰の精霊はこの国では数が少なく弱い事と、鉄器に鉄の魔力を込めても、魔導銃の良さが活かしきれないことが問題か。

弾丸の代わりに魔弾を打ち出せる。込めた魔力は撃つ度に減少し、6・8・12・16発のタイプがある。一度に込めた魔力は、玉を撃ち切ると全て使い切る。

大量の魔力を込めた6発魔導銃の強さは、そこんじょこらの精霊魔導士の魔法の比じゃない。

属性によって付随効果が変わる銃もある。作れる生産者が非常に少ない。

 

 

魔導地雷

事前に魔力を込めた印をつけることで、条件を満たした際に溜めた魔力を放出することが出来る術

地雷の通り、元は雷を落とす魔法を発動する印

 

一度つけた印は、解放以外に解除する方法がなく、移動ができないのが難点だが、防衛などには絶大な効果を発揮する

一人の精霊が使うには魔力の補充と揮発のバランスが取れず、待ち伏せとして長期運用するには大した効果が出ない

しかしこの魔導地雷は、

・魔力の補充ができる

・複数人で貯めることが出来る

・属性の違う魔力でも関係なく溜められる

以上のことから、精霊が多く比較的結束の硬いこの国では猛威を振るう

現在では各港や主要都市、刑務所や王城など、重要公共施設には必ず巨大な印が敷いてある。

個人で使う魔導士もなんだかんだ多い

印は不可視。魔力探査に長ずる者なら辛うじて感じ取れるだろうか

印を敷く際に【解放した時の効果】を決めておく

国設定 年表&ルール(国内・外交)

適時変更。解明されていない事件も多い

17 4/3 基本年表作成

 

 

地図

 

f:id:o_osan:20170404003400p:image

水色:湖、大きな川、沼

オレンジ:港

灰枠:沈没地帯。失われた過去の遺物が多く残っている。

赤い丸、首都ルーダのある大きな島がルーダ島

青い丸、商業都市リードのある島がリード島

地図上リード島の左の島がリードラ島(西)

地図上リード島の右の島がリードロ島(東)

 

年表 

ルーダ歴を使用している。

(国民はあまり歴史を重要視していないので、外交の際にこれを気にする必要はないです。完全趣味)

 

ルーダ207年:地域ごとに分かれて住んでいた種族達の交流が始まる。物々交換

 

ルーダ467年:通貨・共通言語の概念が生まれる。

 

ルーダ488年:鉱山の多いリード島に人間が集まり開発が進む。それに準じてルーダ島に精霊が集まる

 

ルーダ503年:雇用の概念が生まれる。リード島では鉱山の発展と雇用形態が進化していく。

 

ルーダ527年:国外より、働き手として「奴隷」の大量購入が行われた。

※これにより、働き手=奴隷という名称が付くが、待遇は元の国民とほぼ変わらない。移住直後、言語がわからないため仕事を自分で選べなかったため、誰かが管理をする・派遣するという形態を取った

 

ルーダ540年:リード島工業最盛期。森のほとんどが切り倒された。

 

ルーダ543年:森林・自然減少のため精霊の怒りに触れた。ルーダ国より、リード国への外交遮断が行われる

※この時点でほど全ての食料が、ルーダでの生産→リードへ輸出で賄っていた

 

ルーダ566年:他国との輸出輸入で食料が回らなくなる。人間奴隷連合による、ルーダ島侵攻作戦が計画され始める。

 

ルーダ572年:リード国、餓死による人口の低下により、侵略を強行。

 

ルーダ575年:戦争集結

※食料を殆ど持参できなかったリード国兵は、ルーダ国の自生植物などを食べる必要があったが、野草への知識不足による毒草の摂取・森を動ける人材がほぼいない・防衛用の魔法地雷を大量に踏む事により無力化

海・水・大地信仰の精霊の怒りにより、海を荒らされ地割れと地盤沈下を起こされ、工業施設は壊滅。島を三つに分断される。

これにより戦意喪失。全面降伏となる

 

ルーダ576~649年リード島整備が始まる。

※肉体労働従事者が自らの事を奴隷と呼ぶため、その呼称をそのまま使う事に。

※主に全域に食料自給用の自然を復活させる事、急激な工業の発展による汚染の解消を主体とした復興期間。

※リード国の資産はルーダ国で分配された。二度と工業発展を行い島を壊さぬ様に。

 

ルーダ650年:大体の復興の終了を機に記念式典を行い、「ルウリィド国」誕生。

※この記念式典で、ルーダー姓が選ばれた30人の様々な種族の者に与えられた

 

ルーダ651年:初めての王の誕生 精霊*人間

※力を持つ精霊と、他種族で最も力(権力含め)の強い者との子を王にする。王は子を成す事が原則できず、王の親(精霊でない方)も、王以外の子を残すことはできない。王の親族は王城にて暮らさねばならない。これにより、精霊以外の種族の優秀な血筋の繁栄を制御している。

 

ルーダ652年:沈んだリード島に残る遺品や文明記録の回収が計画される

※探検家が生まれる。ただし、大して探検できない

 

ルーダ701年:他国への交流を再開させる。穏やかな気風が定着し始め、のんびり過ごせる自然豊かな観光地としての発展が進む。

 

ルーダ717年:水膨草開発。これにより、リード島の探索が進む

※ルーダーの一人が開発した草の品種。これがあると、一つにつき約2~3時間程、水中で息ができる。汚染された空気の中でも息ができる。この場合は汚染具合により継続時間は異なる。ただし非常に繊細。

 

ルーダ736年:大変高価ではあるが、失われた銃の復活。少量ながら生産可能となった。

 

ルーダ749年:金属信仰の精霊が生まれ始める。これにより、魔導銃の開発が進む

 

ルーダ781年:精霊魔導士の一般化。大抵の精霊が加護と魔法を使う様になる

 

ルーダ790年:国内全ての図書館にて、過去の書物が何者かによって盗まれ焼却される。個人蔵のみの書物のみ残る。

※ルーダ550年より前の記録は消えた。

 

ルーダ923年:未だに残っているルーダー姓の精霊を、明勲精霊(メイクンセイレイ)として特別階級に定める。その他、信仰心が強く加護の厚い精霊なども明君精霊と定める。

※国の今後を左右する決定権を持つ精霊達。まぁ会議とかそういうものはないので政治なんてしない。そして特別な権利も大してない。厄介事が回ってくるくらい

 

ルーダ1434年:今。特に何事もなく平和?

 

 

 ルール

 

国内

・種族間の友好の使者として、統治種族である精霊と他種族の半血人を、代々王とする

・王に政治的決定権はない。決定権を持つのは明勲精霊と呼ばれる精霊達。

・明勲精霊には、【自身で責任が取れる範囲】の権利が与えられる

・自然を大事に。何よりも。

・精霊には逆らってはいけない。精霊は無闇に能力の行使をしてはならない

・他者を陥れてまでも何かを得ようとする強欲は、何よりも罪である

 

外交

ルーダ島にある4箇所のどこかの港へ。迷ったら首都ルーダの港へ。リード島へ直接行くことはできない。必ず最初はルーダ島の港へ。

事前に管理協会宛に手紙や使いを出しておけば、即入国可能。しかし、以下条件内なら、である。

・一週間以内四人以下武器不所持アルファ以外の観光許可はすぐに降りる。それ以外の場合は認可が必要。あるいは特殊な状態の場合も。

 

それ以外だった場合

・長期滞在・4人以上・アルファ・武器所持

ルウリィド国の明勲精霊あるいは管理協会から招待されていれば入国可能。

招待がない場合、明勲精霊から認可を受ける時間待つのであれば入国可能になるケースも。

 

・感染病や魔獣の大量発生

自国で正体不明の病や流行病、魔獣の大量発生などなど、特異な状況である場合、断ることがある。研究チームやルウリィド国からの依頼の場合その限りではない。

 

・あまりにも強く凶暴。敵意がある。

条件を満たした方でも、その上で国に脅威を与える可能性がある場合、断る場合がある。

断っても帰らない場合、元々仕掛けてある超強力魔法地雷を発動し、港ごと消滅させる。

生き残ることは不可能。多大な犠牲を払うことになる。他国の使者も諸共消滅。よくお考え下さい。

 

今日から奴隷になります。

 

病に苦しむ母のために、と。家から逃げるように飛び出した。

 

 

 

今日から奴隷になります。

 

 

 

 

商業都市リード。主に奴隷取引で栄えるこの街は、国外ではなく国内向けの商業の起点。

集まるのは物ではなく情報。探索者ための武器や食料。首都ルーダの華やかな活気とは違い、騒がしく荒々しい。

 

少年は一人、その街にいた。大人達に負けぬ背をしながらも、少々雰囲気はあどけない。

少年は、近くにいた奴隷商人へ話しかける。

 

「あの、働くにはどうしたらいいか、聞いてもいですか?」

 

優しそうな雰囲気の中年男性は、少年の姿を見てにっこりと笑う。

「ああ、働き口を探してるのかい?年は?」

「14。リードラの方から来たんだが、仕組みがよくわからない...から」

「14?若いね...その若さで出稼ぎか...大変だ」

「もう直ぐ15になる」

「私達奴隷商人は、15以上の子じゃないと世話してあげれないんだ。

首都の奴隷管理局へ行ってごらん。世話してくれるから。おおい」

 

男性は、近くにいた青年を呼んだ。20代程度であろうその人間の青年は、気安く返事をした。

 

「どーした親父さん」

「この子を首都まで連れて行ってあげてくれ。初めてらしい。出稼ぎだって。えらいねぇ」

「へぇ。訳ありそうだな。おし、じゃあ行くか。

あ!親父さん、俺の分の飯残しといてくれよ!」

「わかってるよ〜、行ってらっしゃい。頑張ってね」

「ありがとう、ございます」

 

ルーダからは橋が。リードからは渡し船が。それぞれ都市を繋ぐ。

「いいか?行き来にはここを使え。運賃はいらねぇからな」

小さな港から、船に乗り、少し離れたルーダの港へ。国内で最も大きな外交拠点であり、常に賑わっている。

 

出入りを管理している受付で名を書き、街へ直接続く、緩やかな坂の洞窟へ入っていく。切り立った崖の上にある都市へは、この洞窟を使わないと非常に遠回りになる。危険を冒して崖を登るなら別だが。

 

首都中央の噴水広場の近くへ出る。広場を囲うように様々な管理局が連なっていた。

その中、奴隷管理局へ入る。

「ここで、おねーさんに話ききゃあどうにかなるだろ。大変だと思うけどよ、頑張れ。

とりあえず商人の手伝いが一番楽だぜ!家がねぇのは面倒だけどな!じゃあなー!」

 

青年は明るく手を振り去っていった。

助言通り、受付をしている女性達の内一人へ話しかけた。

 

「あら、ふふ、聞こえてたわ。働き口、でしょ?」

「はい。まだ14なんで、でも、ちょっと、今金が必要なんです。だから、どこでもいいから雇ってくれる所は、ないですか」

「探してみるけど、あんまり期待しないでね〜

とりあえず、名前は?」

「ダン。苗字はないです」

「ダンちゃんね〜、出身とお家では何かやってた?」

「リードラ島で、馬の飼育と調教です」

「あら、お家のお仕事はできなくなっちゃった?」

「母親が病気で、急に金が...」

「あら〜大変ねぇ。でもお馬さん乗れるのね。きっと。

剣や武術はやってた?」

「やってないですね」

「工芸とかは?」

「ないです」

「りょーかいよ〜。お馬さん乗れるならいいわねぇ。商人さんのお手伝いなんて腐るほどあるんだからぁ。他の牧場でもいいかもれないわね。希望はある?」

「ないです。ただ、長期で、給金が出て、最初に銀貨70枚は欲しいです」

「銀貨70...ちょっとそこが厳しいかしら。

 

マザーの友達なら融通きくかも。とりあえず話して置くから、今日はおやすみなさいな。遠くから来て疲れたでしょ?

はい、鍵。ここから右手に進んだところに、奴隷さん達のお部屋があるから。

308号室。お仕事決まるまではそこが貴方の部屋。

明日はお休みね。明後日以降に決まればお知らせするし、決まるまでは街の掃除とかしてましょうね。ちゃんとお給料出るから」

「ありがとうございます」

「いいわねぇ〜、可愛い人間の男の子って大好きよぉ〜♡私応援してるからね、ダンちゃん!」

「あ、ありがとうございます...?」

 

 

マザーとお話し。

 

 

「あ、ダンくんおはよう。今いいかしら」

「...おはようございます、おねーさん」

「きゃあ〜♡今日もかわいい〜♡仕事来るのが楽しくて仕方がないのよねぇ最近!ここ70年で一番楽しいわ!」

「いくつなんすかおねーさん...」

「ほほほ!精霊に年齢聞いても意味ないわよ♡

今日は街でのお仕事は無し!

代わりに、いらっしゃい、マザー...えーと、奴隷管理局の一番偉い人で、マザーって呼ばれてる、リヴァイラっていう精霊の女性がいるんだけど、お話があるみたい」

 

 ーーーーーー 

 

 

「失礼します」

「おや...聞いていたよりも可愛らしい男の子でしたね...いらっしゃい。お茶を用意しましょう」

「え、あの、おかまいなく...」

「ふふふ、いいのよ、甘えて頂戴。その位しか、楽しいことがないの」

 

そこにいたのは、穏やかな微笑みを浮かべた、青い髪をした女性。老いてはいないが、若いとも言えない。ゆったりとしたローブを着ており、正に、マザーと呼ばれる女性だと一目でわかる。

 

「ダン、と言ったかしら」

「はい」

「...可愛いわねぇ」

「...よく精霊にそう言われます」

「そうよね。なんだかすごく美味しそうに見えるわ。食べたりしないけれど...ふふ。初々しいからかしら」

 

マザー・リヴァイラは、少年をソファーへ座る様促し、その隣へ座った。

 

「14、と言っていたかしら。でもお金が欲しいって。

街で働いていて貰った貴方を見て、ぜひ雇いたいと言ってきた方がいるわ。私の友人。

正式に働くのは15歳から。でも、街での生活の面倒を見る、っていう形で、早くから引き取ってもらえる事になったわ。

 

お金の事、だけど。

貴方がここにいた間の衣食住代は、全部引き取り手が払う。そして、給金はまず前払い。

合計で銀貨100枚と言ったところね。ここにいた期間が短いから、ウチには30、貴方には70。

これからの貴方の生活を考えると、10枚は余分が欲しいと思う。だから、局への取り分は20でいいわ。今後、働いて貰ったお給金から少しずつ返してくれればいい。どうかしら」

 

「...俺は何にもしなくて...?」

「いいのよ。元々、何をすればいいのかわからない子達への制度だもの、奴隷って。

雇い主は商人のライネイ、という名前の女性の精霊。いくら貴方が可愛くても、取って食べちゃう様な子じゃないわ。安心して。

 

えぇと、そうね。もしも辞めたくなったら、まずここにいらっしゃい。辛かったり、嫌なことを雇い主にされたらすぐに言うのよ。

 

貴方に何をしてもらうのか決めるのは雇い主。それをするかは貴方が決める。

先にお給金をもらっているから、少しは嫌な事でも頑張って欲しいけど。でも、本当に辞めたいならもう一度管理局が貴方を買い取る。そしてまた、しばらくは街や国で働いてもらうだけだから。安心してね」

「...ありがとう、マザー」

「いいのよ。ふふふ、貴方達を導くのが使命ですもの。明後日にライネイが来る予定よ

 

あ、そうそう。そんなに直ぐはないと思うけど、貴方の場合は銀貨70枚。これを雇い主に払えば、相手が何と言おうと、貴方は一人になれる。交渉次第ではお金はいらないっていう雇い主が多いけど...覚えておいてね。独立したりする時に必要になるわ」

 

 

雇い主に会う。

 

「初めまして、ダン。今日から私の奴隷!

はい、これ!欲しかったろう?お母さんのためだって言うじゃない!?もう感動!!持ってきな!」

「え、いや、あんまり自分では持って行きたくない...」

「じゃあ送っとこ!

いいねー、なんだろうね、なんか君いいね。うんうん。さ!先ずは似合う服を買おうか」

「...仕事は?」

「したいの?珍しいねー。いいじゃん、初日だよ?」

「仕事するために出てきたから...一応...」

「故郷、奴隷いた?」

「いや、制度は知ってたけど、殆どいない。みんな生産者だった」

「ああ、ならそっか。わかんないか。

この辺の精霊の商人はみんな、奴隷を雇う時は家族の感覚で雇うんだよ。みんな寂しいからさ。

奴隷商人もそう。自分の育てた我が子が一番輝ける所で働けるように、国内を這いずり回ってでも働く場所を探す。売った後も毎年の様に顔を見せて、辛そうにしていたらまた買い取る。それを繰り返してるんだよ。

 

人間の商人は知らないけどね!国外への輸出は多少は利益目的でやってるだろうけど、みんな、旅の仲間が欲しいだけ!!

いいもんだよ、国内回って、珍しいものを見て、みんなで美味しいもの食べて。物を運べば生産者さんからお野菜もらって、みんなで鍋。港の積荷を下ろす手伝いは、漁師から魚をもらって焚き火を囲って。みんなで歌を歌いながら荷馬車に揺られるの。

 

私達は、一緒に仕事をしてて、リーダーが決まってるだけの家族。わかるかなー?難しいかな。

ま、ゆるーく働いてくれれば助かる、って事!」

「そういうもんなのか?」

「そういうもんなの。どっちが使えてんだかわかんない、っていつも言われてるよ、奴隷と雇い主の関係は!

ささ、ほら!買い物行くよ!こんな可愛い人間の子と買い物行けるなんて楽しみで仕方がなかった!子供欲しかったんだけどねー」

 

少年は未だに思い描いていた図と違う状況に戸惑う。しかし、あまりにも屈託無く笑う、白髪混じりの女性の笑顔にほだされ、差し出された手を握り返した。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーー

とりあえず書きなぐる。

ここから2年働くうちにすっかりスレたダン君は、ショタジジイ精霊ことサラトナグさんに買い取られるのでした。

本編8:サラとアレスと君とお仕事

 

暗い。曇天。

厚い雲が空を覆い光は届かず、ポツポツと雨が降っている。ただただ辺鄙な何もない草原。

 

彼等はそこにいた。黒髪の精霊と茶髪の人間の青年が二人。風が吹くだけの草原に、何か言葉を発する訳でもなく立っている。

離れた雨の当たらない場所には二頭の馬がおり、二人をじっと見つめていた。いや、二人のいる辺り、だ。彼等には何かがある事が分かっているのだろう。

 

少しずつ、雨が強くなっていく。時折、キラキラと地面と空との境界で点が輝く。青年達のすぐ側は、何故か雨が降っていない。その奥の景色は雨が降っているのが透けて見えるというのに。

 

精霊は、光る点へ歩む。物体は見えないが、草の合間に何かがあるようだ。

ふむ、と考える素振りの後、黒いコートを脱ぎ、手に巻いている布を取り、人間へ渡す。離れていて、と言い、しゃがんで雫の光を反射する物体へ手を伸ばした。

 

僅かに顔を背けながら、一思いに手を出す。精霊の指がその【何か】に触れた途端、小さな雷の様な光が走った。その光は精霊の左腕を、肩を、頬を、髪を、耳を、そして片目を焼いた。かけていた眼鏡は片方の支えを失い地に落ちた。

焼けた肩からボロボロに焦げ朽ちた左腕は捥げ、未だ高音を示す音と煙を立てている。焦げ臭さは雨で広がりが遅い。肩口からは血と思われる赤黒い液体が少量流れていた。

 

離れて見ていた人間の青年は、その姿を見て急いで駆け寄る。その必死な形相を見て、何がおかしいのか。顔面が半分爛れていてもわかる程の笑顔で心配ないさ、と笑ってみせた。

 

一体断面がどんな有様なのかもわからない程に焼けた肩から、似つかわしくない新緑が芽を出す。それは彼等にとって見慣れた蔦であり、精霊の青年自身でもあった。

何本も何本も、芽吹き、絡み、太くしなやかに。蔓は骨へ、葉は肉へ。色と姿を変え、それは青年の美しく細い腕を創り出した。何度か確かめる様に手を動かせば、何も違和感はなく、なめらかに動く腕だった。

心配そうに覗き込むもう一人の青年の心情も知らず、新しい掌で、顔の爛れた箇所を覆う。彼の長く尖った精霊の耳も、細い蔦が這い集まり修復されていく。掌を退ければ、そこには先程迄と全く同じ。

 

端正で、若く、美しい、白磁の肌の青年。

 

「醜い姿を見せてしまった。忘れておくれ」

美しい笑みは、何が起きても変わらない。

もう一度、傷一つない腕に布を巻き、預けていたコートを纏う。人間の青年は地面に落ちた眼鏡を拾おうとすると、そこには角ばったガラスと鏡張りの多角球も有る。

 

「ああ...それが幻術の正体か。ほら、浮き出てくるんじゃないかな」

 

雨が降っていなかった場所を見ると、確かに何かが見える。透明な物がそこに有ると認識できる程度ではあるが、それは確かに先程迄はなかったものだ。天上からの雫は、まだ他にいくつか光る点を示している。同じものがあるという事だろう。

 

「これが、マダムが盗まれた、って言ってた奴か」

「そうだね。妖怪の呪具だろう。さっきの雷は呪具じゃなくて魔法だ。稚拙なおままごとみたいな魔法だね。僕一人焼き切れないなんて」

 

残りの点へ近寄っていく。それからも躊躇いなしに手を伸ばすが、雷が発せられる事はなかった。

全部で4つ。四方を囲った物を見えなくさせる呪具だと、マダム・マーチャルは言っていた。マーチャルが購入し、他の商人が運搬していた所を襲われ盗まれた。それに憤慨していたマーチャルは自ら探しに来たが、魔導地雷に気がつき探索者を雇うか考えていたのだそうだ。

 

4つ全ての多角球を解除すると現れる、そこにあった物。

それは石造りの朽ちかけた建造物だった。所々が崩れ、なけなしの屋根が残っている。外壁には名も知らぬ様な蔦が蔓延り、恐らく窓があったであろう場所は穴。二か三階層程で、規模でいえば中々の大きさだ。

入り口と思われる門は、大きく崩れている。雨とは違う、湿り、腐った様な、獣の様な、なんとも形容しがたい悪臭が内部から漏れ出ていた。

 

「当たり、っぽいな」

「喜ばしくはないけどね。行こう」

「おう」

 

 ーーーーーーー

 

 

その内部は暗くカビ臭い。先を行く一人は火を灯した手燭を、後を行く一人は手燭にナイフを手に歩く。

内部の構造はいたって単純であり、入ってすぐに上階へ至る階段と、広めな通路。先ずは一階を探索するため、階段は通り過ぎた。

通路の両脇には、鉄格子の牢が並んでいた。中には何もおらず、鍵も掛かっていない。ただ、確実に何かがいたのであろう獣臭さと血生臭さはこびりついていた。牢によっては血痕の様なシミも出来ている。目を凝らせば毛や、骨。元が何であったかの想像もつかない、干からびた【何処か】。

 

青年は少々込み上げる嘔吐感を何とか無視し、通路の奥へたどり着いた。

そこには大きな扉があった。通路の幅一杯の巨大な扉。そしてその奥から、何かの気配がする。身の毛もよだつ様な気配。入る事を躊躇わせる、おぞましい空気。押せば容易に開くであろう朽ちかけた木の扉を、息を呑みながら、そっと、二人で押した。

 

ぎ、ぎ、ぎ。軋む音を立てながら、扉は開く。

その先は大広間、といえばいいだろうか。ただの広い部屋だ。だが、その光景は扉の前で予想していたよりも余程酷い物だった。

 

「...アレスト、君は上階へ。

恐らく、ここにはもう人はいない。彼とは僕がお話しするから。上は見てくるだけでいい。もし危なかったらすぐに僕に構わず銃を使って、さっさと馬で帰りなさい。いいね?」

 

「っ、あ、ああ。わかっ、た」

 

鉄錆。腐臭。惨たらしい死体。人も獣も構わず、四肢が入り乱れて散っている。黒髪の精霊は、後に続いていた茶髪の人間を部屋から出るよう促した。アレストは袖で口元を押さえながら、苦しそうに背を向ける。

「吐いてからでもいい。行かなくてもいい。無理はするんじゃないよ」

目と目を合わせ、最後に弱々しい背中を撫でた。もう一度ぎこちない音を立てて閉まる扉。完全にしまった事を確認すると、部屋の中央に鎮座する彼へ、目を向ける。

 

この部屋の主だと言わんばかりの風格。

しかし、余りにも酷い怪我を負っている。身体を覆う赤い鱗は、別の紅で塗り潰されていた。

ゆっくりと、大きな呼吸を繰り返す。口からは苦しそうな呻きが時折混じり、どす黒い血も何度か吐いた跡がある。

翼は破れ、角は折れ、指も何本か失っている。剥がれた鱗の下の肉はこそげ、しなやかであったであろう尾は捻り曲がっていた。

爪に残る残骸は一体何の肉かは推測しきれないが、恐らく室内に転がるどれかの一部だろう。正に死に物狂いで、この部屋で、戦い抜いた。

 

特徴的である四対の目が、一斉に、精霊サラトナグを見つめる。その内の二つは潰れ、もう一つは、異形の目が埋まっていた。

 

「お初にお目にかかる、八目の竜よ。

色々と聞きたい事がある。だがその前に、あなたの強さに敬意を示し、傷の手当てをさせていただいてもいいかな」

 

物怖じする事なく、臥せる巨躯の竜へ近寄り、手を伸ばす。その手に、竜は僅かに頭を動かし鼻先を当てた。そして、八つ全ての目を閉じる。

 

「ありがとう。もうしばらく、ゆっくりと眠っていておくれ」

 

 

ーーーーーーーーーーー

 

 

一度、外へ出ていた。耐えていた吐き気は、少しずつ収まっていく。清らかな空気とは程遠いが、内部と出入り口では相当重い空気に差があった。

青年は、生まれてこの方竜を見たことがなかった。いや、大抵の国民が見た事がないはずだ。

彼等は時折この国の上空を飛び、どこかの山の頂上へ巣を作り、子を育てる時にだけやってくる。

常にいるわけではなく、いたとしても接することはまず無いのだ。彼等は自由な空の眷属であり、強大だ。いわば共生に近い。

そんな彼等が、何故このような場所にいるのか。何故、あんなにも酷い怪我を負っているのか。それは青年には分からなかった。もしかしたらあの長寿の精霊なら分かるのかもしれないが、青年にはまだ、あの重圧と死臭の中にいる事は出来なかった。

 

ある程度考えを巡らせたところで、決心したように息をつく。上階へ行かなければならない。 

再び、じめじめと湿る建物の中へ向かっていった。

 

 

階段の先は、一階程汚れてはいなかった。通路の両脇に牢の様な物がある構造は同じだが、その材質は木や石であり、どちらかと言うと小部屋が近い。悪臭が酷くする訳でも無く、血のシミも見る限り無い。

一階程奥では無いが、少し大きめの扉が突き当たりにある。汚れてはいない、温かみのある木の扉だ。

ナイフを構え、懐の魔導銃の存在を確認し、扉を開けた。

 

 

「...あんた、誰だ」

 

その中はいたって普通の部屋だ。石造りで、簡素なテーブルと椅子。本棚には乱雑に書類か何かが突っ込まれている。一階の大広間を見ることが出来る窓が付いていた。

その窓の前の椅子に、女性が座っていた。無機質な目で、出入り口に立つアレストを見ている。

 

「私はベリヴァロ。あの竜が死ぬまでここにいろと命じられた者です」

「...もしかして、アルファか?」

「はい。アルファです、人間。他に何かご質問はありますか」

 

無機質で淡々とした事務的な会話。身にまとうのは白い布。先程までとは打って変わって、非常に清潔そうな印象を受ける。

ベリヴァロと名乗ったアルファは、アレストへもう一つの椅子を勧めた。ベージュの髪に赤い唇の美女。全く異質なその存在に警戒をするべきなのだろうが、どうしてもアレストにはそのアルファが悪人のようには見えない。

勧められるがまま椅子に腰掛けて、対話の意を示す。しかしあくまでも、ナイフは手放さない。

 

「ベリヴァロ、どうしてここに?」

「起動した時にはここにいました。人間と精霊の男が、私に、あの竜を見ているように言いました。あの竜が死んだら、その亡骸を切り刻み、地面に埋めろと。それ以降の指示は受けていません」

 

「命令したのはどんな男だ?」

「様々でした。少々年老いた精霊が恐らく指導者でした。彼らは妖怪達を連れて何処かへ行きました」

 「妖怪?」

「はい。何名かの妖怪です。種は様々です。正確な人数は分かりかねますが、最低でも5人はいたかと思われます」

 

異質なアルファは、アレストからの質問に言い澱むことなく答えていく。余りにも淀みがないので、正直にいっているのか、考えられていた嘘を言っているのかがわからない。これがアルファにとっては普通なのかどうなのかも分からない。

 

「...どうして、質問に答える?」

「私は彼等の仲間ではありません」

「仲間じゃないのか」

「はい。私は機械です。私は作られたものです。

ですが、自然と言うものを、命というものを尊ぶ理念は持ち得ています。

あの竜の死を見届ける任はありますが、救う何者かを阻害せよとは命じられておりません。彼らは私を放棄しています。私は、私の中の理念に基づき行動しています」

 

ベリヴァロは立ち上がり、大広間を窓から見下ろした。その隣に立ち、アレストも見下ろす。

先程まで無かったはずの緑がある。それは竜の身体を支える様に、傷を補う様に身体を這い、その果実を竜は食している。

竜と比べてみれば恐ろしい程に小さな青年は、祈りを捧げるかの様に跪き、その緑をひたすらに増やしていた。

 

「私は、あなた達を止めません」

「ああ」

「彼を、空へ帰してあげて欲しい」

「そうだな。代わりに、あんたが全部、知っている事を話してくれるか?」

「主人に命じられれば、なんなりと」

じぃっと、ベリヴァロは紅い瞳でアレストを見つける。それは、何かを迫る様な眼差しだ。

少々その紅に驚きながらも、彼女の求めている言葉が、ふと、出てくる。

決心したように一つ息を吐き、その紅に紫の瞳で向き合った。

 

 

「ベリヴァロ、今からあんたの主人は俺だ。いいな」

「はい、かしこまりました。ご主人様」

 

何も逆らう事なく、彼女はお辞儀をした。

彼女は、ここで起きた事を知っている。利用するためでもあったが、余りにも無垢な自然を愛するその目に、酷な事は言えなかった。

 

「その、ご主人ってやつはやめてくれ。俺はアレスト。多分、実際の主人は下にいるサラトナグっていう精霊になる」

「宣言なされたのは貴方です、アレスト。貴方が私の主人です」

「おい地味に一気に馴れ馴れしくなったな」

 

感情がない、と言われているアルファ。アレストは、この国でアルファを見るのも初めてだった。

しかし、その割には、今笑っている。声を上げるのではなく、表情を変えるだけの笑みだが、それは人間や精霊、この国の他のどの種族とも何も変わらなく見えた。

 

問題は、下にいる精霊がこのアルファに怯えるのかどうかという所だ。竜に物怖じしないのだからアルファ程度、とは思うが、そうはいかない事の方が多い。

先ずは、下へ降りようとする。少々、もう一度あの光景を目にするのは気がひけるが、仕方がない。

 

ベリヴァロ、名を呼んで下へ行こうとするが、ふと、アレストは気づく。大広間を見下ろせたはずのガラスが、植物に覆われていた。

ベリヴァロはそれを食い入る様に見つめている。外側、大広間側から覆われた根は、まるで守るかの様にガラスを覆っている。

 

気がついた。アレストはベリヴァロを窓から引き剥がす。

 

その途端、轟音を立てて大広間の天井が砕けた。一階から伸ばされた蔦、もう蔦などとは呼べない何かではあるが、巨大なそれらが塗り固められていた天井を突き、崩したのだ。その破片はガラガラと窓にもぶつかり、ガラスは割れた。落ちた瓦礫はその他の蔦に受け止められた様だ。

 

雨が振り込む様になった広間から、赤い巨体が浮く。一体どれほどの治療を施せばこんなに急速に治癒するのかは分からないが、少々痛々しい見た目ながらもその竜は確かに翼で飛び、曇天の中へ去っていった。

 

 

「交渉するまでもなかったな。満足か」

「はい。よかったです」

「...とりあえず行くか。話は後でまとめて聞く」

 

 

ベリヴァロは辺りにあった書類を少量ひっ掴み、アレストと共に階段を降りて行く。

 

出入り口には既に、サラトナグがいた。少々疲れた様に見えるが、二人を見て笑顔を見せる。

 

「やぁ。お疲れ様。

アルファかい?珍しいね」

「ベリヴァロと申します。サラトナグ様」

 

精霊の方から手を差し出し、握手を求める。特にアレストが危惧していたような衝突はなく、簡単な挨拶を交わした。

 

「彼が言っていたのさ。一人残ってる、って」

「サラ、あんた竜の言葉がわかるのか?」

「ははは、まさか。逆だよ。彼が精霊の言葉が分かるのさ」

 

竜の去っていった方向を見つめる。三者三様、あの竜にはそれぞれが違う感情を抱いていた。だが、どんな感情を抱こうが、あの存在が強大である事は確かだ。その竜が命の危機に晒されたような状況に陥った。当初青年二人が思い描いていた事情より、事が重大な可能性が頭を過る。

 

しかし現時点、何も分からないのだ。ベリヴァロから話を聞き、ようやく分かる。全てはここからなのだ。

 

アレストは口笛を吹き、休憩させていた馬を二人呼ぶ。待ちわびていたと言わんばかりに寄ってくる二人を撫で、黒毛に跨った。

栗毛の女性の方が、気性的にも二人で乗るのに都合がいい。そう思って先に黒毛に乗ったのだが、サラトナグは動かない。何かを考えているようだ。

 

「...どうした?」

「...ベリヴァロ、馬には乗れるかい?」

「はい。余程の荒れでなければ」

「よし。それならこの子に乗って、アレストと一緒に街へ行きなさい。僕は一度家に帰る」

 

その言葉に一番驚いたのはアレストだった。きっと一緒に街へ行って調査するものだと。離れたくても離れられないのだろうと思っていたのだ。

 

そう驚いているアレストを気にする様子もなく、サラトナグな懐から小さな袋を取り出しアレストの手へ握らせた。重みがあり、揺らすと金属の音がする。金だ。

 

「街へ行って、王城にいる、キリカという女性を訪ねるんだ。あとはその人に任せればいい。

 

アレスト、いいかい。それが終わったら、お医者様の所へ行きなさい。

君には無理をさせ過ぎた。これは国の問題になるかもしれない。しばらく事態が動く事はないだろう。実家でもどこでもいいから、安静に過ごしていてくれ」

 

「...邪魔か?」

「誰がそんな事を言った。僕は責任を感じているんだよ」

「...わかった。それじゃあ、ありがたくお暇いただくぜ。行くぞ、ベリヴァロ」

「はい、アレスト。それではサラトナグ様、失礼致します」

「だからなんでそんなに一気に馴れ馴れしくなったんだよ」

 

 

「...またね」

「...おう」

 

最後は、ただ目を合わせただけ。別れの挨拶を告げ、アレストとベリヴァロは街の方向へ駆けて行く。雨は上がりつつある。厚い雲が所々裂け、光が射していた。

 

「...とりあえず、マーチャルに渡すか...」

 

二人とは反対方向へ。建物に背を向け、歩き出す。

 

 

何があったのか。何があるのか。それは分からない。けれど在るべきではないものがあった。

 

精霊の背後では、朽ちかけた建物が急激に育つ植物たちによって覆われ、崩されて行く。誰も入らせないように、念入りに。

 

その様子を誰も見る事はない。

そこには、誰も、何も、いなくなった。

 

 

 

 

 

ss:サラとアレスは仲良し

どこへいくの(本編6)

「そういえばあんたが常にいるような感じになるって言ったよな。あんまりそんな感じはねぇが」

「ああ、全部君の身体が吸収しちゃったね」

「こわっ」

「だんだん僕の娘に近づいていくねぇ...」

「えっすごいいやだ」

 

 

とろけるらしい(本編7)

「色々、ってなんだ」

「...知りたいの?」

「知らないよりいいだろ」

「...お尻から...」

「嘘だ!!!嘘だ!!!!!」

「嘘だよ。口からいくつか種をねぇ。発芽させてあげようか?」

「...させるとどうなる?」

「さぁ...でも多分、」

「多分、」

「僕の事を大好きになる」

「...なんか嫌」

 

 

うわさのパトロン

「君が街にいるから僕も結構最近は街に多くいるんだよ」

「他の商人が言ってたぜ。最近見かける麗人は誰だ?ってよ」

「おや照れるね。僕も聞いたよ、君に美しいパトロンがいるって。誰だい?」

「は?多分あんたの事だろ。たまにそういう奴もいる」

「おや、君と肉体関係を持っているパトロンがいるという噂だったんだが...」

「おいそれ言ったの誰だシメる」

 

 

 

けむりをたてた

「なんでそういう噂が立つんだよ...」

「僕が、君が、美しすぎるのかな...仕方ないね。でも理由は君だと思うよ」

「は?俺?妬み位しか思い当たる節ねぇわ」

「覚えていないのかい?君、酒場の支払いに僕を呼ぶだろ?」

「あ?ああ...いつもあんたが払ってたのか...知らなかった。他の商人かと」

「いや、僕が街にいるときは酔った君を迎えにいくんだけど...」

「覚えてねぇわ。悪い」

「いやまぁ、ベロンベロンだからね...結構飲んでるもんね、それはいいけど...

 

いつも支払いを強請る時、僕にキスしてるよ、君」

 

 

 

事後

「...嘘だろ」

「嘘じゃないよ」

「なんでいわねぇんだよ!!」

「嬉しいからだよ!!」

「えっ」

「ふん!」

「...なんか、すまねぇ...」

「別にいいさ...」

 

 

その先は

「...それ以外に何か言ってるか...?」

「あー...払ってくれたら抱いてやる♡って言われて抱かれた事はないね」

「ほんとうにすいません」

「サラ愛してる♡とかしょっちゅう言ってるね」

「酒は自重します」

「かっこいい抱いて♡とか」

「もうしませんから...」

「俺のサラは可愛いだろ♡とか」

「やめてくれ!!!頼むから!!!」

「俺のこときらい?とか」

「それは嘘だろ」

「なんでバレた...!?」

 

 

 

ゆるいひも

「俺あんたに何回ぐらい奢られてる...?」

「僕が街にいるときは毎晩のように酔ってるよね、アレスト」

「なんか...なんでだろうな...」

「さぁ?でも君は天性のヒモ男な気はしてたけどね。別にいいよ。端金さ」

「天性のヒモ男...不名誉過ぎんだろ...」

「奢られ慣れてるよね。全部で金貨二、三枚位じゃない?(500〜1000万)」

「はぁ!?そ、そんな、え?そんなに飲んで...いや全員分奢れば...いやでも...」

「君達暴れるから...お店が...」

「ヒモですいません」

「可愛いから許す」

一人ぼっち

 

 僕を育ててくれた彼女は死んでしまった。

人間は、すぐに死んでしまうし。信仰の加護が薄い。僕は人里を離れることにした。

 

 

森の中に住む、精霊の女性に出会った。名前は〇〇〇〇。今度は息子としてでは無く、恋人として彼女と付き合うことにした。

彼女は僕を大事に扱ってくれた。僕も彼女を大事に扱った。

 

彼女は子どもが欲しいと言った。作った。

彼女は僕を愛していたはずなのに、子供にばかり構う。何故かと問えば、僕の子だから、なんていう。意味がわからない。それは僕じゃない。僕を愛してくれるといったのに。だから僕も愛したのに。彼女は僕に必死に謝ったが、それもよくわからない。

子を捨ててでも僕と共にいたいと彼女は言った 。子を捧げられるのかと聞いた。出来る、と言った。

 

彼女はあろう事か僕に子を捧げた。何をしているんだ。僕に捧げて何になる?訳がわからない。叱ると泣いて謝ってきた。もう何を言っても怯えている。もう駄目だ。何度あやしても泣き止まない。

仕方がないから、ずっと一緒にいてあげることにした。彼女は嬉しそうだ。

美しい僕と美しくない君との娘、イェルミ。可愛らしい。

 

 

 

イェルミは僕のために何でもしてくれるが、何でもはできない。彼女に出来ることは、せいぜい疲れを癒す香りを出したりする程度。それでも十分助かるけれど、この島はちょっと荒れている。自衛ができない。

 

 

僕は恐ろしく大地の魔法が下手くそだ。戦えないのだ。練習しても、多少岩を隆起させる程度で、おままごとみたいなものだった。

僕を守ってくれるのは、か細い蔦と、サラと、イェルミだけ。幸い、僕はまだまだずっと美しい。守ってくれる人を探した。

 

 

彼女の家で、一人で過ごしていた。娘と、僕を交わらせて、誰かを父に、誰かを妻に、僕を嫁に、娘を妻に、ひたすらに交配を重ねた。庭は僕の娘達でいっぱいになった。

 

晴れた日、家の近くに人間の男が倒れていた。せっかくなので娘達で持ち上げてみると、僕では持ち上げられない大きさの男が持ち上がった。僕は決して変化していないけれど、娘達はとても逞しく育っている。

 

男を手当てした。彼は目を覚まさなかったので、色々と試した。僕の種子を彼に喰わせた。胎内で発芽させた。根を張り巡らせた。

彼は毒草を誤って食べてしまった様だったので、巡らせた根で、強制的に嘔吐させた。根から毒を吸収することもできた。

 

彼とは言葉が通じなかったが、何とか意思疎通をした。彼は逞しい人間。久しく誰かに会っていなかった僕は、寂しさで、彼に甘える事にした。

 

 

彼と過ごしてしばらく経つと、彼の仲間だという人間が森を荒らしにきた。

彼らは森を開発するために調べにきていた人間達だった。彼らは僕の庭を荒らした。草木を燃やし、踏みにじり、殺した。

 

だから僕も殺した。精霊の庭に入って来る方が悪いのだ。大いなる母の娘を殺した罪人として、贄に捧げた。

彼は、僕に命乞いをした。それでも僕の怒りが覚めないので、殺される前に僕を殺そうとした。僕を甘やかし愛した腕で、殺そうとするのだ。悲しかった。

 

彼に植えた僕で、彼を殺した。彼の命を吸った僕は、香りや効能ではなく、より強靭な娘を手にした。贄を捧げたからか、僕の力は増していた。

 

大いなる母は、いつでも僕を愛してくださる。

裏切ることはなく、殺そうとして来ることもなく、いつでも僕を守ってくださる。

誰と出会っても、皆僕を置いていく。一人にしていく。僕は大いなる母だけに守られている。

 

一人ぼっちで、また暮らす。人間達が僕を追い出すまで、ずっと。

故郷であるリード島は、その殆どが、僕の娘達に覆われた。

一人ぼっちで、一人じゃない。一人じゃないのに、一人ぼっち。

 

さみしい