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ほうさんのお国柄

企画参加用創作ブログ。絵は描けない。文のみ。お腐れ。色々注意。

サラトナグさんと奴隷さんと商人さん 短

リハビリ続き。少しでも世界観が出せればいいな。途中力尽きた感ある。

 

ーーーーーーーー

 

「いやー、運んでくれてありがとうおにーさん。ここまででいいよ」

「礼はいらねぇよ。あんた、お偉いさんだったんだな。光栄だ」

「ははは、何もしていないけどね」

 

首都、ルーダ。巨大な崖の上に立つ王城の元栄えたこの国一番の街。

崖淵は堅牢な城壁がこれでもかと囲い、街の中にある大きな洞窟が、崖下の港までなだらかな坂を描きながら続いている。

堅牢な城壁の唯一の切れ間である正門は、いつも人の出入りが絶えない。

正門前の脇で、その二人は一時立ち止まり別れの挨拶を交わしていた。

 

「で、どうするんだい?僕に買い取られる?」

「...雇い主に任せる。俺は荷物を降ろしに行く。雇い主は、王城前広場の商人管理局にいる、ライネイっていう女の精霊だ」

「僕は君の意思を尊重したいんだけどねぇ

まぁ、わかったよ。その名前なら聞き覚えがあるし、早く決着がつくだろう。じゃあね、商人さん!」

「奴隷だっつーの」

 

荷馬車はカラカラと音を立てて街の中へ入っていった。人の波に呑まれ、その姿はすぐに消えてしまう。喧騒に交じり、音もなくなってしまった。

「さて、ライネイ、ライネイ、ライちゃんか。久しぶりだな」

機嫌が良いのか精霊の青年は、鼻歌交じりに街を歩く。大きな道の脇には様々な露店が並び、種族関係なく買い物をする。商人同士の物々交換も活発で、店を隣の商人に任せて離れている様子も見受けられた。

「ううん、我が国は今日も平和だねぇ」

 

ふと、恐る恐るといった感じで、背後から声をかけられた。30代程度の人間の男性だ。

「どうしたんだい、おにーさん。僕に何か用かな?」

「あの、勘違いだったらすいません、お花のおにいさん、ですか?」

「ああ、そうだね。そう言われてるらしいよ。よくわかったね」

「25年程前にお花をもらった時と、何にも変わっていないですよ、おにいさん」

「ははは!20数年なんてつい最近だ!ボケーっとしてればすぐ過ぎる!で、何かな?あれはお子さま向けのプレゼントだよ?もう一度見たいのかい?」

ほうら、と男性の前で拳を開くと、その手に一輪、手のひらに根を張り、巻かれた布の隙間からから花が咲く。桃色の可愛らしい花が、男性の鼻先に触れた

「相変わらず...すごいですね」

「僕以外でもできる精霊はいると思うけどね。負担が僕の比になるかは知らないけど」

「...20年前、こうしていただいた花を、好きだった女の子にあげたんです」

手から花を摘み取ると、葉と根は風に消え通常の掌に戻る。摘み取られた桃色の花は、甘い匂いを漂わせた。

二人の周りには、わずかに人だかりができている。魔法を見たもの、お花のおにいさんを知っているもの、人がいるから見物する者多種多様だ。

「その子と、結婚することになりました」

「おお!よかったじゃないか、おめでとう」

「ありがとうございます。それで、あの時いただいた花の花束を、彼女に式であげたいと思っていたんですが、調べたところとても希少な花で私には手に入れられなかったんです。だから、もしかしたらあなたなら、と思って毎週街に来て探していたんです」

「熱心なファンだねぇ!嬉しいよ。ロマンチストは嫌いじゃない。その時代の流行の花...ラフラチカかな。いいだろう、届けてあげるよ。式はいつどこで?」

「...3日後、ここから南西の森の村です」

「そんなギリギリまでよく探してくれた。君のお嫁さんは幸せだろうね。わかった、村の式場に当日届けさせてもらうよ。お代はその時にでも渡しておくれ。それじゃ、結婚祝いをしようかね!」

 

布袋からゴソゴソと種を取り出し、それを空中に投げる。大量の粒が、人だかりの上空に散らばった。

投げた手はそのままに、上空に向かって青年が何かを呟くと一斉に種子が開花し、空の青をかき消すほどの色が即座に現れる。

あれやこれやと人々が花を愛でる中、落ち着いた頃には、お花のおにいさんはいなくなっていた。

 

 

 

「ふふう、久々に仕事をした...ええと、広場の商人管理局...ここか」

 

王城を見上げることができる一等地の噴水風呂場は、露店ではなくきちんとした店舗や管理局の建屋が並ぶ。その中、商人達が集まる建屋へ向かう。入るといくつかの受付に人間や精霊、時折妖怪の女性が並び、訪問者の対応をしている。

空いている受付にライネイという女性はいるかと問うと、休憩スペースにいるという。

局内の地図をもらい言われた場所に向かうと、そこには沢山の商人たちが、世間話をしたり商談をまとめたり眠ったり、自由に過ごしていた。

その中にいた、銀色の髪の女性に声をかける。

 

「ライネイ、久しぶり。元気?老けたね」

その声に振り向いた女性は、とんがった耳に、遠目から見れば銀のようだが、それは殆どが白くなってしまった金の髪だとわかる。

顔はシワがうっすら出始めており、整ってはいるが、もう、美女とは言えない歳だった

「うわ!サッちゃんじゃん!!お久しぶりー!!何よ老けたって失礼ねー!サッちゃんは変わってなさすぎて怖いわね!」

「ははは、前会った時は美人だったのになぁ。ライちゃん、頑張ってるんだねぇ。白髪増えて」

「前会ったのって5、60年は前だから!当たり前でしょ!そりゃ老けるわよー」

加齢を感じさせない明るいトーンでバシバシと青年の背中を叩く。

「いた、いたいよ、ちょっと、今日は話があるんだって」

「話?真面目な?」

「そうそう。

さっき、ライちゃんの奴隷さんの荷馬車でここまで運んで来てもらったんだけどね、彼が欲しいなって。彼優秀だから、商人として独立させたいんだ」

「うわ、来たよ引き抜き。まぁわかるけどね。67年商人やってるけど、あの子一番よく働くし頭いいし優秀。ただまだ若いね。若すぎる」

「20も60も80も僕には同じさ。彼、いくらで買った?」

「銀貨100位かな。安かったよ?本人も衣食住以外ほとんど求めないし...めちゃくちゃお買い得。馴染みだし、私もまぁ、他にも奴隷いるしね。銀貨250で売ってあげるよ。どうする?」

 「いいよ、買おう。ただ、今持って来てないから、ちょっと売ってくるね」

「ん?草あるならそれ私が買おうか?どーせがっぽり儲けるつもりなんでしょ〜?」

「まぁ...帰り道用に馬を買おうと思ってたから、今日は多いよ」

「ちょっと見せてよ...」

 

休憩所の大きなテーブルに布袋をどんと置き、中身を出していく。

周りの商人も、休憩中だろうにぞろぞろと集まり、青年と会話をしていく。やれいくらだ効果はどうだと、まるで即売会だ。

 

「ひー、信じられない!!あんた背負ってる袋だけで金貨何枚になんのよ!サッちゃん不用心すぎー!」

「運送にお金をかけたくないんだよ...貨幣あんまり持たない主義だし...250なら、煌蘭の種だけで足りるんじゃないかな。どうする」

「煌蘭かー...花の状態でくれるのよね?」

「もちろん、今咲かせて渡すよ。虫は入らないけど」

「虫入りなんてもらったら奴隷と一緒に積荷まで渡さなきゃいけなくなるじゃーん!

んー、煌蘭はいいや。医者に売れそうな薬草、適当に250分くれない?最近薬草高いのよね。みんな海に潜って怪我するから」

「まいどあり。みんな銃が欲しくてたまんないんだろうさ。一攫千金夢の山、ってね。

さて、どうせだし他の商人さんと取引しようかな。彼が来るまで時間潰すよ。彼名前は?」

「今まではダンって呼んでたけど、自分で名前つけるんじゃない?商人にさせるんなら、3文字以上がいいだろうし」

「商人の文化はわからないなぁ...まぁそうさせるよ。あ、ちょっとおねーさんそれは蓋開けたらだめ!!」

「...元気ねぇサッちゃん。あんたいつ死ぬ気なのかねぇ...」

 

ーーーー

 

「...商談、まとまったかよ」

「あらぁダン、おかえり!纏まったわよー?いやー、よかったわね!あんたなら奴隷やってるより儲けるに違いない!」

「無事君の身柄は僕のものになったよ。銀貨200枚はライネイへ、50枚は君への謝礼さ」

 

夕暮れ時、商人たちも局を出て閑散とした此処に、奴隷の青年は雇い主への報告にやって来た。積荷の代金をライネイへ渡し、3人でテーブルに着く。

 

「...俺が、銀貨250枚?」

「そう。奴隷の相場としては高いけど、君の能力なら安いくらいだ。明日、荷馬車を買いに行く。それで僕を家まで送ってくれれば、そこからは君の自由だ。荷馬車もプレゼントするよ」

「俺は金が欲しくて働いてるわけじゃない」

「僕だって、奴隷が欲しくて買ったんじゃない。優秀な若い商人が欲しいのさ。友人としての頼みとしてもいい。やってくれないか」

 

青年の手を、精霊が握る。その様子を見て、ライネイはため息をついた。

「ダン、こいつね、寂しいんだと思うよ。私もわかる。たった100年くらいしか一人で生きていない私でさえ寂しくなって商人を始めたんだ。

信頼できる人間が欲しいのさ。友達になってやりなよ。奴隷じゃ、時間の都合をつけてやれないからさ」

「...寂しいわけじゃないさ。ただ、そうだね。友人はもう殆ど死んでしまった。生きていても皆老いた。特に人間は感情が豊かで暖かいけれどすぐにどこかに行ってしまう。

君なら、側に居てくれそうだと。そう感じた」

 

真剣な声色で語る。微笑みを浮かべて居た顔は、どことなく影を見せた

「ま、精霊の友人は基本信用できないからね!ははは!みんな自分勝手だから!」

「あんたが言うんかいこの気まぐれ仙人!」

 

「...ま、わかったよ。やってやる。ただし、借りは全部返させてもらうからな!」

「はは、歓迎さ!荷物まとめておいで!」

奴隷、いや、青年は自分の私物をまとめに一度帰宅する。それとともに、二人の精霊も夜の街へふらふらと出て行った。

昼間よりは落ち着いたもの、今度は探検家や商人たちが酒場へと集まり、街は眠ることがない。町並みを照らす街灯はいつまでも照らし続ける。

街道を歩き、宿場町へ向かう。他愛のない世間話をしていれば、気づけば周囲に人はいない。寝静まったか遊びに行っているのか。はたまた、静かな路地選んで歩いているのか。

 

静かな風が吹く。一瞬、二人の会話が途切れた。そして女が口を開く。

 

「...正直、顔でしょ」

「うん?まぁ、端正な顔立ちだね。もっと肉がつけばさらに艶がでる。好みではあるかな」

「優秀なのはもちろんだけど、マダムからの人気が高いのよ、彼」

「へぇ。それはそれは、もっと磨かないといけないなぁ」

「流石、美しいものに目がないわぁ。ほんと」

「人間の貴重な短い命だからね。もっと輝かないと勿体無いさ」

今までに出会った人間の名前だろうか、男女構わず様々な名前を口に出し、指折り数える。簡単に両手をオーバーした後、皆美しかった、と呟いた。青年の目は優しげだ。

その目を見て、ライネイは大きくため息をつく。何か諦めたように、大きく。

 

「...サッちゃん、私多分もう10年も生きられないと思う。彼の事、よろしく」

「おや、ライちゃんまで居なくなるのか。寂しくなるね。もちろん任されたよ。他の奴隷さん達はきちんと誰かに預けて死ぬんだよ」

「もちろんわかってる。死ぬまでに、彼に知識仕込んでおく。サッちゃん、仲良くしてあげてね」

「わかってるよ。なんだい、今日はなんだかしおらしいね。感傷的なのかな?」

 

「...死ぬ前に、会えてよかった。

サラトナグ、私、あなたの事好きだった」

「僕を?ライネイ、君は物好きだね。でも、光栄さ。君は才覚溢れる魅力的な女性だったよ」

「あなたは、あと、どれだけ生きるの?あなたの姿は出会った時から何も変わらない。いつまで命を溜め込み続けるの?」

「母が僕に生きる力を与えたのさ。僕はそれに則り生きるだけだよ。この地が朽ちるまで、朽ちないように。」

「...私の死んだ後も、彼があなたを助けられるように、全力を注ぐわ。私は、あなたの中に何年いれるかしら」

「では僕は、君が愛したこの国をこれからも見届けて行こう。

さぁねぇ、君は炎の元へ還るだろう?僕の中にいてはいけないさ。僕を信仰してはいけない。わかるだろう、ライネイ」

 

「...ええ、そうね。さようなら、サラトナグ」

「ああ、おやすみ。さようなら、ライネイ」

 

それから大した話をする事なく青年は宿屋へ入り、手を振る。女が振り返すと、名残惜しく様子もなく、笑顔で、扉を閉めた。