【母の日イベ用】わかめしゃんの思い出
小さい頃の巫覡様緋染さんことわかめしゃんの最後のお母さんの記憶。先代の巫覡様に預けられた時のお話。短い。ぞめしゃんはとっっってもクールなおこちゃまだったのですなぁ…
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「緋染、行くわよ」
妻蛾の鱗粉、飛砕の筋、
「用意はできた?折角巫覡様に面会まで漕ぎ着けたのよ。準備してちょうだい」
黒鴉の嘴…
「何もしてないじゃない…」
春呼刀の煮汁…
「ねぇ、母さんはね、あなたが天才だと信じてるの。きっと巫覡様の元で学べば花開くわ。そうじゃないと…そうでもないと…」
舌の痺れ…中和…源湯石…
「…素材とずっと睨めっこ。それ以外何もできない子だもの…」
三欠…焦がし…小さな爆ぜる音…
「お父さんの言うことも聞かないし…ねぇ…結果になってくれないとね、お父さんが戻って来てくれないのよ…緋染?母さんはあなたの味方…本当よ…
…はぁ。本当に何も聞いてくれないのね…」
うるさいな…
「巫覡様はいいお方よ…?ここ数年変わらず…ずっと巫覡をしてらっしゃる…きっとあなたのためになるわ…」
…パチッ
「ねぇ緋染…」
「母さん」
「緋染…」
「出来たから、行くよ」
「それって…」
「巫覡様に会うんでしょう。わかってるし、聞いてる」
「…」
「…役立たずの厄介払いも、聞いてたし、わかってる」
「そんなこと…!」
「父さん戻ってくるといいね。
大丈夫。あんた達の為の調薬なんて、しない」
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「…歳はいくつと?」
「次で7つに…」
「7つでこれを…」
「家を出る直前までずっと…普段から食事もとらずに没頭して…姿を何も言わずに消しては部屋にごちゃごちゃと持ち込み…」
「母君、私は子守ではないのです」
「存じておりますわ…!ですがわたくしではあの子をもう扱い切れないのです!!!」
金切り声。囀りの美しい鳥の喉は癒しの力があると…そう…この巫覡様が書いた…あの本…七八頁…よく憶えてる…学ぶ事は全て学んだ…
「…緋色の美しい者は…あー…神に愛され…そういう子、が多いのです…どうか心を強く…」
「巫覡様…どうか…どうか…我が子と私たち夫婦をお救いください…」
「…弟子はとらぬ方針です」
ここからも出ることになったら…どこへ行こう…遠い…六番湯…?神事まで3年…幅木の幹はくり抜いた跡がある…そこに住んで…
「そこをなんとか…」
「…はぁ。連れて来てください。見はしましょう」
「ありがとうございます!!緋染、はいっていらっしゃい」
…呼ばれた。天才…連続巫覡襲名最長記録保持者…
「…ひぞめ。か。確かに。
私も昔はそうでしたよ母君。薬の事ばかりが頭の中にあって…寝食を忘れて高みを目指した…天才とはそういうものです。確かにこの子をのびのびとさせてやるには…ご両親の元よりもこちらの方がいいかもしれません」
「あぁ!それでは…!」
「ええ、わかりました。お預かりしましょう。しかし…」
苦い顔…後ろめたいこと…見た途端の了承…
…関係ない。好きにすればいい…おれなんて…おれのすべきことは、おれじゃない。
「…もう、帰ることは出来ないかもしれない。そうでしょう、巫覡さま。帰る気もないです」
「君はそれでいいのか緋染」
「…母さんよりも、父さんよりも、巫覡様がお持ちの薬棚の方が気になります」
「…筋金入だな。いいだろう。私が全て教えてあげるよ、緋染」
赤が移った爪…血を使う手だ…肉が好きな手…緋色の羽を…髪を…その内毟る手だ…わかりやすい手、だ。
…関係ないな。
「母さん、さようなら。おせわになりました。…こんな、穀潰しを」