ほうさんのお国柄

企画参加用創作ブログ。絵は描けない。文のみ。お腐れ。色々注意。

あきのり過去話:レイゲンドール編

 
王城書物庫・最奥の間【国内要注意生体】の棚より
【生体名:レイゲンドール】

 

 
歴〇〇〇〇
陰日向の月
範囲:ルーダ島全域
調査者:〇〇〇〇
 
・極地的な異常気象の発生
ルーダ島全域にて、時季外れの雪が降る。気温は平常。雪の粒のみが凍っており、魔力反応あり。空に雲はない晴天。魔障防壁のある首都には被害なし。積もる事もなく1時間ほどで現象は収束。調査隊設立。
 
・連続した気象変化
ルーダ島でのみ、暴風、大雨、晴天の連続した突発的な気象変化が頻発に起こる。数日前に発生した雪と同じく、首都には影響無し。天候ではなく魔力による現象であるとみられる。
(調査続行。十三魔導地雷の魔力解放を認可。魔力干渉の出所をより明確に)
 
 
 
・出所判明
魔力の干渉点判明。首都周辺、商家〇〇〇〇〇〇の邸宅。
・調査結果
数百年に一度という伝承の残る、竜の王の誕生、に起こる現象と酷似。王城書物庫『竜誕』より
・八目竜
八目竜が住処へ戻られた。帝の眠りが浅いようだ。次代竜の王を探す雌竜の活性も見られる
(特異なものの出現は確かである。害となるようであれば直ちに排除を。明勲精霊より6名部隊選出。包囲。抵抗が見られた場合屋敷ごと破壊。当主との対話は〇〇〇〇〇によるものとする)
 
 
(以下対話の際の会話録)
「えーとどーも。時間を作ってもらえてありがたいよ」
「こちらこそわざわざ貴方様においでいただけるとは」
「まぁねぇ。とりあえず用件を済ませよう。ご子息は?」
「こちらです」
(赤髪の赤子。外見的な特徴には何も特筆すべき変異はない)
「たしかにお二人の子供だね?」
「はい確かに」
「明らかに加護が異なる。君達夫婦は長女の事もあって非常に信心深かった。大いなる母がそれに報いて恵みをくださる事はままある。竜の子としての恵みを受けた可能性があるね」
「なぜこうなったのか」
「さぁ。異常気象はわかってると思う。理由はわかるかい」
「この子が泣くと何かしらの変化が起こりました。泣き止み笑うと異常気象も終了します。おそらく、この子がしているというよりかは、何かあやされているような」
「なるほど。しばらく窓のない部屋へ。大いなる母には申し訳ないが、これ以上雨が読めないと国に影響が出る。天候以外できちんとあやせるようにしてほしい。なるべく早く泣き止むように」
「はい」
「この子が原因で間違いない。定期的に調査員を寄越す。意思の疎通が出来るようになったら、魔術の教育を最優先で行わせてもらう。申し訳ないが、この子は国で使わせてもらうよ」
「覚悟はしておりました。もとよりこのような力の持ち主、我ら夫婦ではどうしようもないございません」
「話が早くて助かる。普段の教育は君達でしてくれ。時が来れば引き取る」
 
 
第二子(名:レイゲンドール)の加護の特異性を確認。両親同意のもと経過観察とする。以後脅威としての記録、明勲候補としての記録を執る。
 
以下は、脅威としての記録である。
 
 
 
 
歴〇〇〇〇
・加護の属性が大地ではなく大空である事は確定。変化は見られない。安定はしている。突然変異、異常個体というよりかは、こういうもの、であるようだ
(観察を続行)
 
 
・窓がない事により泣く事が増えたというが、外に出した際の天候の変化が晴天に固定された。恐らく当初の予想通り、この子どもの加護ではなく、この子どもに対する大いなる母の反応と思われる。極めて愛されている
(観察の続行。以後も対応はそのようにする事)
 
 
歴〇〇〇〇
・担当者〇〇〇〇魔力中毒にて一時解任
発熱、嘔吐を主とした身体の異常が見られる。魔力不足による不良ではない。過剰な魔力摂取による拒否・中毒反応とみられる。
(以後担当者を定期的に交代。対象との接触によるものか、大いなる母から対象を隠した事による怒りかを判断せよ)
(追記:隠した事による他属性の過剰魔力供給による【胃もたれ】のようだ。残念ながら大いなる母が慣れてくださるまで耐えるしかない。祈りを捧げて許しを乞う。僕もキツい)
 
 
歴〇〇〇〇
・気性の安定が見られる。常に笑っている。不機嫌でぐずるという事が殆ど見られなくなった。言葉の理解が始まった
(出来る限り外界に触れさせる事柄は慎重に。ただし大空信仰である事は確定である。空は見せるように)
 
 
歴〇〇〇〇
・姉に異常な拒否反応
(この歳で醜女を嫌うというのは筋金入りだと思う。というか本当にこの家の子は厄介な娘も息子も産むしなんなんだ。頭がいたい。国に貢献してくれるのは大いにありがたいのだが。あまり会わせるな)
 
・担当者〇〇〇〇死亡
切断されたと見られる。胴体を上半身下半身に分断。同じ線上で左手首の切断も確認。姉との接触後、泣いた後のいわゆる不機嫌な時。抱きしめあやそうとした担当者〇〇〇〇を拒否するように対象が右手を振った。その瞬間空間のズレが起き担当者〇〇〇〇の分断を確認。対象は停止。大人しく回収されたが、現状の理解が追いついていない様子。空間のズレは一時的なものであり現在は問題無し。切断面は一切のブレがない。完全に断たれている。
(魔力の扱いを最優先で覚えさせろ。暴走だ。以後接触者は全員、暴走した魔力による干渉を受けにくい、魔力量の多く安定した者のみが付くように。常に気を配れ。自身の周囲の魔力を操らせるな)
 
・経過観察担当者を〇〇〇に任命
 
・対象は担当者〇〇〇〇の殺害にショックを受けています。この事柄は完全に意図していないと言っている。このような事態はもう引き起こしたくないとも言っている。自ら魔力の扱いの教育を求めています
(一時却下。判断材料が足りない。自身の力に気がついた今、悪用しないとは限らない。まだ気が動転している)
 
 
・対象はこれまでの行動上極めて素直で穏やかな気性です。眷属の鳥達はよく懐いています。対象は自分の加護に嫌悪と怖れを覚え始めています。教育を求めます。
(担当者を同性に変えろ。絆されるな。教育は面会にて決める。現在は教育できる者の選別に時間がかかっていると伝えるように)
 
 
・担当者〇〇〇解任、〇〇〇に任命
 
 
・以下第二回目の直接面談の会話録となる
 
「お久しぶり。と言っても覚えてないだろうけど」
「私が赤子のころあなたがいらっしゃったと聞いた」
(対象は落ち着いている)
「教育を受けたいらしいね」
「私は〇〇〇〇を殺したいと思っていなかった」
「うん」
「私の加護は守るために与えられている筈」
「母がそう言ったのかい?」
「母は常にそうおっしゃる」
「なるほど」
「母は私に自由に生きろと」
「自由に?」
「母は私に愛せよと」
「そんな事をおっしゃっているのか」
「大地のは決してそんな事は言わないが、私は愛せよと言うと」
「詳しく教えて欲しいな」
「飛び立つものが、戻る事こそ愛であると母はおっしゃっている。私は自由であり、それでいて母を愛している。大いなるものを愛している。大いなるものも私を愛している。私の幸せを愛している」
「君に一つ聞きたい事がある」
「なんだろうか」
「君は何の為に死ねる?」
「私の死を大いなるものは決して望まない。私の死が私の生以上になにかをもたらす事があるのなら死のう。しかしそのような事はないとおもう。私は死なない。死ねない」
「よくわかった。いいだろう。魔力の扱いにこれ以上の適任はいないという人物を紹介するよ。しばらく彼について学ぶんだ。それからまた、魔法の使い方を覚えよう」
「感謝する」
「こちらこそ。また会いに来るよ」
(本物だ。この子が国にとって悪であるか正義であるか、なにを考えているかは大した問題じゃない。この子は大いなるものに愛されている。この子が正しい。育てよ。それこそが大いなるものへの信仰だ)
 
 
 
 
・対象の指導者として明勲精霊〇〇〇〇〇〇を派遣
対象の魔力の暴走を考慮し、対象以上の魔力量を持つ者のみを候補者とした結果、該当者が現在4名しか存在しない事が判明。まだまだ未成熟である事を考慮すると、今しか教育の機会はない可能性も否めない。
(恐らく教育を受け祈りを捧げるようになれば、大抵の明勲では排除もできなくなるだろう。幼いうちに仕上げろ)
 
・以降経過観察の報告義務が指導役にも課される。
 
 
・末恐ろしい少年だ。副属性の炎ですらそこらの精霊では敵わない。ただ、大空の魔力の扱いは流石に難しい
(君に教えられないなら誰にも教えられない。意地でも教え込んでくれないと困る)
 
・荒技になるが
(それしかないならやるべきだ。無理だと判断された場合報告せよ。こちらで処理する)
 
・彼に抵抗反抗の意思はない。彼は我々を信用している。彼の身体の中の魔力直接操作した。身体に覚えさせた。かなりの不快感が予想されるが耐えきった。あれだけ命を握られて操作されて尚気丈にいられるというのは大したものだ。無理をさせた。しばらく安静にさせる
(なんだかいかがわしく思える)
 
・なんだとこの色情狂が。貴様がそういう思考にばかりなるから狂った物事が一体いくつあると思っているのだ。その首落とすぞ
(やってみろ甲斐性なしの指導者どの。居場所も見つけられないくせに)
 
 
・報告書で文通しないでいただきたい
(ごめん)
・すまないと思っている
(経過観察を見る限り問題はないが、一つ気をつけたい事がある。
こちらを信用していると言っているが、少し危うい気がする。信用を疑っているわけじゃない。あまりにも簡単に信用しすぎている。そしてそれは本気だろう。命を握らせる事を理解できない子どもではなさそうな利口な子供であるという報告も受けている。
何か欠損が考えられる。周囲で手綱を握る事ができるように情で縛れ)
 
 
歴〇〇〇〇
・指導を終える。暴走はないだろうが、感情の昂りまでは制御できない。大空の魔力の扱い方はかなり上達したが、本人が感覚を得ないことにはどうとも言えない。
詠唱に極めてクセがある。竜たちの言葉だろうか。私はその言葉を教えていない。まだわからないが、精霊としての扱いはしない方がいいかもしれない。
秀麗な容姿の者以外を近づけると発狂するのはどうしても治せそうにない
(十分である。詠唱の言葉をこちらが認識できないのは手痛いが、従順であることさえわかれば現時点では問題ない。以後経過観察に加わるように)
 
 
・楽観的な思考の者との相性の方が良いように思われる。以後の師事者は容姿と性格を踏まえ、〇〇〇〇と〇〇〇〇〇〇〇〇〇に任せる
(後者が不安だがそれしかないので仕方がない。認可する)
 
 
歴〇〇〇〇
・私生活の管理はこちらでは行なっていないが、商家〇〇〇〇〇〇の経営が成り立っていない。対象の金遣いの荒さが原因と思われる。全奴隷のアルビダ種の生活水準の上昇レベルが常軌を逸している。手懐けようという策略であるという可能性を考慮しておくべきか
(これまでの各報告書を見る限りそういった考えを持つとは思えないが、確かに対象を崇拝レベルに達している奴隷が相当数いる事が確認されている。姉に家を潰させろ。全ての奴隷の管理権を奴隷商人管理局長に譲渡できるように手回しを。彼なら恐らく対象に反感を買うことなく、奴隷の扱いと商売の仕方を教えられるだろう。いい意味でも悪い意味でも相当のアホだ。心得ろ)
 
 
歴〇〇〇〇
・邸宅の押収、私財差押え、全奴隷の所有権奪取を完了。しかし奴隷達の一部が身体を売る取引を自ら申し出て来た。対象から完全に権利を剥奪する事は不可能
(金の暴力さえできなければそれでいい。ただでさえ姉が覇権を握り出したのにそれまでさせてたまるか)
 
 
 
歴〇〇〇〇
・彼を次代の奴隷商人管理局の長に推薦します。彼を対象と呼ぶ必要はありません。そして私は彼以外にこの座を譲る気もございません。私は彼に絆されてはおりません。
(話を聞こう)
 
 
以下対談
「率直に申し上げます。彼に経過観察は必要ございません。彼はまさしく慈愛の子です。彼は我々の見本であるべきだ」
「何故?」
「彼の加護は、恐らくこの国のどの精霊たちよりも凶悪でしょう」
「規模を話したのかい」
「はい。彼はこの国土のおおよそ半分を覆える支配能力を持ちます」
「流石に立体機動力のある個体の空間支配は怖いな」
「彼の加護は、完全なる殺しの加護です」
「それは感じていたよ。何も生み出せない。何も加工できない」
「彼が指を鳴らせば大抵の生物は内側から破裂します」
「ああ」
「彼が望めば国土の半分の領域、地面より遥かに上空までを数時間真空にできます」
「実際には僕やその他の個体の支配領域があるだろうけど、確かにその規模は脅威だ」
「彼は指定された空間を切り取ることが出来ます」
「しかも硬度は問わないんだろう」
「はい」
「化け物だな」
「はい。これ以外にも、彼に出来るありとあらゆる加護の応用された殺し方を聞きましたし話し合いました。
しかし、彼はその加護を守る事以外に使う事が出来ません」
「へぇ」
「いえ正確にはできるのでしょうが、【そういった思考に決してならないからこそ与えられた加護】であるのです」
「それは母が?」
「はい。母のお告げだと」
「それが彼の欠陥か」
「彼はその感情を与えられておりません。怒りや悲しみ、憎しみを抱いても、それを私利私欲の感情として処理できないのです。するしないではありません。
彼は強大な加護を与えられ、権利を与えられておりません。彼は己の責務をきちんと理解しております。彼は見本でなければいけないのです。常に。それが果たせぬ時、彼の加護は尽きます。彼の望んでいる事は達成されねばならないのです」
「君がそこまで彼を買うとは思わなかった」
「私は己こそが彼であると疑っておりませんでした」
「君の加護も実に慈悲的な加護だけどね」
「それでも、彼が本物です。貴方様も感じられたでしょう。彼が、正解なのです。大いなるものにとって。
私の責務は私の生きた中で導き出した結論を幼い彼に教える事であり、彼を肯定する事であると。今ではそう思えるのです」
「君では彼の師にはなれないかい」
「なれません。彼は理解できないのです。誰も」
「そうか。じゃあ好きにさせるよ。僕は君を信用している」
「ありがとうございます。ああでも、見守っていてはください」
「必要かい?」
「はい。あの子はアホです」
「親心の上ではアホなのかい。わかったよ。アホの子程可愛いしね。きちんと手綱は持つとするよ」
 
 
 
 
(対象の経過観察を解除。好きにさせよう。後の教育は局長に任せる。国内要注意生体:処理済の棚へ)
 
 
 
 
 
以後の追記はない。